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第72話 ニコ生〈藤かんなチャンネル〉〜村西とおる監督のバトンを受け取った〜


『全裸監督』を全話観て、村西さんに感謝した

 『全裸監督』は観ていて辛かった。なのでシーズン2を観れていなかった。

 なぜ辛かったのか。それはAV女優目線で観てしまったからだ。 
 撮影前に「やりたくない」と出演を拒むと恫喝される。警察に捕まって、AV女優をやっていることが親にバレて、雑誌にも<都会の闇に堕ちたAV女優>と書かれる。

 ”AV女優には悲惨な未来しか待っていない・・・”
そう不安になった。それを観ていた当時の私は、AVメーカーの面接を終え、AV女優になる決意をしたところだった。

 しかしその『全裸監督』のモデルになった【村西とおるさん】に、ニコ生のゲスト出演してもらう。観るのが辛いとか言ってられない。

 生配信の前日、改めてNetflixに入会し直し、『全裸監督』を全話観た。

 シーズン2は1より辛かった。
 AV女優であった過去を知られて昼職の職場で嫌がらせを受ける。一世を風靡した女優がアパートのベランダから飛び降り自殺を図る・・・。

 ”AV女優をなんでこんな描き方するねん!社会の底辺みたいに描きなや!”
そう怒りすら覚えた。

 しかし村西さんに会う前に『全裸監督』を全話観たことは正解だった。

 こんなスケールの大きすぎる出来事が1人の人間の、1回の人生に起きたなんて信じられない。フィクションであってほしいとも思った。村西さん自身が激動の波に飲み込まれていくのを観るのが苦しくなったし、それと同時に、村西さんの周囲の人がぐちゃぐちゃになってゆくのが苦しかった。

 ”村西さんの暴走やん!”
そう思ってしまう場面もあった。

 しかし全話を観終わって、熱いものが込み上げた。

 "【村西とおる監督】が存在したから、今、私はAV女優をやれてるんや"
それは強い感謝だった。

 彼は間違いなく革新者、インベーダーだ。AV界という地を耕し、乱し、ならして豊かにしていった開拓者でもあるのだろう。彼に巻き込まれてむちゃくちゃになった人は多かっただろう。だがそれだけ人を惹きつけ、惑わさずにはおれない魅力の持った人だった。
 きっとエイトマン社長もその類だろうな。

 あれ、ちょっと待って。『全裸監督』第1話でセールスマン時代の村西さんが喫茶店でインベーダーゲームしてた。あれはもしかして”村西とおるはインベーダーだ”ということ伝えるサインやったんかな!?

村西さんはエイトマンをずっと鼓舞してくれた

 2023年11月25日。ニコ生配信スタジオにやってきた。すると入り口前に人影が。

 ”村西さんだ!!”

 私は浮き足だった。画面の中で観てきた人に会えた時の感動は不思議だなといつも思う。

 村西さんは世間話などで時間を無駄にしない。出会って一番こう言った。
「あのね、あなたのプロダクション(エイトマン)は素晴らしいですよ!こんなプロダクションはあなたのところだけです。これからのAV業界を牽引していくのはあなただと思いますよ!!」

 村西さんは本番が始まるまでの約1時間、ずっとエイトマンを鼓舞してくれた。

「僕はね、今日始まる前にこれを言おうと思って少し早くきたんです」

「もっとアレをコレするといいんです」「あなたにはそれができるだけのセンスと勇気と力があるんです」と社長を褒め、エイトマンの未来をずっと考えてくれた。

「かんなちゃんはね。彼女のAVはもちろん素晴らしいですよ。でもね、それだけで終わらせてはいけません。彼女ほど能力持った女優はなかなかいませんよ!降臨した女神なんです!!」
私にもそんな嬉しい言葉をくれた。

「もう5分前です」
そう言ったニコ生運営者に村西さんは言った。
「あなた、いい身体してるね。(AVに)出る気はないですか?」
息をするようにサラッとAVに誘う。ほんまに『全裸監督』や・・・。

本にサインしてもらった

配信開始!村西節に魅せられる

「お待たせしました!お待たせしすぎたのかもしれません!!」

 生配信が始まった。このセリフが生で聞けるのも感動だ。

 今回のテーマは<村西監督が見た地獄ベスト5>。タイトルを見ただけでもお腹がいっぱいになる。ただ今日はこのタイトルの話を全ては聞けないだろうと思っていた。村西さんの話力に任せてどんどん話してもらおうと思っていた。

