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英国とアイルランドの河川は汚染によって絶望的な状態にある

case|事例

「River Trust」が公開した最新の河川環境の分析レポートで、英国とアイルランドの河川は環境汚染によって絶望的な状態にあることが示された。特にイングランドと北アイルランドの河川の状態はより深刻で、処理済みの下水や未処理の下水、農業排水、工業廃水などによる汚染によって健全な河川は1本もなく、2019年の前回調査からの改善もほぼない。一見、透明に見える水でも、マイクロプラスチックや工業用化学物質、炭化水素、肥料、殺虫剤、医薬品などを含んでいる。

イングランドの河川は、54%が化学検査と生態学検査の両方で基準を満たせていない。化学調査はすべての河川が基準値を下回っており、有害化学物質が安全基準を超えている状況にある。生態学的検査では85%の河川が基準を下回っている。汚染の原因を見ると、農業排水がイングランドの河川の62%に影響を及ぼしており、交通機関に由来する都市排水は、26%の河川に影響を及ぼしている。北アイルランドはイングランドと同じような傾向を示しており、健全な状態と言える河川は1本もない。一方で、スコットランドとアイルランドは相対的に良好な状態がまだ残っており、スコットランドの河川は57%が、アイルランドの河川は50%強が、健全な状態であった。

今回のレポートはEUが策定したWater Frame Directive(WFD)の2022年の調査を用いて分析を行っている。River Trustは、「健全な河川は気候変動の影響を緩和し、生物多様性を維持し、地域社会の健康と福祉を向上させるために重要」として、水質の改善を呼びかけているが、現在の英国政府は、BrexitによってEUの監視基準から外れることを示唆しており、水質改善が世界的に認知されているWFDに則って行われるか不透明な状況にある。

insight|知見

  • イングランドと北アイルランドの河川に健全な状態な河川はないというのは、かなり衝撃的な結果です。日本の河川状態を調べてみると指標は異なっていると思いますが、日本が定義する指標での水質環境は90%以上の河川で良好のようです。

  • 河川の環境改善には、下水の処理だけでなく、農業排水の処理やゴミ投棄への対処、生態系の維持などさまざまな対応が必要なのだろうと思いますし、流域単位で取り組むべきことですよね。