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能登町で自分のワクワクを探究するフィールドワーク。本気と本音がぶつかる2日間

能登町では、「3か月で地域に仕事をつくる超実践型ビジネススクール」と題して、オンラインとオフラインの両方を駆使しながら2021年8月26日(木)~12月11日(土)の期間、「能登ローカルシフトアカデミー 」を開催。累計約120名が参加した7月~8月の3回のプレ講座からスタートし、定員を上回る申込みがあり、選考を経て最終的に21名の受講生と共に講座を開講しました。

これまで、第一線で活躍する起業家や能登町の事業者の方々を講師として招聘し、地域ビジネス創出に必要な起業家精神やリーダーシップ、ビジネス戦略などを学んできた受講生。9月に予定していたフィールドワークでしたが、コロナ禍で能登町訪問を実現できずにいました。

しかし、先日11月27日~28日に念願かなって能登町を訪問!能登町役場の方々にご案内いただきながら、事業者の方々とのコミュニケーション、そして能登を五感で感じるフィールドワークを堪能してきました。自身のワクワクと地域資源を掛け合わせた事業創出にどう向き合い、どう取り組んできたのか2日間の模様をお届けします。

🏫「能登ローカルシフトアカデミー」詳細はこちら

能登には数字を越える何かがある
「どうせ無理」を、「きっとできる」に

あいにくの天候により飛行機が大幅に遅れ、能登町に着いたのは午後の15時。10時スタート予定が初めからハプニングの連続でしたが、それだけに焦らされに焦らされた受講生の顔は期待に満ち溢れていました。


フィールドワークのスタートは能登町内に新しくオープンした活動交流拠点NOTO CROSS PORT。山を越えて町に辿りついたと思ったら、急にガラス張りの開放的な2階建ての建物がお目見え。内装はコンクリート打ちっぱなしのモダンな雰囲気に、温もり感じる照明で非常に解放感のある空間。

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この半地下にある広場に集まり、主催者でもある能登町ふるさと振興課長田代信夫さん、能登町役場灰谷貴光さん、山本秀明さん、能登町定住促進協議会移住コーディネーター森進之介さんからご挨拶。

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続いて灰谷さんからは能登町へ掛ける想いをお話いただきました。
灰谷さん「改めまして、ようこそ能登町へ!皆さん、まずはこの数字はご存知でしょうか?」

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スライドに写されたのは「7259」という数字。
灰谷さん「 これはずっと僕が向き合っている数字で、25年後には能登町の人口は7,259人になると言われています。1950年代には能登町には40,000人近くいました。人口に限らず、気付いたときにはどんどんスーパーや学校、銀行がなくなっていく様子を想像してみてください」


飛行機の疲れも忘れて受講生は一気に話しに引き込まれます。灰谷さん曰く、地域の方からよく出てくる言葉は、

『なんもないわんね』

自分たちの町には何もない、という言葉。そしてそれが唱えられることで自分たちの住む町にワクワクしない状況が続くと、悪魔の言葉がささやくと言います。

『どうせ無理』

灰谷さん「能登町で何かを始めるという時にはここと向き合う必要があります。しかし、私が地域戦略推進室が出来て配属された2015年、大学生たちと1カ月ほど一緒に活動する機会がありました。最初のきっかけをくれたこの4人から、私は大切なことを得ることができました」


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ゆーすけ、みさき、かな、たっちゃんという4名のある大学生との出会いが「どうせ無理」を変えてくれたと言います。

それまで別の土地から来て、「こうしたら?あーしたら?」と提案する人は多くいたけれど、一緒にやろうと動く人はなかなかいなかったと話す灰谷さん。彼らは提案に留まらず、「やろう!」と自ら動き出してクラウドファンディングまで成功させて、消えそうだった郷土料理の商品化や日本で初めていかに合うお酒づくりにつなげていきます。

灰谷さん「これって、こういうことできますよね、という提案で終わってたら実現できなかったと思うんですよ。そうではなくて、一緒にやりましょう!だったから出来た。これって凄く大事なことだと思うんですよね」


