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SNSのわかりやすさの先にある「本質的な面白さ」を考えたい アフロマンス×糀屋総一朗対談2

ローカルツーリズム株式会社代表・糀屋総一朗と、泡にまみれて踊る「泡パ」や、車で楽しむ音楽フェス「ドライブインフェス」など数々の人気イベントを仕掛ける体験クリエイターのアフロマンスさんの対談。3回連続掲載の2回目は、SNSの「映え」に対する本質的な「面白さ」について考えます。

物事の表面で消化されない、本質的な深みが面白さ

アフロマンス:SNSの時代になって、写真を撮ってシェアする文化が定着しましたよね。例えば中国って、いわゆる「映える」スポットがたくさん用意されている。ところが、撮影する場所は作り込まれているけど、フレームの外は何もないとかあるわけですよ。

糀屋:(爆笑)

アフロマンス:すごく効率的ですよね。お金をかけて広く作り込んでも、結局一部しか写さないんだから。

でも実際に現地を訪れた人からすると、それってフレームだけの張りぼてじゃないですか。映える写真は撮れるけど、実際に満足するかというとまた別の話。心動かされなかったらそこまで。シェアされるかもしれないけど、SNSの表面だけで消化されて終わってしまう。

これって仕方ないことですけどね。何か面白いものがあったら、SNSでシェアされるじゃないですか。そしてそれを見て、似たようなものを作る。表面しか知らない人が作ると、薄っぺらいものができます。インスタの四角い枠の世界でしか見てないから、わかりやすくて映えるけど、それ以外は何もない。シェアされない部分の本質的な深みも大事だと思います。

糀屋:その通りですね。

アフロマンス:タイムリーな小ネタなんですけど。やばいサウナがあるんですよ。

糀屋:それ、SNSでみました!やばいですよね(笑)。

アフロマンス:長崎にあるサウナなんですけどね。ずたぶくろを被せられて、燃えたぎる窯に入れられて(笑)

糀屋:確か投稿のハッシュタグには#ミッドサマーって書いてありましたね。本当にミッドサマー感あったなあ。(編集注:ミッドサマー…『ミッドサマー』(原題: Midsommar)は、2019年のサイコロジカルホラー映画)

アフロマンス:あの体験はすごかった。ちなみに、ツイッターで3.5万いいね。意図していなかったのに、バズっちゃった。あのサウナは、作ろうと思っても、狙ってできるものではないでしょう。

さっき挙げた棍棒と近くて、結果として面白いけど、なんでそこに至ったのか常人では理解できないような感じがある。その深みに至るまで、いろんなプロセスを経ているんでしょうね。

「わかりやすさ」がこの5〜10年くらい溢れてる。SNSが流行して、パッケージは綺麗だけど、蓋を開けたらちょっと残念みたいなものが多いなあって。本質的な面白さは、中身をどこまで煮込めるかでしょうね。

糀屋:土着の思想や歴史や文化とか、さまざまな要素がないと、奥行きがなくて体験として面白くない。絵面の強さだけじゃつまらないですよね。それを支える部分を掘り下げるのは、とても大事だと思います。

一言一枚(ひとこといちまい)で伝える

アフロマンス:僕、企画の講師をやってるんですけど。短い時間の中でコツを伝えなくてはいけないんですね。だからいくつかキーワードを言うんですけど、そこでよく話すのが「一言一枚(ひとこといちまい)」。

「一言一枚」でまとまらないと、世の中に伝わらない。さっきのサウナも、ツイッターの一文だけで、やばさ伝わるでしょ。

糀屋:伝わりますね。

アフロマンス:でも次に上がってくるのが、「一言で伝わる企画って薄っぺらくない?」ということ。もっと言いたいことはたくさんあるぞと。

糀屋:なるほど、その気持ちもわかります。

アフロマンス:そこで考えたいのは、言いたいことを「いつ伝える」のか。さっきのツイートを例に挙げると、あの投稿の下に、僕は解説を入れているんですよ。

何があるかとか、深堀したい人は見ればいい。そう思うんですよね。

イベントの告知でリリースを打ったり、SNSを投稿したりで伝わることって、結局は「一言一枚」。さらに知りたい人が検索したら、ちゃんとサイトが出てきて、詳しく載っている状態にする。だから、全部を書く必要はない。あとは、最終の体験の部分で、告知に載っていないものがあるってのも重要だと思うんですよ。

糀屋:告知に載っていない。

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アフロマンス:以前「SAKURA CHILL BAR(サクラチルバー)by 佐賀」というイベントを企画して開催したんですけど、一言で言うと「120万枚の花びらに埋もれるチルアウトバー」ですね。大量の桜の花びらに埋もれるプールがあって、そこで日本酒を飲んでいる絵を載せました。わかりやすい一言と一枚です。

そして、ホームページを見ると、お店で飲める日本酒の銘柄が詳しく書いてある。その味わいがどういったものかや、こだわりのおつまみの説明もあって。

さらに実際に訪れると、日本酒に詳しい店員さんがいて、会話も楽しめる。ガラス張りのカウンターの下には、佐賀県から持ってきた日本酒の仕込み水。告知から検索。当日の体験まで新しい発見があるから面白いんです。

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体験がSNSで見たものの「確認作業」じゃつまらない。SNSに投稿はしても、他の人に勧めたりは多分しないから、結果として広がらないんじゃないかな。でも、告知を良く見せたい、たくさん伝えたいというのは、人間の心理としてわかりますけどね。

だから、伝える時はできるだけシンプルに。期待値をあげすぎないのもコツ、なんて話もしましたね。

糀屋:僕の悪いところですけど、説明を全部入れ込まなくてはいけない、みたいなのがあって。コンセプトを作って発信するとか、弱い部分ではあります。そういったところは、ぜひアフロくんにお話を聞きたいですね。

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