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1990年2月10日(土)

【ハイライト:山口 可奈・太田黒 佳美】
「初動としてはぼちぼちかな」
「まだ10日なのでこんなもんでしょう」
 募集状況をまとめたノートを見ながら山口 可奈と太田黒 佳美がこのように話す。午後9時を過ぎた『ハイライト』で2人はのんびりとお酒を嗜んでいる。1期の冒険者達の迷宮探索が始まり、気持ちは2期募集に向いている2にんだが、少しずつ募集に応募があり、とりあえず安心をしている。
「とりあえずこの2期募集で1期の評価も変わるわね。何人か凄いのがいるけど、もしかしたら2期ではもっと凄いのが入ってくるかもしれないし」
 幾分期待も込めて山口がこのように呟いたのに太田黒も大きく頷く。せっかく募集をするのだから能力が高いにこしたことはない。2人は3ヶ月後の状況を楽しみにお酒を進める。
「ところでどう、最近彼氏は」
「別にー、仲良くやってるわよー」
 話題を変えた太田黒に山口は軽く声を返す。山口は同じ冒険者組織の大田 誠と少し前に付き合い始めた。元々3人で良く飲みに行ったり遊んだりしていたが、最近忙しくなったのもあり、太田黒はプライベートで大田と会うことはなくなっている。
「佳美はどうなのー、彼氏作んないの?」
「作んないのってそう簡単に出来るものではないでしょう」
 彼氏を作るということがそんなに難解ではないと考えている山口の思考は太田黒には少し理解ができない。もちろん太田黒にも彼氏がいたことはあるが、ちょうど大学を卒業して冒険者組織に入る時に別れた彼が最後である。
「まあ、なるようになると思うから今は1人を楽しむこととするわ」
 こう言って太田黒はウイスキーの水割りをグイッと飲み干した。

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