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心を動かす文章を書くために

みなさんが文章を書くのはどんな時ですか?
SNSで自分の想いや主張を誰かに伝えたいと思った時、どんな表現をすれば心に刺さるんだろう、なんて考えたことはありませんか?

先日コンビニでふと気になって手に取った、プレジデント社『心を動かす文章術』(知の最前線シリーズ・プレジデントMOOK)を読んでみました。これまで書いてきた自分の文章を振り返りつつ、心を動かす文章とは、特に「言葉による表現で人に伝える」ことについて考えてみたいと思います。

読者の印象に残る言葉を使って興味をひく手法

本書74ページで紹介されていますが、ヤクザが組員に懲役覚悟の仕事をさせるとき「臭い飯を食ってこい」ではなく、「ジギリをかけてくれ」と説得するそうです。
最近発売された元山口組幹部である正島光矩氏の著書『ジギリ 組織に身体を懸けた極道人生』(彩図社、2023年)というタイトルにもある通り「ジギリ」とは組織のために自らの体を差し出す(自切り)、ヒーロー性を意味する言葉です。任侠を重んじるヤクザの世界では「ジギリ」という言葉で人の心を動かすことができる。言葉の持つ強い力が利用されている良い例だなと思います。

本書38ページでは「詐欺師のヤバい文章術」として特殊詐欺の手口が紹介されています。詐欺ではなくても、テレビCMやスーパーの「タイムセール!今ついている価格からレジにて全品50%OFF」など、顧客の心理に付け込んだ勧誘方法などは言葉を上手に用いて人を動かす例ですね。情報商材、セミナー、宗教勧誘など多くの場面で用いられているマーケティング手法の一つです。

この他、言葉以外で人を動かす手法として大切なコトはなんでしょうか? わたしは「共感」ではないかと思います。
「マインド・コントロールは人間の行動を導く基本的な心理学の『6つの原理』により人間心理を巧みに利用し、人から信頼を獲得している。」とアメリカの心理学者チャルディーニ博士は分析しています。
『6つの原理』とは「返報性」「権威づけ」「希少性」「社会的証明」「好意」「コミットメントと一貫性」からなります。(p.38)

しかし、この6つの原理が成り立つためにはまず会話が続かなければいけませんね。詐欺師の会話を途中で遮ってその場を離れることができれば、騙されることはないのですから。席を立つことができないのはなんらかの「共感」関係があるからではないでしょうか。

言葉によって人に伝え、人を動かすためには、書く人と読む人の間でこの「共感」の関係が成立しているコトが大切です。読者が読んでいて気分を害してしまっていては読み進められないでしょう。
自分のnoteを後から読み返してみて思うのですが、それは、人に伝えたいことがあり過ぎて、自分が伝えたいことだけを書き進めてしまっていることです。読んでいる人を置いてきぼりにしてしまうのですね。自分の思いだけが暴走してして、読者との共感と対話をおざなりになっています。

また、9割の人は文章の「書き出し」で大損しているそうです。書き出しは文章の命であって、最初の3行がヘタだと読んでもらえない。うまい文章とはわかりやすいことであり、その原則は3つだけだと述べています。
自戒を込めて引用しますが、ぜひ皆さんもご自分の文章を点検してみてはいかがでしょうか。
暴走を始めた頭に湿布を貼るつもりで、文章を書く時にはいつも読み返したいと思います。

守れてないと最後まで読まれない!「うまい文章」3つの原則
【1】文章は短くする
【2】形容詞と被形容詞はなるべく近づける
【3】ひとつの文に、主語と述語はひとつずつ

『心を動かす文章術』p.13

読み手を夢中にさせる文章術

さて、椎名林檎の『本能』という曲の歌詞の最後「もっと中迄入って あたしの衝動を突き動かしてよ」という部分、なんだかゾクッとしませんか?日本語の一人称「わたし」は女性の場合「あたし」ということがありますね。「わ」と「あ」のたった一音の違いですが、かなり違った印象を受けるのではないでしょうか。

ここからは技巧的な内容を取り上げます。本書7ページに書かれていることです。

文章は全体の構成を考えてから書き始めるべきだと思い込んでいる人が多いですが、読み手からすると、きれいにまとまった文章を読むのも退屈です。むしろ興味をそそられるのは、正解が見えていない中で必死に考えて、あっちに行ったりこっちに行ったりと思考の過程が浮かび上がってくる文章です。

