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INTJの私が好きな画家              


■INTJは芸術が好き?

INTJのタイプ説明をネットで読んでいると、INTJの芸術的才能の有無に関する記述をときおり目にします。 
INTJは第一・第三機能にNiとFiがあるので「芸術なんて興味無いよ」という人も実は密かに独自の芸術的感性を持ち合わせていて、豊かな内面世界をひっそり楽しんでいる方が多いのではないかと個人的には思っています。                           

INTJ自認の私は、Se劣等に加え、左利き+手先の不器用さが災いし、絵画や手工芸など手指を使う芸術活動全般はすべからく不出来でした。小学生にあがり、通い始めたピアノ教室も、左右の指をバラバラに動かすことが出来ずわずか3ヵ月でやめてしまいました。中学生の美術の通知表では、自身の芸術性を思い切って課題にぶつけてみたにもかかわらず、「2」をつけられ、なけなしの芸術性すら認めてもらえず人知れず傷ついたものでした。しかし、このような私でも芸術鑑賞は嫌いでは有りません。               

■アルフォンス・ミュシャが好き             

ミュシャとの出会いは私が高校生のときです。本屋で文庫本を買ったときに、店員さんがカバーをかけてくれ、ついでに一枚の栞を挟んでくれました。それは、画家アルフォンス・ミュシャの美術展の宣伝用の栞であり、「バラ」という作品でした。若い女性が一輪のバラを手にしている絵でとても可愛らしいものでした。私は勝手にミュシャとの出会いを感じ、それから栞の隅をセロテープで補強したりして栞を大切に使っていました。

アルフォンス・ミュシャは、チェコ人でアールヌーヴォーの代表的画家であり、19世紀末から20世紀初頭のパリにおいて、演劇ポスターやタバコ、シャンパンなどの商品広告で活躍した人物です。日本でも、ミュシャは大変に人気があり、国内のあちこちで展覧会が開催されています。また、ミュシャの作品をモチーフにした文具や雑貨、衣類も様々なところで販売されています。画家の名前を知らずとも、「どこかで見たことのある絵だな。」と思われる方もいるのではないかと思います。                            

ミュシャといえば、「ミュシャ式」とも呼ばれる若く美しい女性たちを描いたリトグラフが有名で、女性らしさを余すことなく表現した曲線的で流麗な筆致と女神のような豊かな精神性がそこはかとない雰囲気を漂わせます。
また、それらの色づかいは繊細で、詩的かつシンボルに満ちた世界でもあります。ミュシャは商業作品として「四季」や「芸術」といった抽象概念を擬人化させた連作を幾度も発表しました。当時のパリ市民たちは、その作品群に大いに魅了され、こぞって作品を買い集めたそうです。

そして、人生の後半では、祖国チェコの独立と繁栄を願い、作品にもその影響を色濃く残しました。特にスラブ民族の歴史を描いた大作「スラブ叙事詩」は圧巻で、数年前、私も国立新美術館へ赴き、大きな壁に掲げられたその絵をみたときは、その迫力とミュシャの強い意志にひたすら圧倒されました。

さて、自分のことに戻りますが、私はこれまで、それこそミュシャの作品世界に陶酔するだけで、ミュシャの絵のどのようなところが好きなのか詳しく考えることが有りませんでした。ただ、ミュシャの描く作風、世界観と、自身のセルフイメージと釣り合わないことは感付いており、ミュシャと理屈っぽい性格の私ではチグハグで、当時から違和感を抱いていた気がします。                      

ですが、INTJの特徴や傾向について考えたり、カール・グスタフ・ユングによる「夢分析」を知り、意識と無意識の思索を深めるなかで、自分の好きなものにおいても無意識領域に触れる何か意味合いめいたものがあるのでは、と考えるようになりました。

