ラジオ「LL教室の試験に出ないJ-POP講座~特集:デュエット」放送後記座談会(6/20土25:00~O.A)


**▼今週の1曲

M-1 milet「Grab the air」
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森野:これは洋楽だよね。
ハシノ:ですね。アメリカ人のど真ん中のリスナーが聴いてそうな感じっていうか。
森野:どういう人なんだろう?
ハシノ:帰国子女…ではないけど英語が得意な人らしいです。先行シングルがぜんぶタイアップついてて、絶対売るぞっていう気合を感じます。
森野:曲も本人が書いてるの?
ハシノ:基本シンガーソングライターらしいですが、この曲はマンウィズが書いてます。
森野:なるほど〜、そう言われてよくわかった。曲のスケールが大きいよね。
矢野:ドームとかスタジアムでライブするところまで見据えてる感じですね。
森野:リスナー層はどういうところ狙ってるのかな?
ハシノ:20代のど真ん中じゃないですか。ディグったりはしないけど音楽好きですよって言うタイプ。
森野:好きな音楽=洋楽って言ってそうな人かな。
ハシノ:テラスハウスのエンディングとかでかかってそうな洋楽ですね。
森野:洋楽が好きって言っててもいろいろだよね。この番組でもテーマ「洋楽」ってやってみたいんだよね。
矢野:テイラー・スウィフトが好きって高校生が多いけど、そういうリスナー層と重なる気がします。
森野:フランク・オーシャンとか?
矢野:フランク・オーシャンはもうちょい尖っているイメージですけどね。
森野:不勉強で2010年代の洋楽の分布図がよくわかってないかも…。
矢野:2010年代の洋楽。高校生はほんとテイラー・スウィフトって言ってる印象があります。他には、エド・シーラン、アリアナ・グランデとか。コールドプレイもみんな好きかな。
森野:コールドプレイってバンドっていうくくりじゃなくて、洋楽っていうくくりっぽいよね。
矢野:もうちょいオルタナなイメージあったけど気づいたらど真ん中。逆にワンオクはそういう感じを狙っているのかな。
ハシノ:バンド形態を名乗ってるけどサウンドはバンドサウンドじゃないっていう。
矢野:バンドっていうのがすでにそういうものじゃなくなっていますよね。
森野:イギリスもバンドが全然いなくなってシンガーソングライターばっかりだよね。でもThe1975って今若い人にすごい人気あるよね。洋楽が好きな子たちがこぞって言ってる感じする。なんでいま日本でこんなに人気出てるんだろう、これをふまえて「洋楽」のテーマは近々やりたいね。我々の頃は洋楽と言ったらボン・ジョビかマイケル・ジャクソンってイメージだったけどな。
ハシノ:時代時代で日本人が「洋楽」っていうときの洋楽って移り変わってそうですね。

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▼今週のテーマ「デュエット」
M-2 小沢健二と満島ひかり「ラブリー、東京湾上屋形船Liveは雨」4:28
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森野:これはあれかな、ギターとカホンとか?
矢野:リズムは打ち込みですね。
ハシノ:これライブで歌ってるところみたけど、満島ひかりにもってかれましたね。
森野:AppleMusicの動画であったよね。
ハシノ:たぶんそのときの音源ですね。
矢野:小沢健二とか渋谷系とか言うと、なんとなくかまえてしまうところあるけど、いちデュエット曲として普通に消費したい。サラッと普通のスタンダードとして通り抜けたい感じです。30年近く前のただのいい曲ってことでじゅうぶんだと思います。
ハシノ:満島ひかりもっと歌えばいいのになってふつうに思いましたけどね。
矢野:モンドグロッソの曲もありましたね。
ハシノ:うんうん。もっといってほしい。紅白で大竹しのぶが「愛の讃歌」を歌ったみたいな場所にいけるんじゃないかと思ってる。