ゲストの村西とおる監督が経験した地獄を語ってもらう

「僕はね、あなたがデビューした時からあなたに興味関心を持ってきたんですよ。AV女優であることがバレて、バレエのレッスンのお仕事をお辞めになったという話をXで見てね、僕は激怒いたしましたよ。こんな差別の世界がまだあるのかとね。
 それからね、この子を応援できることがあれが応援したい、お会いできる機会があればぜひ会いたいと思っていてね、その念願がようやく今日叶いましたよ」

 AV女優バレでXが炎上した時、村西さんはX上で私にコメントをくれていた。それに私をニコ生の『月刊Hanadaチャンネル』に出演推薦してくれたのは村西さんだ。感謝をしたいことがたくさんあった。そして今日それを伝える機会ができて、「念願が叶いましたよ」は私の方である。

 ただ、そんな悠長に感謝を伝える暇は与えてもらえない。村西さんはぐいぐいトークを進めていく。

 ”肌むっちゃ綺麗やなー。毛穴見えないくらいすべすべや。とても75歳とは思えへん・・・”
 ”破天荒で激動の人生を送ってる人が、こんな顔で笑うんや。ほんまに心の底から笑ってる笑顔やな・・・”
 ”村西さんのカメラ目線、眼力強いなー。眼球全くブレへんな”

 そんなことを思いながら村西さんのトークに聞き入っていた。

 村西さんの好きな本は『モンテ・クリスト伯』で、好きな映画は『エマニュエル夫人』という話。日本で一番有名なのは天皇陛下で、その次に有名なのは村西とおるなんだという話など、ここに書き残しておきたいものはたくさんある。
 しかしここでは、有料タイムに入ってから一番心に残った話を1つ書き残しておこう。

目を瞑るほど村西さんトークに聞き入る

一番心に残った村西さんの魂の叫び

 有料タイムに入り、<ハワイで370年の懲役>の話を聞いた。

「村西さんな、ハワイの上空でAV撮影した時に、飛行機の上からブワーッって射精してんて。それはな、アメリカに戦争で負けたことへの復讐としてやってんて。ほんまか分からんけど」

 社長からそんな前情報をもらっていた。そんなかっこいい話の真意は確かめなければならない。

「ハワイ上空での撮影はね、弔い合戦だったよ。
 第二次世界大戦主戦後にね、僕はまだ子供だったけれど、アメリカ兵が日本の子供たちにみかんの皮を投げつけるわけよ。そんな経験から”鬼畜米の精神”が子供の頃からあったのね。
 それでハワイでの撮影。真珠湾の方向に飛行機を飛ばして、その中でセックスするわけですよ。そこで僕はみかんの皮とティッシュペーパーをアメリカの空に投げ捨ててやりましたよ」

「その時どんな気持ちで投げたんですか?」

「ざまあみやがれ!日本は負けたかもしれないけど、俺は負けていていない!戦争で死んだ天国のおじさん達のためにも鬼畜米の空で弔い合戦してやったぞ!!」

 ”この魂の叫びは、きっと受け継がなければならない”
この時そう感じた。

 アメリカに闘争心を燃やすという意味ではない。強く太い”反骨精神”を感じたのだ。

 昔に比べて現在、強く太い反骨精神を持つ人は少なくなっているのではないだろうか。そう思うのも、私自身がそうだったからだ。

 ただAV女優になり、自分がむき出しになって、自分を守るもの、守ってきたものがなくなった。すると少しづつ自分の中で反骨精神が芽生えてきたような気がする。そしてこの精神は”生命力”だった。

 この時村西さんから感じ取った魂の叫びはしっかり私の記憶に刻まなければならないと感じた。自分を守るためにも。そして自分の遺伝子を引き継ぐ次の世代を守るためにも。

「日本は素晴らしい国ですよ。高額な医療もちゃんと受けられる保証が整ってるんですからね」
これは<余命1週間の宣告を受ける>の話。
 素晴らしい日本で安心してAVができて幸運だ。

 最後の締めに、村西さんのホラ貝の笛を吹かせてもらった。
「ファンタスティック!!」
番組は終了した。本当はまだまだ話を聞いていたかった。
・・・・・・・・・・

「村西さん、今日はありがとうございました!長生きしてくださいね。150歳くらいまで生きてください」
「ええ、ありがとう。ありがとね!」
私は村西さんと握手をして別れた。

 時代を作ったインベーダー。今度は私たちが時代を作っていく。村西さんからのバトンをしっかり受け取って次に繋げていこう。

まんこですね!

サポートは私の励みになり、自信になります。 もっといっぱい頑張っちゃうカンナ😙❤️