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「やりがい」に満ちている地域に、もっと機会をつくっていくために アフロマンス×糀屋総一朗対談3

ローカルツーリズム株式会社代表・糀屋総一朗と、泡にまみれて踊る「泡パ」や、車で楽しむ音楽フェス「ドライブインフェス」など数々の人気イベントを仕掛ける体験クリエイターのアフロマンスさんの対談。3回連続掲載の最終回は、人材の流動性の重要さ、地域の仕事に取り組むことへのモチベーションについてです。

ローカルエリートを育てる国内ワーホリ!?

糀屋:アフロくんは全国各地で面白い活動をしていますよね。今後、こんなことやりたいとか、何かアイデアはありますか?

アフロマンス:いま、鹿児島と東京の二拠点生活をしていて。鹿児島に面白い人をいっぱい連れて来たいなとかは思ってます。だから、まずは来てくれた人が泊まれる場所とか作りたい。僕の性格なので、「住みたくないけど、1泊ならいいかも」みたいな、ちょっと尖った宿がいいですね(笑)。

糀屋:地域へ短期間のビジネス留学も面白いんじゃないかって思います。僕らの悩みってプレーヤーがいないんですよ。ローカルエリート予備軍はいるけれど、なかなか始める人がいない。だから、現地でサポートする人が必要で。地域に移住を求めると難しいけど、流動的に一ヶ月限定とかなら実現の可能性はあるのかなと。

オンラインの関係だけでは上手くいかないこともあるし、海外に留学するのがリスクな今の時代、国内留学というのも面白いんじゃないかな。

アフロマンス:国内ワーホリみたいな感じですね。僕がローカルエリートと話をしてて感じたことなんですけど。彼らは新しいことを始めて、それで生計を立てられるまでになる。それってすごいことだと思うけど、その先何があるのかって、なんとなくの不安や頭打ちを感じてる人もいる

最初に話した大分のキャンプ場の話だと、施設をリノベーションして、売り上げもあがるようになった。現地のスタッフを育てて、自分がいなくても回るような仕組みができて、従業員のお給料も払える。だけど、それを達成したら、次のビジョンはどうしようって。

僕とかは、ずっと現地にいるわけじゃなく、各地を飛び回ってるから、「川に飛び込める滑り台作ろうよ〜!」とか軽く言えるんですけど(笑)。

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そんな時、今の話にあった、流動性を持たせるというのはいいと思いましたね。ローカルの人だからこそ、土地にいい根を張っていると思うんですよ。でも、一回、ボンってこれを抜いたら、新しい発見がいろいろあるんだろうなと。

糀屋:そうですね。僕も大島に移り住んで、局所戦をやってるんですけど。どんどん深掘って行くと、一人でできることの限界や同じ場所でやることの意味を考えます。そうすると、違う場所に行って、今までの知見をそこに落とすのも価値があるんじゃないかなって。

アフロマンス:全国チェーンのお店って、同じ業務の中では人材交換とかあると思うんですよ。でも、サウナやってた人が急に旅館とかレストランのスタッフになるとか、それはないですよね。

専門性があることって、代わりの人材を見つけることが難しい。でも、まったく違う場所の、違う職業に入っていけるみたいな。色の違う拠点がいくつもあって、それを流動的に行き来できる、そういうワーホリみたいなことができたら面白いですね。

糀屋:ワーホリのように、帰ってくる場所を担保できる仕組みもいい。移住という言葉が重いのかもしれないですね。

感謝されている実感は「やりがい」になる

アフロマンス:東京など大都市圏の若者が悩んでるのは、「やりがい」ですよね。

糀屋都会に住んでると感謝されるタイミングが少ない。何でも安く手に入るし、美味しいレストランはあるし、何かやってもそんな喜ぶ人がいない。

例えばコンビニエンスストア。都会で深夜にずっと働いても、そんなに感謝されないわけですよ。だけど、大島の商店にコンビニの商品を置いてレジを手伝えば、日中普通に働くだけでもすごく喜ばれます。都市においては何でもないことも、地域では感謝される。非常に素朴なんですが、感謝されるのって人間の根本的な欲求かもしれません。僕が地域にはまってしまっている理由でもありますね。