**M-3 モーモールルギャバン「Ca☆Na」

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矢野:初めて聴いたけどこんな感じなんですねー。
森野:基本ドラムボーカルのヤジマくんが歌ってるんだけど、アルバムに数曲キーボードのユコさんが歌っててデュエットみたいになってる。これはインディーズの最初のアルバムだけど、たたみかけるように交代に歌うところが好き。
矢野:うんうん。
森野:最初の「カルシウム〜」って5文字だけで生まれたみたいな曲なんだよね。3ピースっていう形態で新しいことをやってたと思う。当時はJ-POPテロリストって自称してたな。
ハシノ:編成とか歌詞とか普通じゃない感をビンビンに出しながら、でも曲がポップっていうね。
矢野:モーモールルギャバンって下ネタが多いと雑誌で読みました。
森野:バンドのアンセムみたいな「サイケな恋人」っていう曲でパンティー、パンティー言ってるね。
矢野:それがスヌーザーで酷評されてるのを見ました。
森野:あと、安田美沙子のことを歌ってる曲があって。そのちょっと前に、水中、それは苦しいが安めぐみの歌を歌ってて、一瞬バチバチしかけてたけど何もなかった(笑)。わりとそういうのもやっちゃう、露悪的っていうわけではないんだけど。他の曲はけっこうちゃんとしてるんだよ。モテない鬱屈とした感じとかを歌う感じなんだけど、サウンドはオシャレでね。
矢野:下ネタが多いというのを見て、ノれないなと思っていました。フレッシュなバンドがなんでそういうホモソーシャルなノリなんだろうって思いながら、当時そのスヌーザーを読んでいました。
森野:でも盛り上がり始めたら客は女性が多かったよ。パンティーは小学生のギャグみたいなもので、インパクトがあったから切り取られたんだろうと思ってるんだけどな。
矢野:そういう印象を勝手に抱いてしまっていたから、今回初めて聴いてみてちょっとイメージ変わりました。
森野:くるりとかキセルとか、京都のああいう系譜にある感じ。メロディーも抑えめなんだけど良くてね。
ハシノ:まさに。京都っぽいなと思います。
矢野:声がいいですね。
森野:これはアルバムの中の佳曲って感じ。ハシノくんのバンドと一緒に京都でやったよね。
ハシノ:やりました。都雅都雅だったかな?
森野:仲良くなろうと思って、何度も観に行ったりして7回ぐらい対バンしたのかな。そうこうしてるうちにどんどん売れてった。関西ゼロ世代とか言われてた頃だったけど、くくられそうでくくられなかったバンドだったな。

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M-4 BARBEE BOYS「離れろよ」
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ハシノ:BARBEE BOYSです!
矢野:BARBEE BOYSはどういう存在だったんですか。
森野:なんだろうね、あんまり他に居ない感じだったよね?
ハシノ:フォロワーらしいフォロワーが全然いない。
森野:強いて言うならバンドブーム的な…。
ハシノ:バンドブームの中ではアダルトなんですよね。客層も違ってて、ブームを支えた中高生はBARBEE BOYSは聴いてなかった。
森野:ボウイとのコントラストはあったよね。こっちは芸能の匂いがして、男女ボーカルだしテレビ映えするというか。
ハシノ:そういう意味でもいわゆるバンドブームの客層からは浮いてましたね。当時音楽的にもあまり評価されてなかった印象です。
森野:強いていうなら安全地帯みたいな感じ…?
矢野:その後に芸能界入りする的な?
森野:KONTAは実際にカッコ良いんだけど、かっこつけた役者をやってたんだよね。
ハシノ:トレンディドラマに出てた。
森野:あと深夜番組の司会とかもやってたな〜。
ハシノ:なんだかんだいって全盛期は東京ドームやってましたからね。
森野:Wikiを見ると天井桟敷に入り浸ってたらしい。1960年生まれだし、当時はそういうものなのかな、手段があればなんでもって感じで。ECDとかも同世代でそんな感じじゃない?
矢野:ECDも最初は演劇に行っていますよね。
ハシノ:BARBEE BOYSは中学生のときに好きで聴いてて一旦離れたんだけど、大人になってから観た映画『台風クラブ』で曲が使われてて、そっからずっと自分のなかで再評価が続いてる。
森野:あんまりこういうギター後継者が居ないよね。布袋の真似をする中高生はたくさんいたけど。
ハシノ:当時、布袋寅泰が自分以外に注目すべきギタリストはいまみちともたかだって言ったとか。
森野:日本のアンディー・サマーズとかジョニー・マーと言ってもいいんじゃないかね。
ハシノ:BARBEE BOYSって全曲男と女の騙し合いって感じで、このご時世からすると元気だなって思います。
森野:なんか演劇っぽかったよね、歌ってるの見ると笑っちゃってたな。

