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業者任せではなく一緒に考えて一緒に作る ~周南市が挑戦する、官民連携 自治体DX~

こんにちは。オープンコラボレーショハブ「LODGE」です。

現在、全国の道路インフラの老朽化が進む一方で、自治体職員数は減少傾向にあります。業務の効率化と市民の安全安心を実現する、関連業務のDXが注目されています。

全長1200キロメートル超の市道を管理する山口県の周南市道路課では、工事業者を含めて情報を一元管理するプロジェクトを立ち上げ、運用をスタートさせています。

どのような課題解決を目指したのか、お話を伺いました。本イベントレポートは抜粋版です。本編はぜひアーカイブ動画をご覧ください!

アーカイブ動画

登壇者

上左より)山本さん、藤村さん  下左より)黒木さん、徳應

山本 謙介 氏
周南市建設部道路課 橋りょう長寿命化推進室 室長補佐

藤村 悠司 氏
周南市建設部道路課 橋りょう長寿命化推進室

黒木 紀男 氏
あっとクリエーション株式会社 代表取締役社長
情報工学部門/総合技術監理部門 技術士

徳應 和典
オープンコラボレーションハブ「LODGE」責任者

官民まるごとDXしたい! シビックテック発のプロジェクト

本件は山口県のシビックテックチャレンジYAMAGUCHI発のプロジェクトです。職員が「アナログな業務の一連の流れをなんとかしたい!」思いからエントリーし、プロジェクト実施に至りました。

デジテック for YAMAGUCHI事務局のnoteでもプロジェクトの詳細が紹介されています。あわせてご覧ください。

目指したいのは市民、企業、市、「三方よし」の変革

はじめに、周南市の山本さんに概要について伺いました。

山本さん:
現在は
老朽化する市道の損傷箇所の復旧に追われてしまっていますが、将来的には壊れる前に対策を行う予防保全型の維持管理を目指したいと考えています。

市民視点では、通報から工事完了までの状況の見える化や修繕のスピードアップによって、市民の安心感と理解向上を目指しています。また、様々な取り組みを通じて理解や協力を得やすい状態を作っていきたいと考えました。

企業視点で最も大きな課題は現場の担い手の減少です。ビジネスとして魅力を高めることができないかと考えました。

市としては、役所だけでなく土木の現場にもDXを取り入れ「三方よし」となるような変革を目指したいと考えています。

そのための手法として、維持管理体制そのものを見直すいわゆる包括的民間委託の検討と、情報共有システムの開発を検討しています。本日ご紹介するのは後者の取り組みです。

一緒に作り、試し、一緒に育てる

次に、本プロジェクトのシステム開発を担当した、あっとクリエーション社代表の黒木さんにお話を伺いました。

黒木さんは阪神淡路大震災の折、現地調査を担当した経験をお持ちです。当時、紙の地図とフィルムカメラを携えて調査を進めながら「もっと調査が楽になる仕組みを作れないだろうか」と感じたことが、起業に至る原点になったと話します。

「カンタンマップ」はkintoneのデータベースと連携し、ノーコードで地図のシステム構築を可能にしたサービスです。コーディングスキルのない自治体の方でも早く簡単にシステムを作ることができ、多くの自治体で導入されています。

黒木さん:
周南市さんがシビックテックにエントリーされた要件を見て、「我々の技術で実現できるのでは」と手を挙げました。提案したのは、特記仕様書を書かない、新しいやり方で作る道路管理システムです。

プロトタイプを触っていただきながら「一緒に考えましょう、一緒に作りましょう」というやり方で、自治体の方だけでなく維持管理を委託している委託業者の方たちの業務もすべて、リアルタイムに一元管理する仕組みを作りました。

周南市での実証実験の内容

これからのDXは「一緒に作る・実際に試す・一緒に育てる」といった考え方が必要なのではないかと感じています。特記仕様書を書いて業者に任せ納品してもらうのではなく、一緒に作り現場で試し、日々生まれる「もっとこうしたい」リクエストも組み込みながら、今も進行形でシステムを育てています。

この仕組みは道路管理だけでなく施設管理や災害対応などにも展開が可能で、すでに富谷市、神戸市などで事例があります。今後もさまざまなニーズに応えていきたいと考えています。

「非常にアナログな仕組みを効率的に」

続いて周南市の藤村さんより、課題解決の手法と実際のシステム画面についてご説明いただきました。

藤村さん:
従来、市役所と業者間のやりとりは、

  1. 市民からの修繕要望を受け付けた職員が現場を確認し、

  2. 請負業者に地図・現場写真・工事内容をメールやFAXで指示し、

  3. 業者が現地を確認後、工事の段取り・修繕工事を行い、

  4. 毎月月末、1か月分の実績を紙に印刷して市役所に提出する、

    ……といった、非常にアナログなやり方でした。この流れをツール導入によって効率的に変えたいと考えました。

DXを試みたのは、現地確認から市への完了報告までの部分
ツール導入によって現地や市役所に赴く回数は削減。シンプルでスマートな業務フローに。

藤村さん:
市のメリットは、仮に人事異動があった場合でも引継ぎがしやすくなった点です。いわゆる属人的になりがちなところもツールで一括管理することで、担当が変わっても分かりやすくなりました。

業者側は、受注リストを見て施工状況が一目で分かり、管理しやすくなりました。過去の同様の工事の要望に辿れる、都度書類を作らずに済むなど、非常に効率的になりました。また、地図ベースで可視化しているので修繕個所の多い=道路状態が悪いなどの情報共有もできます。非常にメリットの多い取り組みになったと思います。

※実際の画面説明についてはアーカイブ動画の24:40からをぜひご覧ください。

「変わることを当たり前に」

山本さん:
現在も本格運用に向けて日々推進中ではありますが、何をどこまで目指すのかを皆で共有し、ベクトルを同じくすることの大切さを感じています。様々な視点を持った人がいる中で、いかに同じ方向を向いて進んでいくかが、この開発の大きな鍵を握っているのではないかと思っています。

そして、1歩を踏み出す勇気です。あるものを変える時には色々な壁が現れます。今あるもので満足している人にどう振り向いてもらうか、変わることが当たり前だと思ってもらえるように努力しています。

将来は市の発注工事だけではなく、民間業者の工事情報も市民に開示していきたいと考えています。まだまだ道のりは長いですが、ツールを活用すれば、十分できるのではないかと思っています。

仲間を増やしながら、よりよいものに

最後にひとことずつメッセージをいただきました。

山本さん:
この取り組みはまさに始めたばかりですが、これからさらに、仲間を集めてより良いものにしていきたいと思っています。今日はありがとうございました。

藤村さん:
「1歩踏み出す勇気」という話がありましたが、業務改善につながるのなら、積極的に変えていったほうがよいと思っています。私も引き継いだ身ですが、効率的になる、絶対良くなると思っています。皆さんもそういったものを抱えていらっしゃるようでしたら、ぜひ積極的に動いてみてはいかがでしょうか。

黒木さん:
今も「完成」といえる状態ではなく、そもそも業務改善はずっと継続していくものだと思っています。周南市さんと組んで「もっとこうならないだろうか?」など、教えていただきながらやりとりしています。この関係性は今までと本当に違って、とても新鮮で勉強になります。今後も仲間を増やしながら、いい流れが作れるように頑張りたいと思っています。ありがとうございました。

動画アーカイブ


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