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1979年のプログレ風景:どっこいプログレは生きていた!ビル・ブルーフォードの濃いアルバムにハマる

 前78年末のジェネシス初来日の興奮冷めやらぬ1979年、ジェネシスファミリーのアルバムが立て続けにやってきます。来日を抜きにしても、この時期プログレ勢として、最も勢いがあったのは間違いなくジェネシスとその元メンバーだったわけです。初っ端は、スティーブ・ハケットです。

 78年のソロ第2弾は、前も書いたとおり、ジェネシス脱退後初のアルバムだったせいもあり、ちょっと力が入りすぎてかえって自分の音楽性のいろんな部分を詰め込みすぎた感があったのですが、3枚めになって少し肩の力が抜けたのか、今度は(わたしにとって)かなりいい感じの仕上がりでした。まあ、結局ジェネシスっぽい雰囲気がかなり戻ったということでもあるのですが、初期のスティーブ・ハケットの作品としては、今でも名盤とよく言われるアルバムなんです。

Spectral Mornings / Steve Hackette

 実はこの年、ジェネシスのオリジナルメンバーであり、2ndアルバムまでのリードギタリストであったアンソニー・フィリップスのソロアルバムも発売されているのです。それがこれです。

Sides / Anthony Phillips

 実は、アンソニー・フィリップスのアルバムとしてはこれは3枚目で、77年のThe Geese And The Ghost 、78年のWise After the Event というのがあったのです。1stソロには、例によってフィル・コリンズとマイク・ラザフォードが参加していたりして、ちょっとは話題になったのです。(そういえば、アンソニー・フィリップスとフィル・コリンズってジェネシス時代に面識無いはずなんですけどね…w) わたしもジェネシスファンとしては、ここもフォローしてはいたのです。ただ、やっぱり初期ジェネシスの香りを残すとはいえ、どうもあんまり積極的に推す感じにならなかったのですよね。それはこの3rdアルバムも同じだったのです。ちょうどこの頃、どんどんビッグになっていくジェネシスのおかげで、元メンバーのアンソニー・フィリップスも売り出そうという意図があったのだと思うのですが、これがあまりうまく行かなかったのでした。この後もアンソニー・フィリップスは、かなりの枚数のアルバムをリリースするのですが、いずれもヒットとは無縁の、知る人ぞ知るミュージシャンとなっていくのです。

 一方、ジェネシスのサウンドの要である、キーボードのトニー・バンクスの初ソロアルバムがやってきたのもこの年でした。ジェネシスに残った3人のメンバーの初ソロアルバムということで、これはかなり期待して聴いたわけです。

A Curious Feeling / Tony Banks

 そしてこれがまたすばらしいアルバムとなっていたわけなんですね。やはりジェネシスの屋台骨だけあって、楽曲も粒ぞろいなわけです。ただ、ちょっと「バンド」としてのイメージが乏しい感じがあったのですよね。ソロアルバムなんだからそりゃそうなんだとは思うのですが、何かイエスのメンバーのソロアルバムに似たような印象を感じたような気がします。そして、これが後にジェネシスのメンバーで一人だけソロアルバムが売れない人になってしまう、ひとつの要因なのではないかと思ったりするのですが…。

 といって、この年一番ハマったのは、実はジェネシスファミリーの作品ではなく、前年UKのアルバムをリリース直後に脱退して、自身のBrufordというバンドを結成した、ビル・ブルーフォードだったのです。

One Of A Kind / Bruford

 プログレ系ドラマーのリーダーアルバムというのは、それまで、イエスのアラン・ホワイト、EL&Pのカール・パーマのものは聴いたことがありましたが、わたしにとっては、どちらもかなり微妙な出来で、正直「ドラマーが作るアルバムって、どうよ?」という固定観念すら生まれていたのです。なので、このアルバムも、ビル・ブルーフォードが自分の名前を冠したバンドまで作ったとはいえ、普通だったら手を出さなかったと思うんです。ところが、これが音楽雑誌のレコード評で激賞されていて、それならと思って買ってみたら、刺さったのですね。ここから、実はビル・ブルーフォードは、77年にもう1枚リーダーアルバムをリリースしていることを知り、そっちに遡るんですね。それがこのアルバムです。