そのような視点に立ち、私がアルフォンス・ミュシャという画家を好きな理由を考察してみたいと思います。             

■私がミュシャを好む4つの理由

好きな理由その① 女性らしさへの無意識な欲求が潜んでいる

これまでも過去の記事で触れてきましたが、私には女性的な価値観に対する抑圧が働いています。無意識では、女性らしい美しさに対する憧れを持っていますが、自分がそれを表現することに心理的抵抗があります。その反動として、ミュシャの絵画を好む自分を無意識に強化し、ミュシャに投影していたと思われます。現に「ミュシャが好きな自分が好き」という自意識をもって絵画鑑賞している自分がいた点からも、やはり、抑圧と投影が反映されていたのだろうと踏んでいます。

好きな理由その② 枠組みと大胆な構図や対比が好き  

ミュシャは、優美な絵柄とは対照に、ポスター製作においては、縦のラインを強調したり、複数のアイテムを対比して配置するなど、大胆かつ効果的な構図を多用しています。演劇のポスターは、当時、劇場の外や街路に円筒状の柱を設置し、公開のたびに貼り替えられていたそうです。その目的から、訴求力のあるデザインで人々の注目を集め、かつ定型のサイズのなかで最大の効果をもたらさなければならない命題を常に求められていたことでしょう。枠組みや制約のなかで固有の芸術性を最大限に発揮するミュシャの姿に私はグッと心を持って行かれたのです。

好きな理由その③ 図案化、シンボライズされたデザインと装飾

また、ミュシャは、草花や魚などをモチーフに、食器、照明といった日用品やテキスタイルのデザインも手掛けました。モチーフの単純化や強調されたデザインに見てとれる才能のきらめきや独自性。芸術と日常の物とを組み合わせる「用の美」に価値を見出した点もまた魅力のひとつです。また、デザイン=象徴化のなかにモチーフの価値、本質を端的に注ぎ込める秀逸さも見事です。ミュシャは絵の中の世界に留まらず、生活そのものを価値あるものとし芸術の域にまで昇華させたかったのかもしれません。

好きな理由その④曲線と構造、夢想と主題、大衆と芸術 対立概念の統合

麗しく優美な女性の佇まいとミュシャの固有性を示す大胆な構成。相反する対立概念が一枚の絵画に内包されている。ミュシャの作品を俯瞰してみるとそのような印象を私は感じ取ります。芸術というものは、一つの作品世界のなかで、対立する異なる概念同士を組み合わせ、その上位の概念や新しい価値を創造する所業を指すものなのかもしれません。善と悪、愛と憎しみ、聖と邪、人が避けることの出来ない深い業をも包み込み、更なる高みを目指してゆく。芸術とはそういった矛盾を孕むものに対する統合、いえ、挑戦のようにすら見えてきました。ミュシャの作品を鑑賞していると不思議とそのような事を感じずにはいられません。

■ミュシャに内在する強い信念と深い愛情に傾倒するINTJの私

最後に、ミュシャの芸術の在り方を考えていると、美しい作品を生み出す強い信念と祖国チェコの独立と繁栄を祈る精神の崇高さが、ミュシャの固有の芸術性を長きにわたり駆動させた原動力そのものであったのではないかと思うようになりました。ミュシャは、当時のパリの華やかさに目もくれない実直な働き者、身近な人を大切にする地に足の着いた人物であったそうです。世界に対する個人の姿勢の有り様を含め、私はアルフォンス・ミュシャが好きなのだと思います。                

■INTJの芸術の楽しみ方

相変わらず思い込み強めではありますが「好きな画家」という主題でざっくり考察してみました。INTJの芸術との接し方の特徴として、作品世界を創り上げる枠組みや構造に着目し、その構造を自分なりの概念に落とし込むことを楽しんだり、芸術家が活躍したその時代背景や画家個人の生い立ちを辿り、様々な事象と観念づけながら鑑賞することを好むのかなと何となく思いました。              

以上、長文のところお目通しをいただき有難うございました。
           


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