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公共空間を人中心に再編し続けている仏リヨン

case|事例

リヨン市は、リヨン都市圏と協働で、人中心でインクルーシブな公共空間を創出し都市の変革を進めている。中でも、「rues des enfants(school for children)」と呼ばれる学校周辺の街路をより安全で環境に優しく、インクルーシブな空間に再編する野心的なプログラムが特徴的だ。

現在、このプログラムは60以上の小中学校で実施されており、生徒とのデザイン検討や交通静穏化、緑化、歩行者を優先する道路空間の再配分などが含まれている。これまでに延べ15,000人の生徒が、計画作りからデザイン、実施に至る各フェーズに参加している。22の地区は歩行者専用化が施されているが、残りの他の地区は20km/hの低速ゾーン化など交通静穏化が施されたシェアドスペースへと生まれ変わっている

リヨン市内のビジネス街ダントン地区は、「rues des enfants」で生まれ変わった代表的な地区だ。ダントン地区はバルセロナのスーパーブロックをモデルに地区内の公共空間再編を実施し、通過交通を排除するために動線計画を見直し、制限速度を20km/hに引き下げ交通静穏化を施した。その再編は地区内のレオン・ジュホー通りへの「rues des enfants」の適用を皮切りに、メイン広場の再生などを段階的に進め、植栽や樹木の植樹によって居住環境を改善し、気候変動へのレジリエンスも高められた。

地区内の街路以外の幹線道路の道路空間再配分も行われている。ガリバルディ通りは8車線の大通りだったが、その2.6kmの区間は再配分が実施され、車道を3車線減らし、その空間を公共交通専用レーンや分離された自転車通行空間に転用された。歩道も拡張され、街路樹や植栽も増やされ歩きやすく自転車に乗りやすい通りに生まれ変わった。リヨン都市圏は250kmにもおよぶ高質な自転車ネットワークを構築することを目指しており、ガリバルディ通りはその一部に位置付けられている。

その他、交通事故の削減を目指してVision Zeroを採用し、市域全体の制限速度を最大30km/hに引き下げるなど交通安全にも力を入れている。

insight|知見

  • さまざまな地区の取り組みで「インクルーシブ」という言葉を見かける機会が増えてきたように思います。リヨンで興味深いのは生徒が計画作りやデザインなどの段階に参加していることです。子どもの考えが反映されることで、ユニークで面白い空間ができるのではないかと想像します。

  • フェミニストシティなどでも指摘されていましたが、どうしても今の都市は男性目線で計画やデザインされがちです。女性や子ども、マイノリティの方々と一緒に計画やデザインが作れると押し付けではないユニバーサルデザインになるのではないかと思います。