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#24 銀河の犬と水玉~曼珠沙華の伝言~


ジュビ子の使命と私の使命

 動物は飼い主の使命を果たす為にそのお手伝いをする使命を持って生まれてくる。
 今世での私の使命は、繰り返し魂に刻み込まれた無価値感、自分の存在意義の過小評価について、手放して終わらせる。
 今世で卒業すること。
 その為に、この病気になり、何の役にもたてない、生きてていいのか?という想いを味わう現実を作り上げた。
 そこで私は常に思っていた疑問を尋ねた。
 病気になるなら、もっとわかりやすい病気もあるのに、何でわざわざこんな医者も知らない難病なのか?と。
 三者面談なので、その場でジュビ子に聞いてくれた。
 もし、癌などの病気だとしたら、治療に専念してしまう。
 そこで治療に対する執着が生まれる。
 そうすると、今世で気づかなければならない大切な事に気づけなかった。

 今世で卒業する為には、治療法も無い、周りの理解もない、何も打つ手がないという『ドン底』を味わう必要があった。
 だからこの病気になる事を生まれる前に自分で決めて降りてきた。
 そしてそのどん底の時に、何も持たないあなたでも必要としている存在がいる、という事を知らせる為にジュビ子が支えになる為に生まれて来ている。

 ——健常者だと、それに気づくチャンスが無いんですって——

 確かに。私は病気になっても尚、まだ軽症の内は無茶をしていた。
 病気だろうとやってやる!そのような根性やポジティブさは更に遠回りをさせ、全てが打ち砕かれる様な壁が次から次へとやってきた。
 当然だ。「ドン底」を味わわなければならなかったのに、「まだまだあ!」と言ってる私には容赦なく次がやってきていたのだった。

 そして、私がこんな病で無ければもっと快適なケアが出来たかもしれないと言う後悔についても、「病気にならないなら、行く必要は無いから行ってません。ジュビ子は来なかった。」
 と言われて、ジュビ子に逢える為だったのなら、こんな病気でもいいよ。と心底思えたのだった。

 ——ジュビ子の使命は何だったの?——
 ……とにかくMiMiを見守る事。そばに居て寄り添うこと。必要としている存在が居ると言うことを示す為に忠誠を尽くした。
 「私にはMiMiが必要ですよ」と気づいて貰いたくてそこにいた。
 その任務にとても誇りを持って遂行していた。
 MiMiの生きがいになる事。MiMiの火種を絶やさず灯し続ける事。
 守るべき存在がいる事で生きられる。
 見守る。すなわち「介護する」って人間が言っている「お世話する事」じゃない。
 介護するって言うのはどんどん人間を弱くしていってる行為だ。
 本当の意味での見守ると言う事はその人にエネルギーを与える事。
 それってどうすればいいのかと言うと、傍に寄り添う事でその人に存在意義を与える。
 この使命は充分過ぎるほど果たせたと思っている。
 充実した犬生だった。満足している。……


 じゃあ、使命を無事に終えたから、もう今世では逢えないのね…そう思った矢先にSさんからその答えが飛び出した。

 ——またすぐ戻るよ!って言ってます。——

 え?使命は果たしたんですよね?

 使命は果たしたのに、なんで?今度はどんな使命があるの?

 ……MiMiは一度考え出すとはまってしまって抜け出すのに時間がかかる子だからね。
 MiMiにしては今回私(ジュビ子)と向き合って話せるようになったのは早い方だと思うよ。

 今度は生きる希望を持つ為にまた戻るよ。……

 私はジュビ子とどうにか繋がりたくてスピリチュアルやらオカルトやらに纏わる本を読み、動画を観まくった。

 その中で、犬や猫など、そばに居る動物の崇高な魂についても書かれている事が多く、がむしゃらに集めた情報の中から、自分にしっくりくる、腑に落ちるものだけを集めることで、いつもは膨大な時間を費やしている泥沼タイムを少しはショートカット出来たのだと思った。

 それもまた、ジュビ子のお陰なのだった。

 どの情報を選択するかで偽物を掴んでしまう事もあるだろう。
 でも私にはジュビ子というガイドがついていたので、ジュビ子に当てはまるもの、ジュビ子っぽいもの、を選んでいくと、そこにはジュビ子からのメッセージが散りばめられているかのように鮮明な答えが用意されていたのだった。

来世の予言

 Sさんも驚いて、2年後とかじゃなくて?と聞き直してくれたが、ジュビ子はこの冬に戻ると言っているらしかった。

 Sさんに見えるのは、
 ……私が厚手のコートを着て寒そうに歩いている。
 すると、白いゲージに囲まれた中に、茶色の男の子の幼犬が…仔犬じゃなくて何ヶ月か経ってる幼犬が私に向かって近寄ってきて柵の所に足をかけてる。

 ——ジュビ子ちゃんが、今度は男の子になって自分から近づいていくから、わかるように近づく。と言っています——と。

 ——どうして男の子なの?——と聞くと

 ジュビ子はどちらかと言うと、じっとタイミングを待ってる子だった。

 ——いつもMiMiさんを見守っていて、支度という事ではなくて、準備、MiMiさんの心と環境の準備ができるまでずっと待っててくれる一歩引いた距離感を保つ子だったと思うのですが、次は、MiMiさんが支える側、与える側になる使命があるので、男の子の方が甘え上手だから。だそうです。——

 え!そんな事までわかるなんて凄すぎる!