「どうせ無理」が「きっとできる」になる瞬間を目にしたとき、灰谷さんが感じたのは"ウェルビーイング”だったと言います。


灰谷さん「今回のローカルシフトアカデミーもたまたまご縁で、出会ってしまったんですよこの人に(笑)」

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灰谷さんが出会ってしまったと話すのが、この能登ローカルシフトアカデミーの全体統括とコーディネートを担う一般社団法人こゆ地域教育研究所の稲田佑太朗さん。今度は学生ではなく社会人の方と同じ様な新規事業の創出ができないか、と灰谷さんが考えていた時にANAが主催する旅と学びの協議会で稲田さんと出会ったと言います。


稲田さんはすでに関東や九州で地域での事業創出を後押しするローカルシフトアカデミーを運営しており、自身の知見や経験を活かしてこのプログラムを横展開したいと考えていたこともあり、両者意気投合して本講座開講に至った経緯を灰谷さんは「起こるべくして起こった」熱を込めてと語ります。


灰谷さん「色々なご縁からスタートしたこの能登ローカルシフトアカデミーだからこそ、この2日間の中で何かを見つけて帰って欲しいと思います。『どうせ無理』を『きっとできる』に変えましょう、2日間宜しくお願い致します」

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イカを被りながらも受講生の心をがっちりと掴んだ灰谷さんのオープニングトークの後は、いよいよ能登町事業者の方々との交流の時間です。12名が3つのチームに分かれて、3事業者の方々から直接課題をヒアリングし、その場で議論をしながら提案をしていく20分×3本勝負がスタートしました。



少しずつほこりを取り払うように
課題を掘り出す繊細な作業

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1人目の事業者さんは、春蘭の里の多田真由美さん。能登空港から車で15分の場所に位置する春蘭の里は、47軒の農家民宿が立ち並ぶ民宿群で修学旅行先としても大人気のスポット。

国内外から年間1万3000人あまりの人が訪れ、地域の誘客成功例として注目を浴びています。故郷を感じられる農家を改築した囲炉裏つきの民宿やロッジ、貸別荘に貸し切りで宿泊し、山菜・キノコ採りや農作業など都会ではできない体験をしながら、輪島塗のお椀に盛り付けられた旬の土地のモノをいただくことができます。

多田真由美さんはこの春蘭の里を立ち上げた父喜一郎さんから、運営法人の理事を3年前に引継ぎ、24歳にして民宿群を切り盛り。スローガンに掲げている「1軒の宿で売り上げ40万。若い人たちが帰ってきて赤ん坊の声が聞こえる地域づくり」を目指していると語る真由美さんですが、その若さに受講生が慄く場面も。


真由美さん「春蘭の里の立ち上げ当時はまだ生まれてないですね」
受講生「生まれてない?!!!(笑)」

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年上の受講生に囲まれて初めは緊張感を隠せない様子でしたが、回数を重ねるにつれて徐々に緊張がほどけていきました。受講生からは農家さんの方がどんなところにやりがいを感じているのか、広報についてなどが質問されました。


真由美さん「修学旅行生が来ると第2の孫が出来たみたいな感じになるので、お客さんとのコミュニケーションを楽しみに、やりがいにしてくれてます」

春蘭の里として特に広報はしていないというから驚きです。修学旅行は旅行会社経由で成り立っており、コロナ禍でお客さんは減ったものの、ちょうど引継ぎタイミングでバタバタしていたので良かったのかもと笑顔で話す真由美さん。


真由美さん「例えば沖縄はコロナ感染が怖いけど、田舎なら大丈夫だよね、と流れて来ているパターンもあるんだと思います。また、農家さんも本業があるので民宿にお客さんが来なくても困らない人が大半なんです。春蘭の里としては困りますけど(笑)」

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続いて2人目の事業者さんは、川畑農園の川畑慎太郎さん。川畑さんは能登にUターンし、現在は農業を生業として米や野菜を栽培。

農家民宿群・春蘭の里青年部部長として学生たちと地域を盛り上げています。40歳を目前にして本格的に農業をスタートしており、農作物を育てる技術や生産性の向上などが課題になっていると話します。


川畑さん「実は奥さんにもそこは指摘されていて…データの管理の必要性は以前から感じていたものの、改めて今日皆さん指摘されてデジタル化の必要性を強く感じました。本や動画で自分なりに学んではいるものの分からないことも多いので、ここで得たヒントを元に取り組んでみたいと思います」

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1巡目ではお互いに遠慮している姿勢が見えていたこのセッションも、2巡目3巡目と進むにつれて事業者の方も参加者の方も前のめりに。次第に場の熱量が上がっていきます。

