どうなるリヴァプール23‐24シーズン

なぜ補強が進まないのか


私は監督とフロントの対立で補強が進んでいないという仮説を立てている。

現在の登録枠の使用状況。CTはクラブ育成枠(25-自由枠-協会育成枠)

自由枠は最大17枠中15枠を使用中で、2枠の補強枠がある。AT枠は構想外のナット・フィリップスのみ。CT枠は4枠しか使っておらずAT枠は最大の4枠。補強の噂はMFを2人、DFを1人で3人。自由枠の選手を売らなければ3人目の補強はAT枠の資格を持つ選手を獲得する必要がある。ラヴィアは3シーズンをイングランドで過ごしたためこの夏にAT資格を獲得した。したがって彼を獲得する噂が出ているのだろう

私の仮説ではフロントが用意する移籍金の予算は£80m程度。フィリップスが噂通りボーナス込み£10mで売却できれば最大£20m追加され£100mが最大の予算となる。フロントはこの£80-100mから2人獲得しようと考えており、3人補強する場合チアゴかマティプを売却する計画だからAT枠は不要なので予算的にラヴィアの獲得に乗り気でない。一方で現場の監督は現戦力に加え3人欲しているためAT枠の登録が必要でラヴィアが必須と考えている。この両陣営が歩み寄らないから話が前に進んでいない。これが私の仮説(高年俸の選手を引き抜く場合、移籍金の予算はその分だけ減る)

質が低いデューズバリ―=ホールや補強ポイントから外れたクレスウェルといったHGの噂はドークをELに登録する可能性を模索した為だと思う。ドークはプレミアリーグではU21扱いとなり登録不要で使える。だから彼をEL登録するほど監督が無能でないと信じたい事もあって私は実現しないと予想する

今夏は登録枠がある久しぶりの市場である。数シーズンに渡り登録枠の問題から補強が進まないという仮説で私は話をしていた。ここから2人の補強が今夏なければ私の仮説は誤りで過去の補強不足の責任は監督でなくクラブにあった事になる

オーナーは金を盗むことも出資することもなく、何もしないまま数シーズンが経過した。今夏はオーナーからの出資がなくても銀行から金を借りて投資をしなければならない状況であり、この状況下でクラブが投資を怠るはずがない。私は最低2人必ず補強すると確信している

ただデータ班の評価額以上を払う事を嫌うフロントと選手がチームに馴染む時間を作るため高い金を払っても今すぐ欲しい現場の溝が埋まらず、開幕前に補強が進まない可能性は高いと私は予想する

フロントの方針は予算内で欲しい選手が市場に出れば移籍金は惜しまず相手の言い値を払い他の選手の獲得を諦めてでも獲得する。一方で代わりがいる選手には移籍金を渋り予算内で取れなければコスパの良い選手に妥協すると一貫しているため、移籍市場が閉まる直前まで話がまとまらずパニックバイとなる可能性は否定できない

フロントの姿勢を見ているとフロントはラヴィアを高く評価してないように感じられる。ラヴィアはシティが見切って売った選手で初のワールドクラスとなるかも含め、今後が注目である

23‐24シーズンの目標はCL権の獲得

今季の目標はCL権の獲得。それ以外に何もない。何故なら何一つタイトルを勝ち取れそうにないからである。戦力は守備的MFを除けば揃っている。ただアーノルド以外の選手の個性を潰す戦術を取り化石レベルの戦術では期待値できない。タレントの質がプレミア平均レベルなら降格しても不思議はないほど守備も攻撃も破綻した完成度である

守備

まず走力に富む選手で前からプレスし下手な選手に追い込む。下手な選手が焦って大きく蹴ったロングボールをカバー範囲の広いCBで回収する。プレスが外れたらダイクとロボとアリソンの守備力でカバーする。リヴァプールでクロップが8年かけて出来た守備戦術はそれだけだ

しかし前線とMFの走力が低下し、相手DFのボールを扱う技術は向上した。結果、特攻フォアプレスで掴まえきれずDFにかかる負担が増え続けている。その上ダイクが衰えてアーセナルのサリバすら下回る水準に落ちた。コナテより格下のサリバにダイクが劣るようになれば選手の質に任せた守備が成立しない

