モノローグ

ひと月半。なんて刺激的。なんて魅惑的。
家の事情だと嘘をついて、ここを離れる。
綺麗に化粧じた女の子たち。酔った男たち。
教室で見るあの子たちは知らない世界。これこそが世間。

送りの車から降りて、少し歩く。爪先の鈍痛が煩わしくなって、ハイヒールを脱ぐ。ストッキング越しに、歩道のつめたさを感じる。
深夜1時半、眠るベッドタウン。もうすぐさよならをする、ベッドタウン。良い子の町を、はだしで歩く。道端のベンチで、そっとたばこに火をつける。すぅ、はぁ。そろそろ満月だ。

あそこは、私なぞが居ていい場所ではない。彼女たちからわざわざ居場所を分けてもらうだなんて烏滸がましい。ハイヒールを難なく履きこなし、街じゅうを、薄暗いカウンターの向こう側を、闊歩する彼女たち。笑顔を絶やさず、話上手で、どこまでも素直。彼女たちはこれから、どこへ行くんだろう。
狡猾な嘘つきは、良い子の町へさえも帰ることが出来ない。

どうか、おしあわせに。

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