**M-5 入江陽、池田智子「鎌倉」4:52

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矢野:奇才・入江陽くん。ハシノさんが「デュエットは東京インディー系でありそう」って言っていて。アルバム『仕事』リリース時にインタビューしたとき、入江くんは「東京インディー」にくくられるのは嫌だって言ってましたけど、曲単位で招いてゲストみたいなフットワークの軽さは通じる気がします。30前後より下の世代。
森野:クロサワくんのバンドと近かったんだっけ?
矢野:4X4=16のミニアルバムにも入江くんがゲストで入ってたし、ヒップホップみたいなフィーチャリング感覚がバンド界にもありますよね。というか、4×4=16のカンノくんは「鎌倉」のMVに出ていたって!
森野:meiyoのバンドもそうだよね。行動力があるっていう
矢野:フットワークの軽さを感じますよね。
森野:動画も打ち込みもドラムもできるっていう
矢野:このあいだカンノくんにラップの吹き込みを頼んだのですが、発注してから録音・納品までがめっちゃ早かった! スマホのボイスメモでラフ録って、そのままレコーディングまで。
森野:昔はもっとウダウダ理屈こねて言ってた気がするんだけど、今はお金を出せばなんとかなる!て感じがあるよね。そういう意味では職人ぽいし比較的素直な人が多い。我々は世代的に斜に構えるってのもあったから。
矢野:面白いとちょっと思ったらやっちゃうしできちゃうんですよね。ぼくも世代もどっちかと言えば、ウダウダの後の世代だと思います。2000年代のメロコアもメンバーが流動的にやっていました。
森野:中田ヤスタカが出てきたときにうわっと思った。当時は機材やソフトの進化も重なったと思うんだけど、チマチマとピンポン録音とかやってたの考えると何十倍も違うなって。
矢野:ああ、わかります。社交性が高いというか後輩に優しい。クラブの先輩とかでもそのへんの世代から物分かりが良くなります。クリーンな感じ。まあ、「鎌倉」は新時代デュエット枠ということで。
森野:名義は?
矢野:入江陽、池田智子。クレジット的には並列。意識的かわからないけど、そのへんもおもしろい。

**M-6 ostooandell「君はまるでダンスしてるみたい」

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森野:あんまりデュエットっぽくないんだけど、男女ツインボーカルバンドでかけたかったやつ。
矢野:知らなかったけど良いですね!
森野:これはMy Spaceで見つけた沖縄のバンドで、やっぱり対バンしたくて連絡とったりしてたら曽我部さんが帯書いて2008年頃にリリースしたんだよね。インタビューとか読むと東京に沖縄から出てきて結成して、沖縄に帰ってドラムが入って活動してたらしい。すごくゆるいPVで沖縄的な脱力感があるんだけど、サウンドは違うでしょ。
矢野:沖縄感はあまりないですね。
森野:相対性理論と同じ頃、こういう感じは結構あった気がするな。
ハシノ:たしかに流行ってた感じする。
森野:そのあと曽我部さんのローズレコードから出してたんだけど、しばらく見ないと思ってたらボーカルの女性がソロでやってた。最近、男女ボーカルって多いけどあの感じは苦手なんだよね。なんかもっとヒリヒリしてるほうが好きだな。
矢野:男女ヴォーカルは仲よさげですよね。
森野:なんというか…バンド名は避けるけど、嘘っぽいというかドラマの中のバンドみたいに見えちゃう。
ハシノ:ベースが女の子ってバンド、スーパーカー以降けっこうあるじゃないすか。基本男ボーカルで要所要所に女の子の声が乗ってくるっていうズルい勝ちパターン。
森野:あ〜、そういうバンドやってた!(笑)
矢野:女性メンバーがいるから聴くっていう人もいました。ピクシーズとかソニック・ユースとか聴くのも女性がいるからだって。
森野:ヴァセリンズも! その辺りそういうの多いね。