これは読んでいてワクワクさせるような文章のことですね。長編なのに徹夜で一気読みしてしまう小説のような。当然、最後まで読まなくても内容がわかる文章では退屈です。しかし読者を夢中にさせる文章術はとても高度なイメージ。でも、こんな文章を書いてみたいな、という理想形として知っておきたい。決して真似はできませんが…。

自分でも取り組めそうだなと思ったのは「接続詞を使いこなすと文章は上達する」という内容です(p.24)。
因果関係がわかりにくい文章はうまい文章とは言えません。本書では接続詞の役割はずばり「クルマのウィンカー」だと例えています。読む人に文章の行く先をさりげなく教えてあげる役目があるのだそうです。

接続詞の「したがって」「これにより」「だから」などの順接の接続詞はできるだけ削っていく。一方で「しかし」「とはいえ」「それなのに」などの逆接の接続詞は必ず残す。
文章の推敲段階で行う作業ですね。学校では接続詞を正しく使いましょうと習いますが、意外と難しくて悩んだ人も多いと思います。文章を書き慣れない私にとっても、この技術はまだまだ修業が必要だなあと思いました。

盛り込む内容にも技術が必要です。以前、書き手と読者に「共感」関係を成り立たせることが大切だと書きました。そのためにできる技術が「読者のファン化」です。そのための技術として「エンパシーライティング」というものが紹介されています。(p.54)

エンパシーライティングは読者の反応を予想し、共感できる関係を築くために内容を故意に構成する手法です。
まずは「読者に有益な情報を与える」「自分の経験を具体的に書く」「コンプレックスや失敗を書く」「自慢話をしない」ということが紹介されています。
読者に対して仲間であることを理解してもらい、実際の事例で説得性を持たせる。自分の失敗などを織り込んで親近感を持ってもらう。そのためには決して自慢話をしない事、ということです。SNSのインフルエンサーにもこの手法を使いフォロワーを集めている方が多くいるようです。

法律が人の心を動かすことはあるのか?

言葉として表現されて国民に対してルールが課される規範、法律は現代の政治、行政のためにどのような力を持っているのでしょうか。私たちは多くのルールに囲まれて事業や生活をしています。しかし、多くの人にとって法律は別世界の話ではないでしょうか。
「どうして人はルールを守らないのか」ということは永遠の課題です。そこには法律と現代に生きる私たちの生活との「共感」関係が築けていないからではないのかと思います。本書では触れられていませんが、法律によって人を動かす原理を探求した本として最近発売されたものがありますので紹介します。

法律の文章が分かりにくい、お役所言葉が分かりにくいということがあるかもしれません。確かに政治の世界で使われている言葉はわかりにくいことが多いですね。頭脳明晰な官僚ばかりだと、一般庶民の気持ちは分からないのでしょう。しかし、法律に対して私たちが共感できないのは、もはやその法律が今の時代の私達とかけ離れたものになっているからなのではないでしょうか。法律と私たちの間に「共感」関係が築けないのは悲劇を生む元になります。

法律を現代の人間が理解できるための一つの改善方法として、PREP法という文章の書き方が参考になると思います。本書では18ページに書かれています。PREP法の簡単な理解として「結論-理由-具体-結論」の構成で書くということです。法律の文章構成として、このような体裁にするのです。もし従来の法律でこのような構成になっていないものがあれば、書き直すか、別の法律なども含めて統合するなどしてはどうでしょうか。

主に法案調査のnoteを書いている私ですが、言葉による表現で自分の考えを人に伝えるのは本当に難しいと感じています。なので、もしも読んでくれた人の心が動いたのなら、最高に嬉しいです。

私がこれまでnoteを書く時に気を付けていたこと、さらに本書を読んで考えたことは次の通りです。読者の印象に残る言葉を使う。これは興味を持ってもらうためです。さらに興味は持続しなくてはなりません。そして接続詞を上手に使って段落構成を分かりやすくする。読者との「共感」関係を築けば興味を持って読んでもらえるかもしれません。

これまでのnoteでは引用する文章が多かったので文字数も多くなりましたが、それらも考慮に入れて文章を構成することが大切かもしれません。そして、引用するデータもなぜ引用するのか分かりにくい場合がありました。説明もいれながら、資料の着目点もわかりやすいように引用した方が良かったかなと思います。

さて、本書を読み文章の書き方についての知見を整理できました。併せてこれまでの自分のnoteの見直しをすることもできました。皆さんの中でどなたかが本書を手に取ってお読みになり、参考になれば私としてもうれしい限りです。

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