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第39話 エイトウーマン写真展2022④〜つばさ舞に鼓舞され、八蜜凛に震える〜


11月11日(金) 4日目 

藤かんなは大泣きする女性に飴を供える

 写真展開催中、午前はよくバレエに行っていた。この日バレエへいく途中、私と同年齢くらいの女性が道端に座って泣いていた。

 女性は天を仰ぎ声をあげて泣いていた。まるで、この世の終わりのような慟哭に私はギョッとした。

”一体何が起きたん。まだ朝やで!?”
そっと通り過ぎようかと思ったが、良心の呵責を感じて、その場に立ち止まってしまった。

 何かできることはないかと、私はカバンの中を漁った。カバンに『いちごみるく』の飴が3つ入っていた。私は飴の中でこれが一番好きなのだ。噛むと中がシャクシャクしている。ちなみに飴はすぐ噛む派。

 私は大泣きしている女性の足元に飴を3つ置いた。女性はチラッと私を見た。私は少し笑って(おそらく気持ち悪い半笑い)、小走りでその場から立ち去った。気の利いた言葉は何も思いつかなかった。自分の小心者具合が不甲斐なかった。

 バレエからの帰り道。彼女はもういなかった。飴もなくなっていた。彼女は泣き止んだのだろうか。飴は食べただろうか。完全密封タイプの飴ではなかったから、もしかしたら、捨てられたかもしれない。まあそれでもいい。

「コンタクトが痛すぎて、道端で泣いてたらさ、知らない女の人から飴もらったんだよねー!まじ怖かったんだけどー!」
と、どこかでネタにして笑ってくれれば本望である。

飴をあげるのでなく、写真展に招待したらよかったかな

西田幸樹がエベレストに登り、死にかけた話

 会場へ着いて、私は今朝の大泣きの女性の話をした。西田さんが言った。
「何があったんだろうね。でも最近そういう人増えたような気がするよ。コロナで色々不安定になってるからかな・・・。でもまあ生きてたら何とでもなるんだよ」
「西田さん、エベレストの話してくださいよ」
社長が言った。

「僕ね、エベレストに登ったんですよ。そしたらそこで雪崩に遭って、本当に死ぬかと思った・・・」
西田さんはその雪崩が起きた瞬間の動画を私に見せてくれた。白いもやが徐々に大きくなっていって、一瞬にして画面が真っ白になり、そして真っ黒になった。NHKかと思うくらいリアルで迫力のある動画だった。しかしさらに驚いたのは、西田さんは雪崩の様子を冷静に撮っていたという事実である。

「”あ、やばい”と思ったんだけどね、無意識にカメラ回してたね」
恐るべしカメラマンの職業病・・・。とにかく西田さんが生きていてくれてよかった。

西田さんは登山やマラソンの話をたくさんしてくれた

「雪崩に遭って、本当に死ぬんだと思った瞬間、”ちょっと待ってくれよ”って思ったんだよね。別に長生きしたいと思ってないつもりだったけど、その時、自分はまだ死にたくないんだって気づいた。”運よく生き長らえた命だから、世間に少しでもいいことしよう”って、ちょっぴり思うようになったよ」

つばさ舞は戦友であり憧れ

 『つばさ舞さん』が会場入りした。舞ちゃんに会うのはこれで3回目だ。つい1週間前に『スナックぐらびでぃあ』という小学館主催の配信動画で共演したばかりだった。連日、女優さんとの初対面が続いていたので、顔見知りの舞ちゃんに会えたことはとても嬉しかった。

舞ちゃんの友人が写真展に来てくれていた

 舞ちゃんは相変わらず、大きなおっぱいと細く長く伸びた手足、超モデル体型の体を惜しげもなく魅せつけていた。彼女の笑顔は本当に魅力的だ。口角は絵に描いたように美しい。こんなに綺麗に引き上がった口角は50人に1人、いや、100人に1人、それ以上かもしれない。<エイトウーマン口角引き上げランキング>では、間違いなく彼女がナンバーワンだ。

舞ちゃんの綺麗な口角は1000人に1人の逸物

 夜の<今日を振り返る会>には舞ちゃんが来てくれた。私は舞ちゃんが好きだ。竹を割ったような性格の彼女は、話していてとても楽しい。

 社長は舞ちゃんと私が似ていると言う。本当にそうだろうか。私には彼女のような瞬発力がない。人に流されやすいし、グズグズと考え込んでしまう根暗さもある。そんな私と舞ちゃんは全く逆なように思える。

