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中森華子の姿勢に見るPURE-Jの神髄

9.29 花やしき大会、PURE-J無差別級王者 中森華子は同期でありながら、これまで一度もシングルで勝利したことのなかった松本浩代に勝利した。

この世代は、全女の崩壊により他団体化や若くしてフリーになる選手も多く、波瀾万丈のレスラー人生を歩んでいる者も多い。その中で1人、中森は老舗JWP、そしてPURE-Jと姿を変える自分のリングに立ち続けてきた。

自らも同期が活躍するのを横目にキャリアを積み重ねてきた結果、ようやく掴んだ勝利となったわけだが、他所の流れにブレない姿勢というのは、まさにPURE-Jの神髄ではないだろうか。

 

【タッグ王者からの挑発に対し】

この記事を書くことになったきっかけは、中森のこのリアクションだった。

同日の大会でデイリースポーツ認定女子タッグ王座を防衛した春日萌花、真琴の外敵コンビが、タッグ王座を狙ってこない中森に対しコメントを残したのだが、中森はTwitterで上記のように返したのだ。

自身がシングル王者であり、既に次回挑戦者は山下りなと松本と同じパワーファイターとの激突が決まっているという前提を認めた上で、自身のタッグ王座への思いも合わせて吐露している。

元々は我闘姑娘でデビューし、現在フリーで活動する春日は前々から「PURE-Jの真ん中に立ちたい」という発言を繰り返しており、タッグ王座奪取となったWANTED戦でもこのワードはキーとなった。

ラジオパーソナリティー、レポーター、ナレーター、落語家、気象予報士など様々な顔を持つ春日だけに舌戦となると止まらぬが、この思いを中森は受け止めた形だ。

先日の記事でも、昨今の女子プロレスのストーリー展開の速さについて触れたが、例えば、前哨戦が決まっていたとしても中森が喧嘩を買うような形でやってやるよと言ってしまえば、シングル王座戦以外のタイミングでベルトに挑戦する機会というのはやってきた可能性がある。しかし、彼女はそれをしなかった。

さらに、それをただ出来ないというのではなく、タッグ王座の持つ重み、自分とベルトの歴史、春日、真琴への思いを続けてツイートすることで、中森なりのストーリーの重さ、感情みたいなものを感じさせ、きちんと転がしたというのが、非常に王者らしく、またPURE-Jらしいプロレス観だと思ったのだ。


【礼節のプロレス】

かつての対抗戦時代、JWPのレスラーは全女の選手に比べて線も細く、一見弱そうにすら見えた。しかし、徹底的に受けて受けて受けて、それでも立ち上がってくる姿というのがいつしか爆発的な対抗戦ブームの始まりを告げることとなった。

そもそもが全女とはプロレスの教え方が異なるジャパン女子の文脈の団体というのもあるが、団体内のいざこざをリングに持ち込む過激な全女に対し、技巧的で丁寧で礼節に満ちたプロレスというのはPURE-Jのプロレスだと思う。

その中で、本人の気質的な部分から天才的なヒールになった尾崎魔弓や、破天荒で純真な中島安里紗など様々な人間が入り交じる中で、中森華子というレスラーはそのエッセンスを一身に表現していると感じる。王座の重みを理解しながら、時には激情的で残酷な一面も見せる。今は若い王者がどこの団体もトップ戦線に絡み、所属以外のシングル王座を巻くことも少なくないが、王者としての風格で言えば中森ほどの盤石感はあるだろうか。

願わくば、団体としてもっと多くの人の目に触れる機会があればいいと思うが、選手がみんなで力を合わせているPURE-Jというのも団体として応援しがいのある団体だと思う。

 

中森は、何の因果か、アクトレスガールズに参戦し、お家騒動に巻き込まれているわけだが、山下との前哨戦ではLeonと組む。Leonは今回、高瀬みゆきとのタッグRED SOULでタッグ王座に挑戦するも破れてしまったわけだが、高瀬はアクトレスガールズでは中森の反対コーナーに立つ。

実際のところ、空位となったシングル王座を巡る争いがアクトレスガールズでは始まるわけだが、Leonを橋渡しに中森と高瀬が組んだら、PURE-Jの中もアクトレスガールズの中も非常に刺激的なことになるのではないだろうか。ただの妄想に過ぎないが。

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