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NYCの公共交通のアクセシビリティ改善には混雑課金がカギ

case|事例

ニューヨーク州都市交通局(MTA)の公共交通システムのアクセシビリティを完全に解決するためには、NYC都心部における混雑課金(CBDTP)による財源確保が欠かせないと、ニューヨーク大学ルーディング交通センターの最新のレポートが指摘している。

同センターによるとNYCの障害者の13%が公共交通の移動の際に困難を伴っており、エレベーターやスロープなどが設置されたバリアフリーな地下鉄駅はわずか30%にとどまっている。2022年にMTAは障害者支援団体からの集団訴訟に和解し、2055年までに95%の地下鉄駅をバリアフリーにすることに合意している。

MTAはバリアフリーへの投資を加速しており、2020年以降毎年平均6駅を、2023年には8駅をバリアフリー化した。一方で、これまで財源不足により投資が滞っていたこともあり、この投資ペースを維持するためにはCBDTPで新たに期待される150億ドル(約2.2兆円)の財源がカギとなる。NYCの混雑課金は今夏に導入される予定で、60番街からマンハッタンに進入する全ての自動車に15ドル(約2,200)をベースに車種ごとに課金される。

同センターは、バリアフリー化と併せて、さらなるコスト抑制策の実施やインフラモニタリングの強化、投資の地理的な偏りの是正、新しい技術の活用も必要であると提言している。

insight|知見

  • 予定通りいけばですが、いよいよ夏くらいからNYCの混雑課金が始まりますね。マンハッタンの渋滞がどの程度緩和されるのか、街なかの景色がどのように変わるのか、要注目です。

  • 都市計画の観点からは、投資財源の確保としての混雑課金にも注目です。あらゆるインフラはその投資の財源をどこから得るのかということとセットで考えない行けないなと記事を読んで思いました。

  • 2008年度で廃止されましたが、かつて日本にも道路特定財源制度があり、それを原資に道路整備が行われていました。地方のインフラや公共交通、震災復興など、どのような受益者が想定されるのか、将来にわたってどのような便益をもたらすのか、誰が負担すべきかといった議論をもう少し長期的な視点で行うべきかなと思います。

  • 地球温暖化対策や社会的公平性のために、自動車への混雑課金で得た財源を公共交通の環境改善に充てるというのは、とても分かりやすいと思います。