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キーワードは「JC(青年会議所)」〜連載「なぜ地方で自民党が強いのか」②

 連載と銘打ってこのタイトルで①を書いたのは昨年7月でした。つい最近までnoteから離れていました。

 続きを書いてみます。

 前回、地方の社会構造を四つにカテゴライズしました。以下の通りです(再掲に当たり表記などを整えました)。

①伝統的金持ちファミリー
 →地方で長く続いている事業家、資産家、開業医、代議士ら
②新興勢力
 →地方(Uターンした故郷)で事業を始めた起業家ら
③勤め人
 →市町村役場の職員や団体職員、一定程度の規模の民間企業に勤務する社員ら
④労働者・零細個人事業主
 →「伝統的金持ちファミリー」や「新興勢力」に昔から雇用や取引関係でお世話になっているグループ

 もちろん、イナカに地域社会を構成する人々をこんなざっくり分けるには乱暴ですが、この四分類はイナカの政治的土壌をみていく上で有効だと考え、あえて提示してみました。

 ①は「地域の支配者層」とも言えるグループで、世襲で何世代も政治家を出しているファミリーもありますが、多くのファミリーは「金銭的に政治家の面倒をみている」側であり、立場上は保守政治家より上か対等といった意識を持っているように見受けられます。

 余談ですが、①に属する「伝統的金持ち家族」の子どもにも、それなりの苦労はあるようです。

 先代(多くは自分の父親)の仲間への礼を失してはいけませんし、先代を嫌っていて自分に当たってくるパワハラオッサンにも愛想笑いを絶やしてはいけません。
 引き継いだ事業が失敗しようものなら、一気に「④=使われる側」に「転落」してしまいます。

 そんな「地域の支配者層」であるファミリーの家業を引き継ぐ子どもたちが集まり、地域で仕事をしていく上で不可欠なコネ(人間関係)をさらに強固にしていくための組織があります。青年会議所(JC)です。

 JCって、生まれも育ちも大都市圏だという方々には馴染みが薄いかもしれませんが、それほど大きくなくそれほど小さくない地方都市では、結構目立つ組織なんです。

 JCにいられるのは40歳までですので、それ以降は地元の商工会議所に「コネ作りの舞台」は移ります。
 そして、歳を重ねて商工会議所の幹部になり、後継者となる自分の子どもに資金とコネをフルに使って帝王学を学ばせ、JCに送り込むーというパターンが多いようです。

 四分類の話に戻ります。閉塞的な地方社会において、一番活気に溢れているのは、②に属する人々です。

 順調に力をつけていけば「①=地域の支配者層」に仲間入りできる可能性があるわけで、自らの成功のためには①のグループとうまく付き合う必要があります。

 そんな①と②による社交場がJC(40歳を過ぎたら商工会議所)なわけです。

 そして、JCと商工会議所(=商工政治連盟)は、自民党の有力な支援団体です。
 商工業だけでなく、建設業協会や農協、医師会といった業界団体も自民党支持が基軸であり、これらの団体も商工会議所に負けないぐらいの影響力を地方社会で持っています。

 地方の社会は、人間関係(コネ)で成り立っています。
 もちろん都心部だって先進諸国だって人間関係は大事でしょうが、地方においては「人間関係がすべて」といっていいぐらいの濃密さがあるのです。

 例えば、地方で「政治家になって成り上がってやるぜ!」と野心を燃やす若者がいたとします。先の四分類にあてはめると、②のタイプです。

 そうした若者の一番の近道は、「①=地域の支配者層」が集まる自民党に近づくことであり、JCはそのための格好の場所でもあります。
 
 実際、JCに入っている若手の保守系議員を何人も知っています。

 ぼく自身、地方で取材する上でJC(OBも含む)の方々と知り合い、一緒に酒を飲み、濃密な付き合いをしてきました。
 特に、選挙の際には、有力な「ネタ元」としてお世話にもなってきました。

 地方回りの新聞記者と付き合ったところで、商売上のメリットも「商売につながるコネ」も得られないでしょうが、どの地域でも親しくさせていただきました。
 自分の商売と関係がない「ヨソ者」なので気兼ねせずに何でも話せるーという部分もあったのだと思います。

 彼ら(大部分が男性でしたので、この表記にしました)は集団になると自民党=保守系の価値観を全面的に打ち出しますが、個々にお付き合いをしていくと、みんながみんな保守系の価値観ではないことが分かります。

 自分の暮らす地方で仕事上も私生活でも波風立てずに生きていくためには、「自民党支持」というポーズを取らざるを得ないわけです。

 「①=地域の支配者層」とうまくやっていくために必要なのです。




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