 彼女は持ち前の瞬発力と勢いで行動し、奇跡を起こしてしまうタイプ。チャンスの女神の前髪を確実につかみ取る。なんならむしり取ってしまうパワーを持っている。

つかささんの前髪をもむしり取ってしまいそう

 そんな舞ちゃんに会うと、私はいつも元気をもらう。毎日朝と晩の2回、必ずツイッターを更新する彼女の努力を見ていると、”私も頑張らな”と思わされる。私にとって舞ちゃんは共に闘っていく戦友であり、憧れの存在だ。

11月12日(土) 5日目 

西田幸樹のサインをダシに使う

 写真展が始まって初めての土曜日。この日は女性来場者もちらほら見られた。その中に一際目立つおっぱいの大きな女性がいた。その女性は写真展をじっくり鑑賞していたので、私はカレンダーを勧めた。すると女性はこう言った。
「あの私、西田幸樹さんのファンなんです」
これはチャンスである。

「西田さん、奥におられるので、カレンダー買ったらサインしてもらえますよ!」
私は許可もなく西田さんのサインを約束した。
「え、本当ですか!?カレンダー買います!」
毎度おおきに。西田さんを呼んできますさかい。
 
 私は勝手に西田さんのサイン付きで売り込んでしまったことを謝ったが、西田さんは快くサインを引き受けてくれた。
「お名前はどうしますか?」
「『しずか』でお願いします。私、温泉モデルしてるんです」
彼女は『温泉モデルのしずかちゃん』として活躍しているタレントさんだった。本当に西田さんのファンは多い。

西田さんにはたくさんのファンが会いにくる

八蜜凛は写真を見て泣き、西田幸樹に会えて泣く

 この日の在廊女優1人目は『八蜜凛さん』。私はAVデビュー時期が凛ちゃんとほぼ同じだった。SNS上の彼女を見て「あんなバイオレンスボディには到底勝たれへんわ」とデビューしたての私は震えた。

 リアル凛ちゃんは2次元を3次元にしたフィギュアのようだった。おっきなおっぱいに細いウエスト、長い手足。どうやったらそんな体になるのか、少しでいいので教えてもらえないだろうか・・・。

 凛ちゃんは会場へ入る時、お辞儀をする。
「あれはなんの儀式ですか?」
私は社長に聞いた。
「感謝の気持ち。甲子園球児みたいなもんや」
分かるような分からないような回答。会場を見て回った後、彼女は感極まって泣いていた。甲子園球児も砂集めながら泣いてるもんな。

写真をみながら涙ぐむ凛ちゃん

 控え室に戻った凛ちゃんは、西田さんに言った。
「西田さん、私、ZARDが大好きなんです!」
そして彼女はさらに泣き出した。

”今度はなんの涙なの!?”。
私はオロオロしながら、控え室の入り口で彼女を見守っていた。最近、泣く人によく遭遇する。

 凛ちゃんの涙の真相はこうだった。

 彼女はZARDが大好きである。そして西田さんはZARDのCDジャケット写真を撮影したカメラマンであり、坂井泉さんの遺影の写真も西田さんのものである。だからZARDが大好きな凛ちゃんは、西田さんに会えてとても嬉しい。よって感極まって泣いてしまった、ということだ。

 それを聞いた西田さんは凛ちゃんにZARDを撮った時の話などをしてくれた。はじめはフンフンと聞いていた彼女だったが、突然、
「西田さん肩凝ってませんか?私マッサージ得意なんです」
と西田さんにマッサージを始めた。見ていた私は震えた。凛ちゃん!西田さんはまだ写真の話してるよ!

凛ちゃんのお姉さんも写真展に来てくれていた

「君、全然話聞いてないよねー!笑」
西田さんはそう言って笑った。内心カチンときただろうか、笑って流してくれた西田さんは仏だった。しかし凛ちゃんは西田さんの皮肉混じりの笑いにも全く動じていない。彼女のこの奔放な感じ?も、彼女の魅力なのだろう。ボディは最強、中身は少女。その名もバイオレンス八蜜凛。

 次はボディも中身もセクシーな『美乃すずめさん』がくるでー!

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