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多核型都市はヒートアイランド現象が緩和される

case | 事例

都市のヒートアイランド現象は、世界各地の都市に影響を及ぼしている重大な環境問題である。学術誌『Environment and Planning B』に掲載された研究では、複数の都市中心部を持つ都市(ポリセントリック)空間パターンという興味深い解決策が提示された。

都市のヒートアイランド対策には、グリーンインフラ、屋上緑化、透水性舗装、都市林など樹冠を増やす植樹プログラムなどの有効性が確認されているが、ドイツの50の都市地域を分析したところ、複数の都市中心部を持つ都市(ポリセントリック)の方が、1つの都市中心部を持つ都市(モノセントリック)よりも、都市密度を分散させ、熱を吸収する地表面を減らすことが明らかになった。同研究では、都市の暑さを軽減するためには、大規模で集中的な緑地とは対照的に、小規模で分散的な緑地が重要であることが示唆されている。

研究の結論としては、都市のヒートアイランド現象を緩和する上で、都市に多核的な空間パターンを作る地域レベルの計画が重要であることを強調している。都市が成長し進化し続ける中で、大規模で集中化された緑地を整備するのではなく、大都市圏全体に小規模で分散化されたオープンスペースを都市計画や開発戦略に含めることが、よりバランスのとれた持続可能な都市開発を促進するとしている。

insight | 知見

  • コンパクトシティの事例で、富山市の「お団子と串の都市構造」や宇都宮市の「ネットワーク型コンパクトシティ」のように都市内に複数の機能が集積する拠点を作って公共交通でつなげる計画がよく取り上げられますが、このようなコンパクトシティづくりは、都市の活性化、少子高齢化やインフラの維持管理への対応以外に、ヒートアイランド現象の緩和にもつながる、という視点も加えられそうですね。