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都心居住の復活を目指すグラスゴー

case | 事例

スコットランドのグラスゴー市は、都心の3つの街路で描かれるZ字のエリアに1,350戸の新築・改築住宅を整備する「ゴールデンZ」計画を採択する予定である。この計画は、小売・ショッピングの優位性を失った都心を、今後12年で人口を倍増させる居住エリアにし、ナイトタイムエコノミーなどを活性化させることを目論んでいる。グラスゴーの都心部は他都市に比べて人口が少なく、現状の居住者数はわずか2万人に過ぎない。

1980年代、グラスゴーが重工業の衰退に苦しみ、新たな成長を模索した結果、この一帯は国内外から注目される小売エリアとして発展することになった。しかしながら、ECの台頭、パンデミックの影響により、グラスゴーは英国の他都市と比べても小売業への来訪者数の減少が顕著になっている(エジンバラが前年比+4.7%に対してグラスゴーは-7.2%)。その結果、都心の小売業の閉店や撤退、その後の空き店舗化と取り壊しが進められようとしている。

計画では、新規住宅約半数が既存建築の改装・再利用で、半数が新築とされ、多くは店舗の上層階を利用することとされている。居住人口を増やすために、学生用、世帯用、後期高齢者用など多様な入居期間や形式の住宅を混在させ、学校、診療所、公園などのコミュニティ施設の必要性柔軟なオフィス空間の必要性も強調されている。また、グラスゴー美術学校の再建に合わせて、アーティストの活動など文化や芸術が今後の都心で重要な要素として位置づけられており、空き店舗や改修前建築もアーティストの活動に充てる考えが示されている。


insight | 知見

  • 都心の活性化の議論では、公共空間の活用で賑わいを創出したり、スタートアップが活動しやすい空間を設けて新しいビジネスを興したりすることが最近テーマになっていますが、多様な人口の都心居住がナイトタイムエコノミーや都心コミュニティの活性化につながるということを改めて感じました。

  • 都心の建築物の低層階と上層階の用途の使い分けは、マーケットだけに任せずに政策的にも誘導することが重要だと思いました。