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【歴史小説】花、散りなばと 全4章+付録

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「この古市を、新しい鎌倉にしたい」……大和国制覇を狙う衆徒・古市胤仙(ふるいちいんせん)。その町に迎えられた野心家の老僧・経覚(きょうがく)は、風流の才能に溢れる童子・春藤丸に魅… もっと読む
歴史小説「花、散りなばと」を、まとめて読んでいただくことができます!芸能、少年愛、引きこもり、モラ… もっと詳しく
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「花、散りなばと」経覚という人、古市という場所について

 この小説は、室町時代の奈良を舞台にしています。  主人公は、大乗院門跡の経覚。  彼は摂関九条家の生まれで、関白の子です。  当時の習いとして、十代から奈良興福寺に入り、わずか数年で大乗院門主、三十歳そこそこで興福寺別当(寺院のトップ)となりました。  実質的な大和国の王であって、貴種ならではの出世コースです。  その割に彼はかなり破天荒というか、自由闊達な性格だったように思われます。  興福寺に何の縁もない天竺人の子孫を弟子に取るなど、そのすさまじい闘争心もあいまって、

花、散りなばと 第一章【総集版】

 夜明けとともに葛城山の安位寺を出て、ようやくここ古市へたどり着いたのは、未の下刻であった。  経覚は、しばらくその場にうずくまったまま動けなかった。身を隠すような張輿にずっと乗り通しだったとは言え、五十の腰にはひどく応える。  上壇の迎福寺というところへ、ともかくも落ち着いて、外陣の置き畳にうつ伏せになっていると、 「古市播磨公様がご挨拶に」  と、年嵩の住持が知らせてきた。 「早速来たか。待ち構えておったな」  経覚はつぶやき、丸々とした体を畳のへりに沿って転がしながら、

花、散りなばと 第二章【総集版】

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200

花、散りなばと 第三章【総集版】

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200

花、散りなばと 最終章【総集版】

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200

「花、散りなばと」参考文献

この小説を書くに当たって、参考とさせていただいた資料の一覧です。 【参考文献】 ●書籍 高橋隆三 小泉宣右編『史料纂集古記録編 経覚私要鈔 第1~11』 続群書類従完成会、八木書店 一九七一年~二〇一九年 増補続史料大成刊行会編『大乗院寺社雑事記 巻一~巻一二』 臨川書店 二〇〇一年 奈良市史編集審議会編『奈良市史 通史2』 吉川弘文館 一九九四年 朝倉弘 奈良県史編集委員会編『奈良県史 第十一巻 大和武士』 名著出版 一九九三年 安田次郎『中世の奈良―都市民と寺院の支配』

【エッセイ】坂の上の奈良

 奈良の、なら、という名前は、「ならす」「平である」というところから来ているそうです。 「平城京」も「ならのみやこ」であって、「平」という字に「なら」という読みが当てられているくらいです。  しかし実際そこに住んでいると、「奈良ってほんとに平らな町か?」と思うことが、しばしばあります。  確かに、長崎とか尾道(行ったことありませんが)みたいな、いわゆる「坂の町」とは違うでしょう。  近畿圏で言っても、山と海に挟まれた神戸という所は、ちょっとばかり北へ歩いただけで、どこでも