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3人目の事業者さんはふくべ鍛冶の干場 健太朗さん。地域によって形や用途の異なる道具の開発や製造、メンテナンスなどを総合的に行う「野鍛冶」を生業とし、ネット版鍛冶屋の窓口である包丁砥ぎ宅配サービス「ポチスパ」のリリースなど時代ニーズに合わせた新サービスの開発にも積極的に取り組んでいます。

干場さん「鍛冶職人が足りない、イコール人手を確保すれば解決するという問題でもないんです。昔ながらの見て覚えろタイプの職人さんが多いので育成の見える化が難しく、だからと言ってその間に毎回私が入ると他が止まってしまうんです。包丁砥ぎで3か月、作るとなると1年の修行は必要なので仮に半年で辞めるとなると大損害なんです。職人としてひとり立ち出来れば1から10まで自分で出来て、金額も自分で決められるんですけど」


根っこの部分に課題があって…と赤裸々に語って下さる干場さんでしたが、受講生から出てきた言葉にハッとする場面も。


受講生「フランチャイズみたいに創業支援ができそうですね。職人さんを雇うのではなく1人1人を個人事業主として育てて市場拡大を狙う。ふくべ鍛冶ホールディングスみたいな(笑)」
干場さん「あー!え、それすごくいいですね!」

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思わず笑みが溢れてメモを取る干場さん。伝統を次の時代に繋げたい想いはあっても地域に1軒だけとなると産業化していると見られなくて行政サポートを受けにくいという現実も。それすらも唯一の〇〇と強みにしてブランディングすることでPRできるのでは? と盛り上がり、最後は「あーもっと喋りたい―」と後ろ髪惹かれる想いでセッションが終了。


セッション後のチェックアウトでは、受講生から「仮に1人で課題解決しますよ、とのこのこ地域に来ても意見を聞いてもらえないと思いますが、初対面にも関わらず受け止めて貰えて嬉しかった。むしろ学ばせていただいているという感覚でした」と、この場、そして事業者の方々への感謝の意を言葉にする方も。一方で、「思っていた以上に現実は難しいとその厳しさをひしひしと感じた」という感想も。


受講生「何か課題有りますか?って聞いても出てこない。課題解決ってハンマーでいきなり壊す作業ではなく、少しづつほこりを取り払っていく感じなんだと思いました。繊細な作業を学ばせてもらいました」


多田さん、川畑さん、干場さんからも「今日は色々な人から刺激を貰えて良かった。能登に居るだけでは出てこない提案を貰えて全てメモしていました。今日いただいたこと(提案)は行動します!そしてフィードバックすることが恩返しだと思っています!」と力強い言葉をいただき初日のワークショップを終えました。



囲炉裏の周りに広がる笑顔
身も心もほぐれる郷土料理と温泉のおもてなし

地元を知るにはスーパーを見るのが一番ということで、ワークショップ終了後はそのまま地元のスーパーどんたくへお酒やおつまみを買い出しに行き、宿泊地へ移動。スーパーでは冒頭で灰谷さんから紹介のあった「いかの日本酒」をしっかり購入。

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宿としてお世話になったのは黒川温泉セミナーハウス山びこさん。里山の中にあり周囲には田園風景が広がります。

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待望の夕食は囲炉裏を囲んでの炉端焼き!会場に入るとその光景に受講生から思わず「おーーーーー!」と歓声が!

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早速囲炉裏を囲み、奥能登で獲れたこぶしサイズの椎茸、ジビエの焼肉、子持ち鮎の塩焼き、お刺身、ゼンマイ、サザエのつぼ焼き、湯で牡蠣で豪華な食事が続き、お酒も進みます。お酒は灰谷さんおすすめのイカの日本酒、能登の日本酒、梅酒、ワインなど。

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締めには手打ちそばが振舞われ、山びこの皆さんの歓待を受けて身も心も満たされる受講生。今日1日を振返りながら黒川温泉を楽しめるお風呂で身体を温め、2日目のフィールドワークに備えます。

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九十九湾沿いの散策からスタートした
フィールドワーク2日目

フィールドワーク2日目は7時に朝食をいただき8時に宿を出発。昨日のフィールドワークの様子が早くも地元新聞に掲載されており、宿を出ながら皆で新聞を覗き込む姿も。

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最初はのと海洋ふれあいセンターへ。九十九湾沿いにあり海に親しみ、海を知ることができる施設で、ここでは施設内の資料を見たり遊歩道を散歩したりと思い思いに時間を過ごしていきます。