降格の決まったサウサンプトン相手の4失点、プレミア最低得点のウルヴズ相手に3失点。世界最高のGKであるアリソンを抱えて2021シーズンの42失点を超える47失点。カバク、フィリップス、ウィリアムズの最凶CBで戦った2021シーズンより失点が増えたのは相手のレベルアップと自軍の衰えを認識せず同じことを繰り返すからである。今季もプレシーズンを見る限り守り方は何も変わっておらず選手の質でカバーするしかない。では選手はどうか

ワールドクラスの1617、ロヴレン以下の1718、世界TOP5の1819、ゴメスに劣った1920、世界TOP5の2021と2122、2223は微妙とマティプには安定感がない。稼働が少ない年の翌年に稼働すれば大活躍なので例年通りなら今年は活躍する年に当たるが、計算は出来ない

ゴメスはスピードを武器にライン裏を狙うボールを回収する仕事は超一流。1920はワイナルドゥムとヘンドが下手な相手に素早く嫌がらせプレス→苦し紛れにロングボール→ゴメスとダイクで回収して無双した。だが1vs1を広いスペースで止める力はマティプに比べても大きく劣る。大怪我後に出場機会が少なかった事もあり、対人守備が衰えたゴメスはFBの戦力になっても2CBの戦力に計算はできない

前線のプレスもフィルミーノとマネの水準にあるのはジョタとサラーだけ。ガクポとヌニェスとディアスは頑張るが連携不足だ。プレシーズンを見れば分かるがマクアリスターは連携なしに単騎でボールを奪える選手ではない。90分11km以上頑張って走るジョーンズやソボスライも連動は苦手とあってフィルターがかからない。ファビーニョの退団により守備力は昨季より更に下がる

そのためDFが広いスペースを単騎で止める無理がかかる設計である。前線のギャンブル守備が失敗しても守備を成立させた全盛期ダイクは帰ってこないのだから戦い方を変えないとリヴァプールがタイトルを争う時代は戻らない

ダイクの後継者として獲得し、全盛期ダイクに最も近いコナテですら全盛期のダイクに程遠い。ファンが望んだグヴァルディオルの守備力はコナテ以下と世界中の何処にも全盛期ダイクに近い人材はいないのだ

攻撃

問題はビルドアップが整備されておらず連携がない事にある。DFからFWにボールを出して前に走る→FWがMFへボールを落とす→MFが裏のスペースに走るFBへパスを出す。リヴァプール以外の強いチームなら全試合で見られると言ってよいありふれた光景もリヴァプールでは滅多にない。約束事がないのでパスを貰ってから次に渡す選手を判断しているケースが度々発生する。だから高い技術を持ちながらミスが多い

また相手プレスに対して最終ラインの枚数を調整する事もない。相手プレスが1枚で最終ラインに3人置けば最終ラインでミスは起きにくくなるが前線は常に2枚の数的不利を抱える。結果、最終ラインの次のラインでボール回しが停滞して最終ラインにボールが帰ってくる。敵が作る守備ブロックの外側を回すだけで内側に切れ込むことが出来ずロングボールやクロスを放り込むばかりだ

低い位置の設計に欠陥があるので前が詰まる問題を一部の人間の即興プレーと高い技術で強引な突破を目指す。それゆえネガトラ時のポジションが悪いパターンが多い。相手はこちらのミスを待ってドン引きカウンターするだけでリヴァプールは自滅した。パレス相手に2分しボーンマスやフォレストやウルヴズやリーズやブレントフォードやユナイテッドやアーセナルを相手にも負けた。そしてブライトンとシティには完全に支配されて完敗だった

降格、欧州との両立に苦しんだ2チーム、今季から欧州と両立するクラブのみ連勝
この24ポイントが減る可能性もあり、他で伸ばした分が相殺される可能性はある

ヘンダーソンという足枷は外れてマクアリスターの加入で攻撃力は上がる。アーノルド→マクアリスターの即興からチャンスが増える可能性はあるが、スペースを完全に消された展開で高い位置のマクアリスターにボールを供給する形が狙って作れるか、かなり怪しい。1試合で9点取る最大火力が勝点に結びつかない事は昨季に証明されており、欲しい時こそ点が入らない現状が変わる計算はしにくい