 そしてジュビ子さんのスペックが凄すぎる!
 大きなトラウマを終わらせるというだけでも大きなミッションなのに、今世のうちに、次のステップまで持っていく!と私の成長を信じてリードすると誓って、もう一度肉体を持って会いに来てくれるなんて。
 命を預けるのがこんなヘナチョコ飼い主だと知ってて、命懸けで会いに来てくれるなんて。
 そして、希望を持って生きる為に会えるなんて、今度は2人ともハッピーしかない最高な未来しかないってことじゃないか。
 なんて天国なんだ。
 ジュビ子がいるだけでいいのに、サイコーの天国が待ってるっていうのか。
 しかもこの冬って相当早いじゃないか。
 今までの私なら、まだまだ絶賛ペットロス中で一周忌なんて最大の悲しみイベントで殻に篭っていたと思う。
 ジュビ子の事を書き留めておこうと思ってから、正直、一周忌には曼珠沙華が咲いて、ノスタルジックな気分で未来を憂いた感じで終わるであろう物語を書く予定だった。
 そのストーリーはこんなにも変わってしまった。

 ジュビ子の言う通り、私にしては上出来の速さで成長しておる。

 ——MiMiさんの使命は?
 ……どんな小さな存在でも、その存在を必要としている存在があると言うことに気づく事。
 世間に認められなくてもいい。
 逆に認められない方がいい。
 だってね、今の世間は壊れているでしょう。
 今の世間はおかしいよね。
 そんな世間に認められたらそれで終わりだよ。
 でも多くの人は認めて貰おうとしている。その人達の多くは苦しんでいる。
 自分を生きる事だよ。
 たった一つの存在の為に生きる事だよ。
 全身全霊をかけて生きる事。
 そっちの方が何千倍も輝かしい人生になる。
 だから、多くの人の役に立とうとか、世間様の役に立とうとか、そういう事は一切考えなくていい。
 たった一つの存在として、MiMiの中の希望の光をともす存在として戻ってくる。
 今世ジュビ子に支えてもらう経験を経て、今度ジュビ子が戻ってくる時はそれを与える立場になって行く。
 一つ一つ前進しているんだよ。
 一つ一つの人生で一歩一歩前進している。……

注射を拒否した理由

 私はちゃんとジュビ子と向き合えてたようだった。
 ジュビ子には、私が注射を嫌がってる想いが伝わっていて、それももっと形を変えた「病気で大変なのに、自分を犠牲にしてジュビ子の世話をしている。注射を打たなきゃ」という風に伝わっていたとのこと。
 頭ではジュビ子の為に注射をしてくれているのはわかってるつもりなんだけど、(と、これはSさんがフォローして付け足してくれたように思う)犠牲になってるという感覚が伝わってきた。

 ——全ての薬は与える人の気持ちが乗らないといけない。
 薬に愛や気持ちが乗らないとその薬は効かないんだ。
 薬はただの毒。そこに想いが乗って初めて効果がある。
 「しなければならない」とか犠牲の想いに囚われたくなかった。
 そもそも私はMiMiを支える為に今世生きた。
 支えられなくなった自分が悲しくもあった。
 その苛立ちも表に出た。
 何も治療なんてしたくなかった。
 何故ならば、もうこの体になってしまったらMiMiを支える事は出来ないと思った。
 もう使命を果たせなくなった体に、毒は入れたくなかった。
 自然の状態で生きたかった。
 毒が体に入ると魂が肉体から離れにくくなるから。
 自分の意志で旅立ちをしたかった。
 だから拒否した、自分の意志で。——


 この時、Sさんが「何故か薬のことを毒だって何度も言うんですよ」と。
 それも私には合点がいった。
 私が線維筋痛症を併発した時、完全に強い薬を使った薬害だった。
 断薬したら治った事から「薬は毒」と私がいつも言っていた言葉だった。

 注射の事は本当に反省した。
 どんなに打つのが怖くても、そんな風にジュビ子に思わせてはいけなかった。
 ずっと家に入ってきてくれなかったのも、凶暴化して噛み付いたのも、悔しくて悲しくて肉体を脱ぐカウントダウンを一人で苛立ちながら感じていたからだった。

 それは私が想像する以上に、私を思ってくれての悔しさと悲しさだった。

 では、私が注射を打つのが辛いと思わずに、打てていたなら、薬が効いて命日は延びていたのですか?と聞いて貰ったが答えはNOだった。

 命日は何をしても変わることの無い9月27日と決まっていた。

今からして欲しい事

 して欲しかった事はある?と聞いてもらったが、ジュビ子らしく「無い!」と即答。
 ——それにもう過去の事だし。聞いても実現出来ないでしょう?

 じゃあ、今からして欲しい事は?

 ——もうね、顔を上げて前を向いて欲しい。
 私が見守っていること、エネルギーを注ぎ込んでいる事を認識して欲しい。
 私からのメッセージを受け取って欲しい。
 行動を起こせばMiMiの中に私のメッセージは浮かんでくる。——


 それは私が美化した勘違いなのかも?と疑ったものが、全部、ちゃんと本当にメッセージだったこと。
 受け取っていること、繋がっていることを教えてくれた。
 ちゃんと答え合わせをして良かった。
 自分だけで完結しないで良かった。
 メッセージを無かったことにしなくて良かった。

 「行動を起こせば」……そうだね。
 ジュビ子を見送ってからひたすら体を休めて安静にしていたから、安定はしてきた。
 けれども、全く動かなくなった体は筋肉は崩れて体力も更になくなり、たった5分の散歩さえ行かなくなった体は更に弱っていき、コロナ禍も手伝って県外の治療も途絶えた事で全く外出しなくなり、時が止まったような一年だった。

 もう一度ジュビ子に会える。
 ジュビ子が戻ってきてくれる。
 それに備えて準備を始めよう。
 ワクワクしかない希望の始まりに向けて。


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