アフロマンス:あとは、感謝されている実感があるかないかでも、差が出てくるのかな。

みんながスマホを持ってる時代、ビジネスも数字との戦い。バナー広告とかで集客するけど、お客さんの顔は見えない。管理画面を見て数字が上がるか下がるかで成果を測ってると、これってなんのためにやっているんだっけみたいな。コロナもあって人と会わないと、余計に実感が薄れてく。

これが地方に住んで、人と交流して感謝されると、やってることが誰かのためになっていることを実感する。地方で仕事をすると、重いものを持つこともあるじゃないですか(笑)。それすらも作る喜びというか、自分のフィジカルも含めて実感できる。

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実際に移住して頑張っている人は、一人で実感できてるかもしれない。でも、さっき糀谷さんがおっしゃってた、スケールしていくという意味では、まさに国内ワーホリの仕組みがあればいいかもしれないですね。

糀屋:そうですね、大事なことですね。

地域に機会を作るのは、医者を呼ぶくらい必要なこと

アフロマンス:ローカルエリートの方と接してて思うのは、「機会が足りない」だけだったりする。

地域でイベントをやるときには、現地のカメラマンやデザイナーにお願いすることも多いんですよ。実際に会うと、東京のプロでもなかなか持ってないようないい機材を持っていたり、技術も高かったりする。でも、普段の仕事を聞くと、友人の結婚式の撮影とかしかやってないとか。

地方には技術や道具がないわけじゃなくて、それを生かす機会が足りないだけだったりするんですよね。いいものが生まれるのには、いいお題が必要なので、その機会を一緒にできたらいいですよね。

糀屋:僕もお題を出すってのを考えたことがあります。例えばですけど、「大島で100万円の価値があるサービスを考えてください!」とか。

アフロマンス:とはいえ、ローカルの人ってクリエイティブのジャンプに慣れてないことが多い。プロモーションヒデオを作ってくださいと言っても、普段は結婚式のビデオばかりやってたら、いきなりはなかなか難しい。でも、技術力はあるから、ちょっとディレクションするだけで、いいものができたりする。だからお題を一緒にやる、みたいなのも一つの方法ですね。

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糀屋:メンタリング・プログラムみたいなのも良さそうですね。

アフロマンス:メンターって大事ですね。ちょっと後押ししてジャンプの手伝いをしてあげるだけで、道が開けたりする。そこを、東京のメンバーとローカルのメンバーが一緒になってできる形がいい気がしますね。

クリエイティブとか企画の仕事をビジネス的に突き詰めていくと、フィーをどれくらいあげられるかとなってくるんですけど、その行く末は大企業のオファーしか受けられない人になってくる。でも、本当にクリエイティブが必要で困ってるのは、お金を持ってない人なんじゃないかとか。そこに矛盾を感じることもあります。

例えば、さっきの話じゃないですが、地方で企画の相談を受けたり、アドバイスをすると、ものすごく喜んでもらえるんですよね。ほんとに、「医者のいない島に医者がきた!」みたいになる。そういうのを体験すると、割に合うかわからないけど、喜ばれるっていいものだと思います。

糀屋:今の例えにあった、医者って言葉、本当にぴったりだと思います。新しいことをどんどん仕掛けていくことは、医者を呼ぶのと同じくらい、今の地域に必要なことかもしれない

アフロマンス:企画の仕事ってキラキラして、「楽しいこと!」みたいなイメージがあるけど、それって余裕があるからできる部分はあると思うんですね。地域に行くと、その余裕がない。新しい取り組みには価値があるし、棍棒みたいに「なんかいい」ものを「なんかいい!」として盛り上げていって、それがビジネスになる

このあいだ棍棒を売るっていうからね。いくらで売るのか聞いたら、「三千円」っていうから、「だめだよそれ!三万円にしよう!」って言いましたよ。棍棒の価値を高めていこう!って(笑)。

糀屋:僕がやってることとアフロくんのことって、表層的には違うことをやってるように見えるけど、話を聞いたら考え方の基盤は一緒だなって思って。ぜひ何かの形でご一緒できたらって思います。

アフロマンス:はい、ぜひご一緒したいですね。僕は企画側の人間として、地域の人と一緒に事業をやっているんですよね。でも、その後のことや、彼らが自走できるのかはまだ、悩んでいる状態です。だから、短期間住むとか、人材を交流するとか、事業に投資をするとか、すごいヒントになりました。ありがとうございました。

糀屋:こちらこそ、ありがとうございました。

(構成・西川真友)

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