ダイク依存サッカーから脱却せよ

守備の穴を突かれてもカバーする全盛期ダイクが今は何処にも存在しない。この当たり前の前提を受け入れたなら最終ラインにロボとアーノルドを置く配置の線が消える。バルセロナ黄金時代の黎明期はファンブロンクホルストとベレッチをFBに配置したが、攻撃的なFBを両翼に配置する戦術はバス止めカウンターの前に沈んだ。その後バルセロナはベレッチの出場機会を減らし技術的に劣るオレゲールを配置した

オレゲールはCBでもFBでも一流半の3CBの右で一流の選手だった。その後、ダニ・アウベスを手にしたバルセロナはオレゲール同様にCBでもFBでも一流で3CBの左で超一流のアビダルを左に配置し、攻撃的なFBを両サイドに配置する設計を放棄した。この構想をパクる必要がある

マティプにアーノルド裏の広いスペースをカバーさせる現在の構想は根本的に間違っている。DFの走行量が少ない→ライン間の間延びを避けるため最終ラインにFWがプレスをかけられない→CBからの球出しに完璧なタイミングでニャブリが抜け出す→アーノルドが追わない→広いスペースをマティプが担当するミスマッチ→失点

バイエルン戦1失点目でマティプを叩くのは愚かである。加速したニャブリに莫大なスペースを与えて周囲のフォロー0で止められるCBは全盛期ダイクぐらいである。ニャブリの動き出しを感知できるDFをRB側に配置し、2人でコースを限定しつつ後ろのフォローがある状態で相対するDFが仕掛ける設計を作る必要がある。取れるトップレベルのRBがいないのでアーノルドにRBをさせる方向で下の記事を書いたが、愚かな考えだった

現状のチームで必要なのはトップクラスのRBではない。RBでもCBでも一流の3バックの右サイドで超一流の人材である。LBはロボとツィミカスという素晴らしい選手を抱えており、彼らがLB以外の適性が全くないこと。またRBはアーノルドのバックアップが居らずDFとしてあるまじき守備意識なことを考えるとアーノルドをMFに押し出せるRBとCBをこなせる人材が必要だ

最悪の場合はRB適正が全くないコナテを右で起用する形になる。ただCB適正のある選手を3枚配置する構想ならコナテとマティプの稼働時間が読めないので補強は必須だ。DFとファビーニョの穴を埋めるアンカー補強は必須だ

リヴァプールの未来はCBにマルキーニョス、アンカーにブバカル・カマラを補強できたなら一気に明るくなる。年俸に見合わぬダイクとマティプの後釜も必要となる。トディボとコチャプに私は期待しているが、登録枠の都合で誰かを放出せずに獲得する事はできない。マティプの売却も検討する必要性があるだろう

基礎的なビルドアップの改善も必要

フットボールはボールを相手ゴールに運び逆を防ぐゲームなので相手の守備の仕方によってボールの運び方を変えるべきである。しかしリヴァプールのDFラインからの前進方法はワンパターンなので読みやすく対策されている

1920あたりはロボとアーノルドが高い位置を取り、アンカーのファビーニョやヘンダーソンがDFラインに降りる設計。このDF前にボールの扱いが下手なワイナルドゥムやヘンダーソンが陣取る。彼らは近くに敵がいるとボールを貰えない位置に隠れたり(ワイナルドゥム)、ダイレクトでバックパスを出す(ヘンダーソン)のでボール出しが詰まった

3-1-5-1で1番奥のダイク、ファビーニョ、ゴメスへのプレスは緩めて、2人を1のヘンドやワイナルドゥムの近くに付ける。稀に1をケイタが担当する事もあったが、ケイタは2人に囲まれてドリブルを開始できるほどの技術はない

したがって敵4人を2人で無力化する事ができた。ダイクやファビーニョからのロングボールは殆どが外に向けて蹴るので両翼に位置するサラーやマネにマンマークを付ける。マネやサラーの裏抜けには数的有利を使ってカバー。仮に裏へボールが通っても必ずバックアップを取れる状態なので決定機にはなりにくかった

高い位置のロボとアーノルドはマンマークを付けプレーを制限するとバックパスが多くなり、ロボ→最終ライン→アーノルドでブロックの外でボールを回すだけ。最も危険なのはフィルミーノやマネやロボが低い位置まで下がりボールを持ち、個人技で打開を始める場合。ここでは彼らを追いかけず彼らの技術に数的有利で待ち迎えて気合で立ち向かう。ここでの質の勝負を量でカバー出来ればリヴァプールの攻撃は封じやすかった

