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日本の最高の食文化「まぐろ」を官僚が破壊する!

■はじめに

4月になると、沖縄にマグロの季節が訪れます。今年(2024年)の1番まぐろは体長205センチ、重さ162キロ。3月28日に出港したマグロはえ縄漁船「宏徳丸」が宮古島沖合で漁獲した逸品です。一般的にマグロは秋からシーズンに入りますが、沖縄は年間を通して新鮮なマグロが手に入ります。

皆さんは「マグロ」好きですか?マグロはやっぱり寿司ですよね。私は子供の頃から寿司の中でもマグロが一番好きなんです。他にも刺身、ネギトロ。。。ねっとり濃厚な味わいが美味しいですよね。筆者もキーボードなんか打っててないで沖縄まで飛んで行って食べたくなりました。

さて日本のマグロの代表といえば、青森県の「大間のまぐろ」。マグロの最高峰とされている「大間まぐろ」かつては「国産」「天然」「生」が売りでした。2007年に地域団体登録商標として「大間まぐろ」シールを貼り、船名や漁法など厳格に管理されて一躍高級感に箔が付きました。しかし大間港付近での不漁が続くなど、苦肉の策で定義を緩和する事態となりました。2022年11月から大間漁港で水揚げされたものであればシールを貼れることになったのです。

「大間のまぐろはうまい!」実はこれ、産地、生〆(いけじめ)、流通時の保存方法など、看板を背負った漁師や流通業者がかたくなに守り切磋琢磨して得られた評価です。しかし、あっさりとブランドを脱ぐことになった苦肉の策が、許可された漁獲枠以上の不正流通につながり「大間まぐろ」事件が発生してしまいました…。

ところで、私たちは「減税だ!」「規制緩和だ!」と言っています。しかしその効果は…?あまり芳しくないような?
まず一般の人が「減税」や「規制」というものが良く分かっていないということもあります。「減税ってなに?」「規制ってなに?」というのが正直なところでしょう。

まず「国がやること」を悪いこととは思っていないのが日本人あるある。「自由に」なんて言ったら「好き勝手に誰かがやりだしたら多くの人に迷惑がかかる!」とつぶしにかかるでしょう。ですが、私たちも「規制」の事ってちゃんと分かっているでしょうか?

本noteではこの度国会で審議されることになった「漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案(漁業法及び水産流通適正化法改正案)」(本法案」)について考えてみたいと思います。対象とするものは2024年第213通常国会で法案が提出される『漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)および水産流通適正化法(令和二年法律第七十九号)改正法案』です。

■「規制」とは?

法律のほとんどは「規制」を定めるものです。つまり「規制」は法律が制定されることで実現されます。そして、実は、規制については事前に省内で検討されています。規制があることでどのようなことが実現するか、どのようなメリット、デメリットがあるのか、一応省内で無い知恵出し合って考えているのですね。

ここでは、農林水産省の「規制に係る政策の評価結果(令和5年度実施分)」「事前評価」を見てみましょう。ここで本法案の規制に関しても事前評価が行われています。事前評価は法案提出前に行われます。

規制の区分:
 拡充
規制の目的、内容及び必要性等:
漁業法においては、漁獲可能量による管理を基本とすることとし、第26条第1項及び第30条第1項に基づく漁業者からの漁獲量等の報告(以下「TAC報告」という。)を受けて、漁獲可能量を超えた漁獲が行われないよう資源を管理しているところ。
特に、太平洋クロマグロは中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)において各国別の漁獲可能量を定めるなど厳格な資源管理が実施されており、太平洋クロマグロの資源量は歴史的低水準であった2010年の約9,800トンから、2020年には約6.5万トンまでに回復するなど、資源管理の取組の成果が出つつある状況にある。
このような中、令和5年2月に太平洋クロマグロについて、TAC報告義務違反で関係者が逮捕される事案が発生したところであり、同様の事案の再発を防止することが急務になっている

本法案『規制に係る政策の評価結果(要旨)

従来の方法では「商取引上の取引伝票と漁獲量の総量のみのTAC報告の内容を照合して」いたため「伝票の記載に係る漁獲物が未報告の漁獲物かどうか確認することが容易にできなかった」とのことです(本法案事前規制『本文』)。そのため「迅速かつ実効性のある取締りができない」ため規制強化が必要となりました。本文では分かりにくいので要約して記載します。