稲田さん「自由に散歩をしながら自己解放して、自分が本当に何をやりたいのか内省する時間にしてください」

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ふれあいセンターでは館員の方に案内いただきながら展示を見学。九十九湾の海中林に魅せられてリピーターになるダイバーさんも少ないことや、温暖化による海の変化についても教えていただきながら自分のペースで展示を鑑賞していきます。

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受講生「寝てる寝てる」
途中、さわってみようのコーナーでは九十九湾の生き物たちに触れる場面も。目の前には大きなガラス越しに九十九湾を大パノラマで望むことも。

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センターを出て坂を下っていくと、そこには一面に九十九湾が広がります。右に進むと九十九湾探勝歩道があり、飛び石を辿って九十九湾沿いの散策が可能に。海の透明度の高さについ引き込まれます。

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途中、波が高く足にかかる水の冷たさに「やべー!!!」と叫びながらも楽しそうな受講生たち。この日は不思議と海の潮の香りもなく(あとで聞いた話では珍しく風向きがよかったとのこと)、陽の光を反射して揺れる水面に白鷺の姿もあり、さながらファンタジーの世界に迷い込んだような景色を堪能することができました。

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たっぷりと九十九湾を堪能した一行は噂のイカの駅つくモールへ。特産品である船凍イカや、日本百景にも選ばれている九十九湾を中心とした能登町の新しい情報発信の拠点として2020年6月にオープンしたばかりの施設ですが、この日も観光客の方の姿が。皆さんが写真を撮っている注目のスポットは、何と言っても全長13メートル、全幅9メートル、高さ4メートル、重さ約5トンのイカキング!!

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九十九湾に並ぶ漁船、山々、青い空を背景に巨大イカが横になる姿はまさに圧巻。ここではもちろん集合写真もパシャリ(※撮影時のみマスクを外しています)。

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みんなでイカポーズ!まさかのイカキングの口にも入れるということで、口に入ったりまたがったり(※場所によっては登れない場所もあるのでご注意ください)。

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小木漁港と言えば全国でも有名なイカの三大漁港の1つで、ここで水揚げされるイカはそのまま船の上で冷凍されるため「船凍イカ」と呼ばれています。

新鮮な状態ですぐに冷凍される新鮮な小木イカを楽しめるイカの駅つくモールでは、受講生はイカ墨のソフトクリームを食べたり、お土産を購入したりとまさにイカづくし。開放的な店内の雰囲気も相まって、筆者もついつい財布のひもが緩くなります。

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イカを満喫した後は、昨日もお世話になったふくべ鍛冶へ。

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なんと、ここでは包丁を購入した受講生に、干場さん自らが仕上げの砥ぎをしてくれました。

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干場さんとはオンライン講座、そしてフィールドワーク初日でのトークセッションと何度かお話を伺っていましたが、やっとその現場を訪れることができ受講生の感動もひとしおでした。

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職人技にふれた後は、場所を農家民宿群春蘭の里へ移し午後のワークショップに備えます。春蘭の里内には、廃校を活用した交流宿泊施設「こぶし」があり、1日目にもお世話になった理事長多田真由美さん、そして春蘭の里を立ち上げた真由美さんの父多田喜一郎さんにもお会いすることが出来ました。



1人でも残れば限界集落じゃない
行政が応援したくなる地域づくりを視察

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開口一番、「きのこ採りに行く? 案内するよ!」 と飛び切りの笑顔で迎えてくださった喜一郎さん。その後、受講生がワークショップに取り組んでいる間に自生するなめこを採取してお土産にと振舞ってくださいました。

野生のなめこの大きさに思わず「これがなめこ?!」と驚きながら有難く頂くことに。

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喜一郎さん「私たちが目指すのは、若いモノが帰ってきて赤ん坊の声が聞こえる地域づくり、1軒月収40万。行政に頼らない、でも行政が応援したくなる地域づくりが大切だと思っています」


1人でも残ったら限界集落じゃない、存続集落だ!ということで「いいやろー?」と笑顔で去っていく後ろ姿までパワフルだった喜一郎さんからのウェルカムスピーチの後は、お待ちかねの昼食タイム!ここでしか食べられない特性スパイスカレーをいただきます。