**M-7 トニー谷 with 宮城まり子「さいざんす・マンボ」

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森野:これ、あれ?宮城まり子
矢野:追悼・宮城まり子ですね。
森野:ねむの木学園だ。
矢野:これは最初の1曲目でも良いくらいですね。すばらしすぎる!
ハシノ:これほんと最高。
矢野:サウンドが本当に良いです。
ハシノ:さっきの森野さんの話でいう男女の関係がヒリヒリ系じゃないですか、BARBEE BOYSもそうだけど。やっぱこっちの系譜がいい。
森野:系譜でいうとそういうプロダクトが出たことで先回りしてった感じなのかな。
ハシノ:何の世界でも最初の頃のほうが自由度が高いしなんでもありで。
森野:今はキチキチになってるよね。これはあの人とあの人は相性悪いとかそういう根回しとかなく組ませてる感じ。やっぱり昔のほうが全体的にずさんな感じがするね。
矢野:デュエットは企画ものが多かったですよね。「さいざんすマンボ」は典型的なコミックソング系。それがいまではある意味リベラルな感じで普通にやっている。
ハシノ:今回、70〜80年代のアイドルでデュエット曲を探してみたんですけど、全然なくて。疑似恋愛気分を味わいたいファンの心理として、実在の相手とのデュエットはご法度だったのかなって。あったとしてもすごい年が離れてるとか。でさらにいうと、アイドルだけじゃなくバンドもそういうファン心理があったせいでデュエットが少なかったんじゃないかって。それが最近薄れてきたのが、男女ボーカルバンドが増えてきた理由なんじゃないかとか。
森野:恋愛バラエティ、テラスハウス的な、そういう流れにありそうな気はするね。
矢野:ああ、おもしろい見方ですね。
森野:昔、YouTubeでGoose houseっていうのがあって、男女6人くらいでカバーとかやってるんだけど、やっぱり気持ち悪かったんだよね。なんか作られてるっぽさというか、ちょっとこれは見れないなと思っちゃって。
矢野:いまYouTubeで観てますけど、落合陽一の広告が毎回入るのはなんなんだろう。NewsPicks的な雰囲気と通じるのかしら。何かしらの現象ではある気がしますね。
森野:時代が変わってきたのかな、昔はL→Rとかユニコーンとか最初は女性がいたのに抜けていくパターンもあったよね。
ハシノ:ユニコーンの初期キーボードの人は女性ファンからかなり叩かれたらしいですしね。
矢野:へー、原坊は?
森野:原坊ならいいかってことなのかね(笑)。キャンパスバンドっていうことで許されたのかな、男女混合バンドはすごく気になるね。
矢野:ラジオで展開できるかわからないけど、ちょっと考えたいですね。
森野:メンバーと付き合ってるのかどうか?とかもあるでしょ。
矢野:そこの匂いをファンは嗅ぎ取りそうですね。男女混合バンドと言えば、セカオワもいましたね。シェアハウス。
森野:ライブハウスを作ったんだったね。
矢野:藤崎沙織の小説に書いてありましたね、そのへんの話は。
森野:男女混合バンドってもうみんな普通に受け入れてるよね。特に女性が二人いるとちょっと違和感もあったりして、どうしてもキャンパスバンドぽさを感じてしまう。
矢野:しかし、これはジェンダーギャップの問題にも通じますね。違和感を表明すること自体が古い感覚になるのかもしれません。
森野:確かにそうだよね。でもいまだに「ガールズバンド」ってタグは付けて売り出されてるよね。
矢野:少し前は「ギター女子」とか言っていましたね。いまは「〇〇女子」というネーミングは批判の対象です。
森野:チャットモンチーとかはそんな感じがなかったけどね。
矢野:チャットモンチーは「女性」とか関係なく普通に聴かれていた印象ですよね。一方、現在ではCHAIのようなバンドもいます。
森野:今、ガールズバンドといっても演奏の拙さみたいなのはないよね。それは時代が変わった気がするな。
矢野:サイレントサイレンは?
森野:あれはアイドルっぽいのかなあ、SCANDALとかもそうだったね。
ハシノ:SCANDALは完全にそうですよね、芸能スクールが楽器を持たせたグループ。
矢野:セバスチャンXも男女=2:2ですね。
森野:いろいろ考えると、これまで女性ボーカルの曲を熱心に聴いてきてないな…。
矢野:この番組でも森野さんの選曲は、男性ボーカルが多いかもしれないですね。
森野:あんまり言いにくいんだけどね、もちろん好きな女性ボーカルの曲もあるんだけど。
ハシノ:今の時代誤解しか生まないですね。
森野:そういうことじゃなくて単に好みなんだけど、やっぱり誤解されるよね。
矢野:僕らが男性3人で話していることも気になるところではあるんですよね。ホモソーシャルのノリを引きずっていしまっているのかもしれない。

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それでは、次回も土曜日の深夜1時です。市川うららFMでチャイム着席をお願いします!(以下のリンクからも聴けます。)

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