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【旅日記】春旅行ファイナル➂ 学

徳島駅から穴吹行に乗り西へ、小一時間ほど電車に揺られました。

線路は続くよどこまでも
いい名前だ

ここが、私のご先祖が住んでいた土地だそうです。
今でも同姓の家が多く残ります。
(面識は全くありませんが…)

美しい山並み
名前の由来
春だねえ~
当地のお社

学、というのは大字おおあざで、さらにいくつかの小字こあざに分かれています。そのうちの一つが、一族の故地、ということになるようです。

吉野川の河川敷

父は七人きょうだいの末っ子で、非常に遅い子でした。
祖父は戦前生まれの人で、赤ん坊のころの私しか知りません。
何らかの事情があって、故郷にいられなくなった祖父は、この土地から外へ出て、兵庫県の尼崎まで渡ってきたといいます。
そこで喜界島出身の祖母と出会ったのだといいます。
祖母は、再婚でした。

実は二十年ほど昔、父と母はこの場所を訪れ、その調査結果を自分たちで小冊子にまとめていました。
反抗的だった私は、「下らないことしてるな」と思っていたのですが、今になって自分が同じ場所へ来ています。

父には一緒に来てくれる、母という人がいたのですが、私には誰もいません。
自分の家系、というのも、どうやら私の代で途絶えてしまいそうです。
その最後の一人としての見届け、という意味合いもありました。

こんなのもあったらしい

駅前でクロスバイクに乗った外国人らしい男性から、
「スミマセン、ここトイレないですか?」
と尋ねられました。
「そうなんです、ないんですよ。ただ川沿いにけっこう行ったら、コンビニがあるみたいです。その自転車だったら、すぐ着くと思いますよ」
私はそう答えたのですが、男の人は褐色の頬でニコッと微笑み、
「ガマンします」
とうなずきました。
そうして駅前にクロスバイクを停め、改札もない無人の駅舎へ入っていきました。
実は私も同じことを、地元の郵便局に入って訊いていたのです。
がんばって土手まで登ってみたのですが、私の足では、とても時間内にコンビニまでたどり着けそうもありませんでした。
なんせ一本の電車を逃せば、次は二時間くらい先になってしまいます。
そうなると、全部の旅程が狂ってしまうのです。
だから私と見知らぬ外国人の男性は、同じ列車の中で、一時間くらいトイレを我慢していたのでした。
かつて祖父が、故郷を捨てていったのと同じ道のりをたどりながら。

何もないのに、全てがある。私にとっては、そんな場所でした。

エンディングテーマ 「Last Train Home」Pat Metheny Group

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