クロマグロを採捕した時の報告事項について、現行の漁獲量等(注:隻数、トン数での規制)に加えて、採捕した個体の数を法定化(注:法で定められたもの)する。船舶等の名称個体ごとの重量等の記録を作成し、保存する。
漁業監督公務員(水産庁職員、都道府県職員)による巡回や立ち入り検査の強化を行う。違反したものは停泊命令等の対象にする。GPSの設置、常時作動の命令を受けたものは通信の妨害などは行ってはならない。
クロマグロを水産流通適正化法の対象水産物とする
流通業者はクロマグロを販売する際、船舶等の名称、重量、などを伝達する(QRコードなども認める)。

同上より要約

その際、業者の費用負担、行政費用の増加の試算を行っています。

事業者負担:
 届出に要する時間2時間×時間単価1,494円×3,000社=約900万円
行政費用:
 システム改修費600万円(TAC報告システム改修)。
 その他違反者の事実認定や停泊命令の発出手続きを6時間とみて年間5件あった場合8万円。
 業者の届出受理事務0.5時間×時間単価2,663円×3,000社分=400万円
など規制に関わる費用を官民合わせると2,000万円となる。

同上より要約

といったように細かく試算をしています。あえて時間単価を記載しました。おもしろいのでチョット脱線。漁業関係者の時間当たり人件費が1,494円。これは「令和4年分民間給与実態統計調査(国税庁) の農林水産・鉱業平均年間給与から」算出。一方、公務員は2,663円。これは「令和5年国家公務員給与等実態調査(人事院)における平均給与月額」から算出。しかも、漁業関係者の分の計算では勤務時間を8時間としています。公務員は7.5時間だそうです。ってことは人件費に1,000円以上の差があるんですね。「公務員は気楽な稼業ときたもんだ~」

これですよ、ココ重要。公務員に任せるとお金がかかるんです。規制をすると公務員の仕事が増えて、税金がどんどん使われてしまうんです。つまり「規制は予算獲得のために作る」ということ。規制が増税につながる理由、それは公務員の仕事を「つくる」ために税金が投入されるということなのです。

■漁業法改正の経緯

さて本法案のきっかけとなった、上にも書きました「TAC報告義務違反で関係者が逮捕される事案」についてです。これはなんのことでしょうか?

美味しいマグロを供給してくれる水産業者に2023年2月青森県警の捜査員が入りました。水産会社2社の社長が逮捕され自宅からむつ署に連行。その半年前、2021年8月に青森県は大間など3漁協の漁師20人が21年度分の約59.8トン分の漁獲量を報告していなかったと発表。県警の捜査では2社の未報告分は98トンもあり、青森県に割り当てられた漁獲枠の14%にものぼる量だったのです。しかし県や漁協などで作られた管理委員会は「組織的な隠蔽などの悪質性は確認されず、重大な違反にはあたらない」と発表しました。これほど大きな密漁が重大な違反にあたらないというのも変な話のような気がします。

漁獲枠外の大間産クロマグロが流通していた事件。県警は、配分枠に対する漁師たちの不満を背景に不正が常態化していたとみている。有識者は、漁獲ルールの形骸化が日本の漁業に及ぼす影響を懸念する。
「悪いことはしているが、みんな食べるためにやっている」。47歳の男は逮捕前の読売新聞の取材に対し、そう話した。都道府県ごとの漁獲枠は2018年に設けられたが、2人は各漁師の配分枠を超えた分を、少なくとも20年以降は県に報告せず全国に流通させたとみられる。

読売新聞オンライン「大間マグロ漁獲未報告、配分枠に不満で常態化か…「うわさあった」不審感じていた漁師も」(2023/02/12)

この事件を受けて水産庁が改正を検討し始めました。

クロマグロを巡っては青森県・大間産の漁獲量が一部未報告だった問題が発覚し、管理の強化が課題となっている。クロマグロは資源を回復させるため漁獲可能量が決まっている。大型マグロは1匹ずつ取引する実態があるとされ、個体ごとの報告を求めることで管理を厳格化する。

産経新聞「マグロの不正漁獲防止へ改正法案提出 個体数の報告や記録の保存を義務化、罰則も強化」(2024/3/8)

この記事に書いてある「管理の厳格化」が船の名前やマグロごとの重さなどの記録の保管と流通時の伝達ですね。漁業関連ははっきり言ってすべて官僚に言われるままです。検討会など開かれても御用有識者の集まりですから、決まった事項を形式的に承認するだけです。会議録など見るに値しません。一応会議や情報は下記のサイトにあります。

〇水産流通適正化法Webサイト

〇水産政策審議会 資源管理分科会

■漁業法及び水産流通適正化法とは

2018年漁業法等の一部を改正する等の法律により数量管理を基本とする新たな資源管理制度が創設されました。

資源管理に関する従来の公的な規制は、船舶の隻数及びトン数の制限と漁具、漁法、漁期等の制限による漁獲能力の管理が主体でした。
しかし、近年の漁獲に係る技術革新により、船舶の隻数、トン数等当たりの漁獲能力が増加し、船舶の隻数、トン数等の制限による管理の手法が限界を迎えつつあり、むしろ、漁獲量そのものの制限に転換しなければ水産資源の持続的な利用の確保が十分になし得ない状況となりました