作ってくださるのは、地域おこし協力隊として仙台から着任し春蘭の里の運営も任せられているという尾形弘輔さん。現在は春蘭の里の敷地内でBARズック、テントサウナ、お米作り、地域の方々のお手伝いなどをしているとのこと。

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緒方さん「3年前に秋田から彼女も来てくれて一緒に活動しています。かつてインターンシップで春蘭の里に来たご縁もあって能登に飛び込みました。BARには地元のおじいちゃん、移住者の方、インスタを見たと言って金沢の方から来てくれるかたもいます」


BARというと夜の営業のイメージですが、山に囲まれて街灯もほとんどないここでは17時になるとあたりは真っ暗。さほど人が来ないことが分かったので今は13時から営業。お菓子を会に来たりコーヒーを飲みに来る人もいるとのこと。この後、実際にお店BARズックにもお邪魔しました。

入り口上部にはマットをネオンで彩った飾り店内にはアルミボウルで光を反射するミラーボール、天井にはレコード…と全て手作りだという店舗は大人のおもちゃ箱の様で、尾形さんのワクワクが詰まった拠点でした。

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尾形さん「ここは知らない車が走っているとすぐに分かるぐらい関係が密ですね。たまに自分の知らないところで話が進んでいることもあるんですが(笑)都会と田舎のどっちがいいではなく、合うかどうかは人それぞれだと思います。ただ何しているかが分からないが一番怖いのでどんどん出ていくことは大事だと思いますね」

そんな尾形さんがこの地で採れたきのこと、自ら今年初めて育てたというお米で特製スパイスカレーを振舞ってくださるとのことで、ご準備いただいている間に春蘭の里の民宿を見学に行くことに。

山道を進むと左右にぽつぽつと民宿が見えてきます。稼働しているものもあれば修復が必要で稼働していない民宿も。真由美さんの案内で、稼働している民宿のうち1軒をご案内いただきました。

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入り口を入ると囲炉裏が出迎えてくれ、胸の高さまである土間を越えると台所とリビングがあります。1階は懐かしい田舎の民家という印象でしたが、2階は畳のお部屋に巨大なプロジェクタースクリーンが迎えてくれ、2台のハンモックもありモダンな印象です。

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高い天井には立派な梁が見え、時代を感じつつも開放的で温もりのあるデザインになっていました。受講生からは、夏はエアコンいらず? 冬は薪もいける?など興味津々に真由美さんへの質問が多数。

民宿の数が多い分、なかなか手入れが行き届かないのが現状と課題を抱えつつも、予想以上の空間、その分に気に終始受講生がワクワクしている様子が伝わってきました。

こぶしに戻ると、いよいよ尾形さんらが作ってくださったカレーで昼食タイム。ここでも交流を楽しみながら…でしたが、お腹が空いている受講生は話すよりも食べる方に夢中の様子でした。

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昼食後は土地の恵みに感謝しながら、いよいよ後半戦のワークショップがスタートです。



自身のワクワクと地域課題を掛け算
提案ではなく自らやりたいことを探求する

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事業創出は有機的な社会との関わり、と定義してまずは自身のワクワクを棚卸していきます。


稲田さん「ここで大切なのは他人と比べてジャッジせずに、思い浮かんだものを素直に書き出すことです。自分の人生を振り返って、好きだな、やっていて面白いな、と感じているものを20個書き出してください」


制限時間3分に対して時間が足りなくなるぐらいペンを走らせる受講生。その後は森岡毅さんによる「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」も参考に紹介しながら、2人1組になって相手が書き出した名詞を動詞にするワークに挑戦します。


例えば、ペアになったパートナーが「サッカーが好き」と書いていたら、「なぜ?」と聞いて「サッカー観戦が好き」なのか「サッカーをすることが好き」なのか、と深堀していきます。ここではお互いが聴くに徹して相手の鏡になることで、新しい視点や発見を促します。

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続いて、チームごとにこの2日間で気付いた能登の課題を沢山書き出すワークへ。制限時間内に一番課題を多く書き出せたチームは、次に行くマルガジェラートでのサイズアップ権利を獲得できるとあり、皆さん口数も少なく手を動かす速さが凄い(笑)

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稲田さん「では、いま書き出した能登町の課題を魅力に変えていきます。ネガティブをポジティブに変えてそこにどんな価値(WHAT)があるのかを考えてください」


