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ミュンヘンでは高層ビルの建築をめぐって論争が起きている

case|事例

ミュンヘン都心部は住宅不足などを背景に高さ制限を緩和し、超高層の建築を可能にしようとしているが、高層建築がアフォーダブルな住宅を供給とは限らず、またミュンヘンがこれまで守ってきたシンボリックな眺望を妨げるとして市民などからの反対が起きている。

ミュンヘン市の北側から都心部を見渡すとアルプスを背景にフラウエン教会がそびえる景色が広がっている。フラウエン教会は1524年に建設された約500年の歴史を持つ教会で、109mのふたつの塔はミュンヘンのシンボルとなっている。ミュンヘン市は、100mを超えるビルの建設を2004年から一時的に認めていないため、市内に現代的な高層ビルは存在しない。

しかし、ミュンヘン市は2023年6月に厳しい条件は付与されているものの高さの制限を撤廃した。現在、ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計した154mの複合再開発などが計画をされている。この計画は眺望を直接遮ることはないが、タワー建設の先例になると反対運動が起きている。反対派は眺望を遮るタワー建設が起きた場合のCGなどを作成し署名運動を行っている。また別の高層マンション建設では、高層マンションは一般に裕福な層をターゲットとした住宅供給となり必ずしもアフォーダブルな住宅が確保されるわけではないとの反対がある。

戦後、ミュンヘンは伝統的な建築様式と現代的な建築様式のバランスをとるミュンヘン・ラインという計画を進めてきた。高層建築を巡る規制の緩和は数十年ミュンヘン・ラインによって守ってきたシンボル的景観を覆す恐れがある。

insight|知見

  • J.ジェイコブスとR.モーゼスのNYCでの論争と近い構図の議論だと思います。資本か文化か、成長か保全かのような二元対立的な議論ではないと思いますが、大規模な開発でシンボル的な眺望や慣れ親しんだ景観、生活文化などが少なからず失われてしまいます。

  • 東京でも福岡でもそれは同様です。新たな開発が経済を刺激し、我々もワクワクを感じて熱狂しますが、一方で大事な文化や居場所が失われないのかという冷静な視点も持ってプロジェクトを眺めることが大切なように思います。