水産庁/新たな資源管理の部屋「1.資源管理の意義・背景

また、資源管理だけではなく特定の種について違法な流通を防止する措置が取られています。これを規定するものが「水産流通適正化法」です。

こまで水産流通適正化法で規制されていたのは7種だけでした。それは国内では届出された者だけが「あわび、なまこ、うなぎの稚魚」を採捕できること、適法に採捕された「サバ、サンマ、マイワシ、イカ」以外の輸入が禁止されていました。違法な漁業をIUU(違法・無報告・無規制)漁業と言います。それに今回「太平洋クロマグロ」が追加されます。

最大の水産物輸入市場(金額ベース)であるEUや世界第二位のアメリカでは、すでに同様の法律が施行されていおり、EUでは全魚種対象、アメリカでは全魚種対象に拡大するべく議会で議論されています。そのような中、日本の規制がこの状況では、世界のIUU水産物が日本に流れ込み、世界全体で進めていくべき規制の抜け穴となりかねません。

WWFジャパン 『IUU(違法・無報告・無規制)対策「水産流通適正化法」施行 残された課題とは?』(2022.12.02)

世界的には全魚種が違法採捕を禁止していると。だから日本も全魚種規制しろ、ということが漁業関係者の中では常識なのですね。しかしまあ、簡単に言えば数年前になんとか適正化法を制定することで日本はお目こぼしをもらっていたのです。そこに大間の事件が起きてしまい、水産庁の役人は「顔に泥を塗られた」と感じたのでしょうね。官僚はプライドが高いですから!

コレ重要です。官僚はだれよりも自分が頭が良いと思っています。自分のやることが正しいんだ。国民なんか何も理解できないから自分が代わりにやってるんだ!というプライド。ってことは官僚がプライドを傷つけられたため規制を追加したってことですか!?

そんな規制、いらね。これだけで本法案は反対ですよ。

事の発端は、大間漁協が「大間まぐろ」の定義緩和を行ったことなのではないでしょうか。そして、そこに「漁獲枠管理」という規制が行われることにより事態が悪化したように思えます。

大間のまぐろは今や「日本の宝」とも言える存在ではないでしょうか?いまや日本は製造業を没落させた結果、食とアニメと安全以外に良いところなんて無いんですから。マグロの寿司は世界に打って出た「WASHOKU」の筆頭格ではないですか? 漁協は自信をもって昔の通りに希少性を高めた「大間まぐろ」で勝負しませんか?

そして、水産庁は大間の品質管理を活かした水産振興行政に舵を切りなおりましょう。大間の本当に品質の良い美味しいまぐろを国を挙げて支援し、もっと青森県の漁獲枠を増やしましょう。そうすれば品質のよい大間まぐろは再び流通し始めるはずです。

品質管理のしっかりした大間のまぐろは最高級品。そしてそれと並行して大間を始め青森でとれるまぐろは世界一美味しい!と言われる日が来ることを願っています。

このように提言することで私たちも「税金下げろ、規制をなくせ!」と大々的に言えるような気がします。

浜田参議院議員に質問してほしい!

減税と規制緩和に賛成で、国会でも政府に鋭い質問をしてくださる参議院議員NHK党の浜田議員に、ぜひとも国会で質問して欲しいな〜と思うことを番外編として掲載しています。(^_^)

【質問1】 大間のまぐろは地域団体登録商標を認められるほど、高品質で価値のある食材だと思います。農林水産省の方にお伺いします。なぜ、大間まぐろはまぐろの中でも一番美味しいと言われるほどなのか。その理由についてのご見解をお願いします。

【質問2】 大間のまぐろの美味しさが、漁師の方、漁協、流通業者など多くの方がその漁法、鮮度管理、品質管理において過去から培われてきた努力によって成り立っている以上、国を挙げて大間のまぐろを日本のブランドとして育成していくべきではないかと思います。また、WASHOKUというユネスコ無形文化遺産に登録されている日本人の伝統食として特にまぐろを中心とする寿司の評価は世界的にも高いと思います。

農林水産省の和食に関するホームページに掲載されている『The Washoku Way -Japan's Nuanced Approach to Food-』という冊子の表紙はエビとウニの寿司となっていますが、まぐろの寿司にすべきではないかと思いますが、ご見解をお願いいたします。

農林水産省『The Washoku Way -Japan's Nuanced Approach to Food-』



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