Feels Good To Me / Bill Bruford 1977

 こちらのアルバムは、ビル・ブルーフォードの最初のソロアルバム(このアルバムはBill Bruford名義、One Of A Kindは、Blufordというバンド名義ですが、メンバーはほとんど一緒です)なのです。One Of A Kindに比べて、こちらの方がよりプログレ的にこってりしていて(笑)、わたしは本当は、こちらの方にドハマリしたのでした。今、このアルバムがどのような評価をされているのかはあまり知らないのですが、個人的にはこのアルバムこそ、元イエスメンバーのソロアルバム全ての中の最高傑作と言って良いアルバムではないかと思うのです(異論は認めますw)。もともとソフトマシーンがあまり得意では無かったわたしが、アラン・ホールズワースというギタリストの凄さにはじめて触れたのもこのアルバムでした(本当はUKで聴いてるんですが、なんかそのときはあまりシビれなかった…)。また、アネット・ピーコックという女性ボーカリストも、このアルバム以外では聴いたことがないちょっと変わったボーカリストですが、これがまた実にこのサウンドにマッチしていて、エンディング付近の盛り上がりとか、ホントに素晴らしいのです。これはプログレの歴史の中でも絶対に外せない1枚だと思うのです。

 というわけで、70年代最後の年になり、フュージョンやサザンオールスターズなどを聴きつつも、相変わらずジェネシスファミリーのソロアルバムや、元イエス、元キング・クリムゾンの人のアルバムとか、まあそういうプログレ色の強いものはずっと耳にし続けていたわけです。

1979年のその他のプログレアルバム

Exposure / Robert Fripp

キング・クリムゾン解散以降あまり目立った活動をしていなかったロバート・フリップ(ピーター・ガブリエルのアルバムでバンジョー弾いたり、プロデュースしたりはしていましたが…)がついにソロアルバムをリリースしたのでした。ところが、このアルバム、当時音楽雑誌のアルバム評などでもかなり微妙な扱いで、あんまり売れなかったのではないかと思うのです。そうしてこのとき買わなかったのです。ストリーミングでも配信されてないので、最近になってやっとYouTubeで聴きました。後の再結成クリムゾンにつながる音は確認できるのですが、正直わたしにはあまり刺さりませんでした。

新月 / 新月

実は、こんなものまで手を伸ばしました。だって「日本のジェネシス」とか言われると、つい買ってしまうのです(笑)休みで帰省したときに吉祥寺のシルバーエレファントでライブも見ました。ところが、このアルバムは初版が1000枚も売れなかったそうで、後にかなりなレアものとしてアナログレコードが高値で取引されたそうですね。わたし、この初版の帯付きアナログレコードいまだに持ってるのですが、今売るといくらになるんでしょうねえ…(^^)

Product / Brand X

フィル・コリンズが参加していて、ジェネシスファミリーのアルバムに入る作品なんですが、やっぱり Brand X のファーストアルバムの衝撃からすると、食い足りないし、なんかコンセプトブレてるしということで、こんなのなら、ビル・ブルーフォードの方がずーーーっとイイじゃん、という感じでした(^^;) フィル・コリンズのソロアルバムはまだですが、この頃はまだフィルのソロアルバムを期待する感じには、あまりなってなかったわけです。

Danger Money / UK

いきなりビル・ブルーフォードと、アラン・ホールズワースが抜けてしまって、なんだかよく分からない状態でリリースされた2ndアルバム。もともと1stアルバムもそれほどわたしには刺さらなかったということもあり、当時わたしはこれは聴いてないんですよね。すいません。今聴くと、ファーストアルバムよりはわたしの好みに近づいてますね(^^)

Night After Night / UK

そんなわけで、日本で録音されたこのライブ盤も当時聴いてないのです。今聴くと、確実にエイジアにつながっていく雰囲気が感じられますね。

 実はこの年の11月30日に、プログレだけでなく、すべてのロックの歴史として重要なこのアルバムが発売されているのです。でも、ここからシングルカットした曲が大ヒットするのは80年になってからですので、このアルバムについては、次の記事に譲りたいと思います。これまで見たように、プログレ系はちょっと地味というかマニアックなアルバムが多かった79年なのですが、その年の最後に、実は大物も登場していたのです。

The Wall / Pink Floyd



【追記】
ビル・ブルーフォードの Feels Good To Me の印象的な女性ボーカリストアネット・ピーコックについて、MALさんの記事です。


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