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1992年のプログレ的風景:イエス、EL&Pの来日、ジェネシスのライブ、マイク・オールドフィールドとピーター・ガブリエルの新譜と、久しぶりのプログレな年w

 この年2月、「奇跡の再結成」と言われたイエスが来日公演を実現させます。例の「8人イエス」のワールドツアーの一環だったわけです。わたしは前年のUnion(邦題:結晶)も、わりと満足して聴いていたので、この年のライブにも喜んで行ったんだと思うんです。会場は、国立代々木競技場 第一体育館でした。当時洋楽ミュージシャンのライブ会場としてはあまり使われていなかった場所で、ちょっと珍しかったので、記憶に残っているのです。ところがなんです。このときのコンサートの内容が、ほとんど何一つ記憶に残っていないのですよ。これがわたしの初めてのイエスライブ体験だったというのになんです。

 いろいろ調べると、オープニングは、例の「火の鳥」から、Yours Is No Disgrace だったはずなのですが、それすらも忘却の彼方…。それ以外も、とにかくどんなライブだったのかが、ひとつも思い出せないのです。これは一体どうしてなのか? この頃は、まだ8人イエスのグダグダ情報はほとんど耳に入ってないはずなのですが、やっぱりわたしにとっては、あまり面白くないライブだったのではないかと….。このときのライブで感動した人がたくさんいるんだと思いますし、そういう方々には誠に申し訳ないのですが、ここまで記憶から消えてしまっているライブというのは、後にも先にもこのときのイエスだけなんですよ…。

 そうこうしているうちに、今度は6月、何と!再結成EL&Pの新譜がやってくるのです。間にEmerson, Lake & Powellとか、3 とか、微妙に違う3人ユニットの作品をはさんでいましたが、今度こそ、正真正銘のEL&Pが、ニューアルバムをリリースしたわけです。あの Love Beach の衝撃から、苦節14年目の出来事なんですよ、奥さん(笑)

Black Moon / Emerson, Lake & Palmer

 このアルバム、レコード会社からケツを叩かれたキース・エマーソンが、グレッグ・レイクと話しあって、ようやく再結成に同意したという話のようで、わりと商業的な理由だったみたいな言われ方していますがそれでもわたしには、これぞEL&Pな内容でした。90年代のはやりとは、もうまるで無縁な音だったわけですが、それでも、これ以上何を望むんだ、くらい盛り上がってしまったわけです。

Farewell To Arms / Emerson, Lake & Palmer

このアルバムで一番シビれたのはこれ(^^;)。これぞグレッグ・レイクというバラードです。彼はこの後ソロのコンサートでも、この曲を朗々と歌い上げてましたね。この演奏は2010年の40周年記念ライブのもので、92年のセットリストには入ってなかったと思いますが…。

 そして、EL&Pは9月には来日公演までやってくれるわけです。わたしは渋谷公会堂で彼らを見ました。これは完全にプロモーターの読み違いだと思うのですが、このツアーは、妙に小さな会場ばかりブッキングされていたのですね。ところが、この再結成で盛り上がったわたしのようなファンが、ライブに殺到したのです。おかげで彼らは、同じような小さな会場で何度も追加公演をするハメになったわけなんです。でも、このとき彼らは実に素晴らしいライブを見せてくれたのでした。まあ、相変わらずグレッグ・レイクがかなり太っていて(Aisa In Asiaのときより明らかに、二回りくらい大きくなったんじゃないかと、遠目に見えまして…w)、大丈夫かよ… と一瞬心配したのですが、そんな心配も、オープニングの Karn Evil 9 でいきなり吹っ飛ばしてくれて、挙げ句にキース・エマーソンの伝統芸w(もちろん生で見たのはこのときが初めて)もたっぷりと堪能することができたという、思い出のライブだったわけです。(もしかしたら、イエスのライブが記憶から飛んだのは、直後のEL&Pのライブが強烈すぎたからかもしれません…w)


