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アイドル戦国時代の終焉

最初に述べておきたいのは、アイドル戦国時代は終わった、ということだ。アイドルブームにおいて、様々な事務所、全国地方のアイドルというのが生まれた状況を指して、アイドル戦国時代と言われてきたわけだが、今年、アイドルは新たなフェーズへと突入しようとしているのである。

 

【何が起こっているのか】

では、アイドル業界に何が起きているのか。いくつかのポイントをまとめてみた。

・戦国時代を支えたグループの解散

・メジャーとインディーズ、ローカルの乖離

・韓国への流出

アイドル戦国時代、という現象は、AKB48の力がどんどん大きくなっていく中でももいろクローバーやSUPER☆GIRLSのような大手事務所出身のグループが生まれ、さらにロコドルと呼ばれる地方事務所所属の様々なグループが生まれたことで、国取り合戦のように全国各地様々なイベントなどが発生したことに始まる。

中でも、TOKYO IDOL FESTIVALを支えたアイドリング!やベイビーレイズJAPAN、アイドルネッサンス、つりビットのようなグループがここ数年で解散したことで、アイドル業界そのものが縮小化していくのではないかと思われてきた。

 

しかし、株式会社矢野経済研究所の調査によると、アイドル市場は未だ二桁台の拡大予測となっており、ジャニーズやAKB48の牽引はまだ続くと見られているのだ。特に、乃木坂46や欅坂46のアイドルとしての活動、収益に留まらず、ファッションやCM出演への影響度が非常に大きく、市場規模が拡大していると考える。

この調査の中でも、アイドルファンの規模はおよそ280万人と見られているわけだが、今年のTIFを見ても、明確にメジャーとインディーズ、さらにローカルというのが分かれてきているのだ。

TIFというイベントは、メジャーからローカルまで問わず出演出来るようなものだったのだが、今年のラインナップでは地方のグループの数が限りなく少なくなっていた。同時にインディーズのアイドル文化に対して、違反行為を設定して混乱が起こらないように徹底した印象がある。

同じアイドルといいながら、ハロープロジェクトやAKBグループ、坂道のようなメジャーなアイドルと、インディーズのアイドルではファン層やライブでの応援の仕方などが大きく異なっており、ファン側から求められるものも変化し始めていると言える。


さらに、K-POPに対する影響だ。IZ*ONEとして宮脇咲良、矢吹奈子が渡韓。竹内美宥、高橋朱里、千葉恵里はAKB48を卒業後、韓国へと渡っている。10、20代女子の韓国に対する関心は最先端の文化であり、かわいさ、かっこよさにおいて強い憧れを抱くものとなっている。

それまで、K-POPのアーティストは長い練習生時代を経て、スタイルの良さ、スキルの高さが売りで、日本人では相手にならないと見られて来たが、このような動きによって、韓国人にはない愛らしさや小柄な可愛さが受け入れられているように思う。

一方で、韓国人同様に練習生として事務所と契約をし、デビューをする日本人も少しずつ増えており、韓国人だけではなく、東南アジア全体を含んだ混合のグループも少なくない。

つまり、国内だけを見立てた戦国時代というのは終焉し、韓国や様々な国のアイドル文化というのが、近付いて来ていると言うべきではないか。

 

【アイドル時代は終わらないのか】

先ほど話したように市場規模としてのアイドルは拡大傾向にあるが、本当にアイドル時代は終わらないのだろうか。

80年代に1度アイドル冬の時代というものが訪れた。松田聖子辺りのアイドルブームから1度、アイドルというもの自体が消えかけたのだ。その間も様々な実験は行われていたし、今で言うライブアイドルの文脈はその頃に端を発するわけだが、オーバーグラウンドの動きとしてはASAYANでモーニング娘。が誕生するまで鳴りを潜めることになる。

その頃のブームの周期を見ると、およそ3年程度で盛り上がりフェードアウトしていくという流れがあったのだが、AKB48はそのまま消えるのではなく細かくこれを繰り返している。デビュー後2年で大声ダイヤモンド、さらに2年でヘビーローテーション、2年後に恋するフォーチュンクッキー、2年後に365日の紙飛行機と、絶えず何か話題になる作品を出し続けている事が分かる。

また、アイドルというもの自体が変化したことも大きい。それまでは大手事務所のオーディションで何万人の中の1人しか選ばれなかったものが、グループアイドルとなり、さらにそのグループが複数化。地方に広がる事で、なろうと思えば、アイドルになれるという文化となった。

アイドルになるという母数が増えた事で、音楽としてのアイドルソングというのも、カテゴリーの1つとして定着したといえる。メロディや編曲を指して音楽カテゴリーを定義することは多いが、アイドルソングにおいてはそこに定義が存在しないながら、アイドルっぽさという分け方が生まれている。

モデルやタレントのような職業の1つとして、アイドルは認知を得たといえるだろう。

 

【アイドル新時代のきっかけは】

メジャーアイドルの解散が相次ぐ中で、戦国時代は終焉し、アイドル時代そのものが終わるわけではない、ということは、まさしく新時代の幕開けと言える。そのきっかけとなるのは、この二組のメジャーデビューと言える。

・26時のマスカレイド

・天晴れ!原宿

今夏、メジャーデビューが決定している2組だが、グループの方向性がはっきりと異なっている。26時のマスカレイドは王道のアイドルらしさを貫きながら、デビュ−2年でメジャーを決めた新星である。一方、天晴れ!原宿は、地下アイドルの出で、ライブで暴れたい若者を煽動していくタイプと言える。

メジャーにいくということは、非常に強く数字での結果を求められるし、リリースペースなどに対する注文も厳しいと言われている。少なくとも、この2組はTIFでの動員や盛り上がりで見ても遜色は無いが、どちらが売れていくのかというのは、アイドル業界の今後に大きな影響を与えると言える。

2019年のアイドルはここからが面白くなるのだ。

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