見出し画像

英国の子どもの4人に3人は自然の中でもっと時間を過ごしたいと考えている-National Trustの調査

case|事例

英国の子どもの76%は自然の中で過ごす時間をもっと増やしたいと考えており、56%の子どもたちは緑地へのより良いアクセスが必要だと考えていることがNational Trustの調査で明らかとなった。この調査は子ども向けの新聞を発行するFirst Newsと協働で実施され、7歳から14歳までの1,000人の子どもたちとその親1,000人が対象とされた。

子どもたちの要望とは対照的に、68%の親は子どもを週1回以下の頻度でしか自然に触れあえる場所に連れて行けておらず、その原因はアクセスのしづらさにあることが指摘されている。また緑地へのアクセスに社会的な格差があることも明らかにされた。低所得世帯の親の31%は自然や緑地へのアクセスを妨げる要因として費用を挙げており、経済的な格差が自然と触れ合う機会を奪っている構図が見て取れる。

スナク首相は2023年1月に一連の公約の中で、すべての人が自然や緑地から15分以内に住める環境を創出することを掲げており、同年に環境法に基づき環境改善プラン(EIP:The Environmental Improvement Plan)を策定した。EIPの中でも1世代以内に緑地から15分以内に住める居住環境を創出するとしていた。しかし、このような環境創出の実現を政府が真剣に考えていないことを示唆する文章がリークされるなど、政府の態度には疑念が残る。

National Trustは、自身の活動や世論調査から市民の緑地への関心が高いことを確認しており、現状で国民の38%しか緑地から15分以内に住んでいない実態などを踏まえて、公約の着実な実現を求めている。既往研究では、幼少期や若年期に自然に触れ合うことで、成長してからも自然への関心を高めることができ、自然保護活動への関与の可能性を高めるということも明らかにされており公約の実現は社会的な便益もある。また、自然と触れ合うことは、子どもの肺の健康状態を高め、骨密度を強化し、精神面・身体面両方の健康状態を改善することも研究で明らかにされており、子どもの生育にもメリットがある。

insight|知見

  • 弊社の近所の公園では、放課後や休みの日に子どもたちが野球をしたりラグビーの練習をしたりして遊んでいる光景が見られて毎日微笑ましく眺めていますが、全体としてはこのような光景は少なくなっているかもしれません。

  • その原因として、生活習慣の変化も考えられますが、そもそも場所がなくなっている可能性もあるなということを、この記事を読みながら考えました。

  • National Trustの調査で自然と触れ合うということをどのレベルで定義づけしているのかはきちんと追えていませんが、日本も公園の使い方や作り方を改善する必要がありそうだなと思いました。視覚的に自然の量を増やすことも大切ですが、それが触れ合う機会を必ずしも増やすことにはならないですよね。