ライブと言えば、この年8月には、ジェネシスがイギリスのロンドン郊外のネブワースというライブで有名な屋外スタジアムで行ったライブを、全世界にテレビ中継するというイベントもありました。今は、海外のライブがネットで生中継されるというのはよくありますが、当時としてはまったく初めての体験でして、こういうのは過去にはなかったような気がします。日本ではWOWWOWでの放映ではありましたが、わたしはWOWWOWに入らずに、あとで西新宿でブートのビデオをゲットしたりしたわけでしたが….。

8月に生中継された映像はこれですね。そしてこれが、ジェネシス最後のワールドツアーとなったわけです。(まあその後2回再結成ツアーがありましたけどね)

 さて同じ8月、久しぶりにマイク・オールドフィールドが新譜を出すのです。これが大きく取り上げられたのは、その新譜が、何とチューブラ・ベルズ II という内容だったからなのですよね。

Tubular Bells II / Mike Oldfield

 しかも、このときの II の意味は、続編ではなく、リメイクだったのでした。まあ本人のチューブラ・ベルズネタは、この後もいろいろと続くわけですが、その発端となったのがこのアルバムだったのです。

 わりと批判的な意見もあったように記憶しています。というのは、けっこう細かいメロディは異なってるし、前作に全く無いイントロがついていたり、アレンジが異なっていたりして、他人がカバーしたみたいな感じもあったからなのです。でも、マイク・オールドフィールドとしては、自分の原点である作品を、90年代の最新技術で再録したいという思いは、あって当然だと思うのですよね。ですので、CDが当たり前になったこの時期、ものすごくクリアな良い音でもう一度チューブラ・ベルズが聴けるというのは、わたしとしてはかなり新鮮な体験だったし、これはこれで面白く聴けたのでした。(このアルバムのプロデューサーが、あのジェフ・ダウンズだったというのは最近まで知りませんでした。いや、別に批判してるわけじゃないですw)

そして、この年を締めくくったのは、12月リリースのピーター・ガブリエルなんです。

Us / Peter Gabriel

 ピーター・ガブリエルも、ジェネシスと同じく、1986年に前作Soが大ヒットして、そこから6年ぶりのニューアルバムだったわけです。この人たち申し合わせたわけじゃないのでしょうが、なんかこの頃アルバムサイクルがシンクロしてるんですよね。そして、この作品も、ジェネシスと同じように、やはり「延長線」上の作品だったのでした。

 ピーター・ガブリエルという人は、このときまで、一度も延長線上のアルバムを続けたことがなかったと思うのです。それこそ1stソロアルバムから、アルバムごとに新しい音楽性を世に問うたみたいな感じが続いていて、3rdでようやく世に受け入れられたと思ったら、そこから4th、5thとまた変化して、5thのSoでついに大ヒットをつかんだわけなのです。ところが、ここにきて、天才ピーター・ガブリエルも、全米No.1まで出した前作5thの雰囲気をかなり踏襲したアルバムになったのですね。

 でも、ジェネシスと同じで、こういう「延長線上」というアルバムは、歴史的に見てもなかなか前作のヒットを超えることはないのです。果たして、ガブリエルもそうだったようで、このアルバムからシングルカットしたなかで一番売れた Steam も、最高が全米32位、全英10位と、そこそこ売れましたが、大ヒットとはならなかったのでした。かくいうわたしも、このアルバムは、彼の作品の中で、一番聞いた回数が少ないのではないかと思います(サントラとかは除く…w)。そして当時、「この調子が続いたら、ガブリエルもこの先無いんじゃないか」とすら思ったのでした。(さすが天才ピーター・ガブリエルは、そんな思いを次のアルバムでぶっ飛ばしてくれるのですが、それまで10年待たなければいけなかったわけですがw…)

Steam / Peter Gabriel

やっぱりこれは、Sledgehammer II みたいにきこえちゃったのですよね。こういう感じだと、Sledgehammer を超えるのはなかなか難しいのです。

Secret World / Peter Gabriel

このアルバムの白眉は、アルバム最後に配されたこの曲ではないかと思います(この動画では、コンサートのエンディングソングですね)。この曲もスタジオ盤とライブ盤の落差がけっこうあって、ライブがすんごく良いのですね。これぞピーター・ガブリエルだと思うのです(^^)



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