価値とは、金額ではなくその人の欲求により変化するといいます。求めているものであれば例え100円でも高い価値を感じる、というのは日常生活でもありますよね。


稲田さん「文脈を変えることで中身の価値を操作することもできます。能登町の額縁を変える、もしくは能登町に来る人の眼鏡を変えて、ネガティブな課題をポジティブに変換することができます」

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早速、チームごとにワークを進めていきます。


・空き家が多い → 空き家を必要としている人に家を提供できる
・バリアフリーじゃない → 足腰が強くなる
・若者が少ない → 若者というだけでモテる、重宝される

ここで出たものをヒントに、最後は1つ選んで個人ごとに事業計画をざっくりとまとめていきます。ここでも三者三様に面白い提案が発表されました。

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・何もない=静寂であることをいかして、静かな環境で仕事したい人にぴったりなのでそれを求めている人に場を提供する
・豊かな自然のある里山を活用してリアルなワイルドパークを作る
・現役社長と次世代リーダーをを繋いで育成できるネットワークをつくる


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まだ受講生の事業計画は輪郭だけでしたが、ようやく実現した能登町訪問の経験がどのように結実して12月11日(土)の最終発表の場で披露されるのか、非常に楽しみです。受講生による最終発表は公開イベントですので、ぜひご興味のある方はお越しください。


フィールドワークでの最後のワークショップを終えた一行は、能登町最後の訪問先として「世界一のジェラテリア」の称号を得たマルガジェラートへ向かいます。

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マルガジェラートはイタリア政府公認連盟FIPGCから「世界一のジェラテリア」と認められたジェラート屋さん!大変失礼ながら「こんな田んぼの中に世界一があるなんて!!」と筆者も受講生の言葉に共感してしまうほど周囲には田園風景が広がります。

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フレーバーは毎月変わるらしく、この時もプレミアムミルク、いちご、青りんごと定番商品から、能登の塩、加賀棒ほうじ茶、ころ柿…と12種類のフレーバーが。迷いに迷って、ここは大会受賞フレーバーと書かれていたグランピスタチオを選択する人が続出。

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嬉しいことに、注文すると1口別のフレーバーをおまけで付けてくださる優柔不断な人間が歓喜するサービス!全員、2種類のフレーバーが楽しめるダブルとおまけ1口、合計3フレーバーを堪能できることに。

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気温は10度を下回っていましたが、山際から漏れてくる西日を感じながら田んぼをバックに食べるジェラートは絶品でお持ち帰りで購入するメンバーも。

田舎だからなんて言い訳ができなくなる本物の味と、そして団体で押しかけたにも関わらず見事な手際でジェラートを提供してくださったマルガジェラートのホスピタリティに感服です。

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ここで、能登町を堪能した一行の旅もいよいよ終わりを迎えます。最後は能登町の澄んだ空気を感じながら田んぼの真ん中でチェックアウト!皆、口々に時間が足りない!またゆっくり来たいと後ろ髪を引かれるながら終わりを迎えました。

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「実際に能登に来るとやっぱり(感じるものが)違うし、可能性が十分にあると思いました」
「こういう機会じゃないと行けないところに行くことが出来て、1人では考えられないことを考えられて良かった」
「引き続き行き来しながら能登町とのお付き合いをしていきたい」

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フィールドワークを終えた受講生は、今回感じたことをヒントにいよいよ12月11日の最終発表の場で事業計画をプレゼンテーションします。東京開催でオープンなイベントですのでぜひご興味のある方は足を運んで、受講生の皆さんがスタートを切る雄姿をご覧ください。



【最終発表概要】
日 時:2021年12月11日(土)14:00~18:00
内 容:トークセッション+ビジネスプラン発表
参加費:無料
定 員:50名
会 場:羽田イノベーションシティ(PiO PARK)
ゲスト&審査員:堀口正裕(TURNSプロデューサー)、吉弘拓生(一般財団法人地域活性化センター 新事業企画室長)、瀬崎真広(NPO法人ZESDA理事)

有機的な社会の関わり方の1つとして事業創出という手段で課題解決に取り組もうとする、能登町ローカルシフトアカデミーの皆さん。ここからどんなチャレンジが生まれていくのか楽しみです。

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12月11日(土)14時から、新規事業創出の瞬間を見逃したくない方はぜひ羽田イノベーションセンターへ。そして、稲田さんもすっかり惚れた能登町へもぜひ足をお運びください!お待ちしています。


Photo by Yuta Nakayama
Written by Saki Ariga


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