チアゴがヘンド・ワイナルドゥム・ケイタの仕事を引き継ぐと2人を付けても個人技で打開し始めたので攻撃を止めるのは難しくなった。しかしチアゴの稼働は年2000分程度で良い状態の時間は更に少ない。だから2122シーズンからチアゴの有無がチームの成績を大きく左右した

チアゴのコンディション不良もあり成績が安定しなかった昨季に偽FBを導入した。だが結局はCB2+FB1の3枚とアンカー+FBの2枚で固定。この3-2で組むシステムは外のパスコースを作るためにIHやWGの上下動が大きくなる設計で外に開くコースをサボると途端にパスコースが足りず詰む。一方でWGがWBまで戻ったら運動量の負荷が増えてWGの得点力が減る

シティが偽FBで成功できたのはロングパスの上手いCBが一列飛ばしてパスを出せた事もある。ディアスもストーンズもラポルテも27m超のパスを成功率80%以上で7本以上も通す。一方リヴァプールはマティプが70%程度でゴメスとダイクは60%台、コナテは50%程度の成功率で通す本数も少ない。クロスが上手いロボも縦長のパスは上手くない

アーノルドの機嫌を取るため3‐2ビルドアップを導入しても1列飛ばすパスが通る確率が低いCBでは両WGやIHにかかる負担が大きくなるばかりである。能力を無視してトレンドのサッカーを真似てなぞってもすぐに対策される

外に開いてパスコースを確保する動きが徹底できていないのでビルドアップが苦しくなり相手のプレスを選手の曲芸で中央突破するケースも多い。固定のポジションから先の意図がないからパスが回らない。構造的に欠陥がある戦術をいつまで続けるのだろうか。選手の能力を軸に組み立てる力を持った監督に比べリヴァプールは監督の点で大きなハンデを背負っており、改善の目途は今の所ない

どうなるリヴァプール

データ分析班は昨夏MF補強を訴え続けたが、クロップに拒否されて売れ残りからアルトゥールを掴むことになった。首脳陣の主導でヌニェスとガクポを獲得しMF補強を放置するウルトラCを見せ、シティに次ぐ戦力を持つチームでPL5位に導く超無能采配を連発。呆れたデータ分析班はエドワーズに続きウォードとグラハムが退任を決めた。ウィリアム・スピアーマンも退団すると思われたが、ウォードの椅子を継ぐ形で残留を決めた

2024年に契約満了する予定だったクロップだがエドワーズの退任もあり補強の権限を得た事に満足したのか、よく分からない理由で急遽2年契約を延長した。クロップはドルトムントで2013年に2018年まで契約を5年延長したが2015年にチームの不調で突如退任を決断を下したように直感で動くタイプ

ピアースやサコやカルヴァーリョの処遇を見れば分かるように自分の意見と合わない人間には冷たいが、基本的に世話好きで楽天的な人に好かれる人間である。考え付いたら良く考えずに即実行する行動力の高いタイプの人間に見え、自分の思い通りにならない現状にいら立ちを覚えているだろう

プライドも高いので解任ムードがチーム内に漂えば情熱が尽き突然の辞任を選択する可能性が高まっているようにも思える。また補強を進めるデータ班が方向性の違いからクラブを去る可能性、また両者そろって退任の可能性もあるとみている

今後のリヴァプールの未来は見えない。今季CL権を逃せば更なる予算の圧縮が必要になる危険が迫る。監督の限界を感じて短期的な目標の達成には監督交代が必要だと思う一方で広告価値やファンの減少、主力の造反など長期的な視点では監督交代が不正解になる可能性も高い

フロントが迷い続けて2025‐26シーズンのCLに参加できず、主力選手を売る再建期に突入する最悪の未来を招く可能性もある。リヴァプールにかかったどんよりとした雲が晴れる兆しは未だ見えていない

万全の戦力でギリAクラス、他がコケないと優勝はないと断言できた今年は故障者の続出もあって最下位が濃厚だが2024年に向けて明るい兆しが増えるドラゴンズよりも未来が不透明なのは非常に残念である

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