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最も恐怖を感じやすい文章を書く












皆さんは怖い物が得意だろうか?

私は怖い物への耐性がかなりあるためか
最近は読むだけで背筋がゾクゾクッとする
ような怖い文章に出会えていない。
幼少期に怖い話を読んだ時にはそのような感覚を味わうことができたのだが、成長するにつれて怖い物に対する恐怖心が薄れていってしまった。
特別、怖い物が好きという訳ではないのだが

あの頃の感覚をもう一度味わってみたい


という願望を抱いている。

そこで今回は人間が恐怖を感じやすい物を調べてその要素をふんだんに取り入れた文章を書こうと思う。


まさか自分を怖がらせるために自分で文章を書くことになるとは...








まずは人間が怖がる物を調べてみよう。

https://www.dims.ne.jp/rankingresearch/1_50/020/002.html

男女共に霊よりも人間を恐れていることがわかる。確かに、実感が湧かないような霊より
身近に存在している人間に恐怖を抱くのは
ごく自然なことと言える。

女性にとって最も怖い物の欄にゴキブリが
ランクインしているのが少し面白い。

それに対して男性はゴキブリは恐れないものの
妻に対して恐怖を抱いているようだ。
鬼嫁という言葉があるように、あどけなく
大人しい女の子に恋をして交際し、結婚した
ものの、時が経つにつれてその女性が
鬼へと変貌していくのはよくあることなのかもしれない。しかし、そうなった原因が自分にもあるのかもしれないと自分の所業を省みるのも
大切である。


話を戻そう


なるほど、人間は幽霊よりも人間自身を恐れて
いるのか。

では、さっそく文章の作成に取り掛かろう。






クール便


やけに寂れた所だなぁ...

私はある運送会社に所属している西岡 友
という者だ。年齢38歳独身一人暮らし。しばらくニート生活をしていたが、親戚のツテで
この会社で働かせてもらえることになった。
今日もいつものように配達の依頼を引き受けてトラックを走らせていた。山を貫通している長いトンネルを抜けて目的地の団地に今着いたことろだ。

都会からこんなに離れたことろに来たのは
久々だ。

トラックを停めて配達へ向かう。

かなり古い団地のようだ。ネズミ色の黒ずみ?がどの塔にもびっしりとこびり付いている。
曇天と、人通りが全くないことも相まってなんだか薄気味悪い。

さっさと終わらせてすぐに帰ろう。

私は小走りでその配達先へ向かった。

ここが配達先の塔だな。えーっと、401号室か。
薄暗い入り口から階段を登っていく。
この塔を掃除する清掃員はいないのだろうか。
明らかに普通の団地よりも衛生状態が
悪い。階段はこほりまみれでハエやゴキブリの死体がちらほら見受けられる。
そうこう考えているうちにもう4階まで登りきった。

着いた

ふうー。重かった。ほこりくさいし腕も痺れてくるしでもう散々だ。やっと解放される。
さっそくインターホンを押す。

ピンポーン






「どちら様ですか?」

女性の声だ。

「〇〇便の者です。お荷物をお届けに参りました。」

「あー...分かりました。少々お待ち下さい。」

20秒ほどして白衣を着たロングヘアの中年女性が出てきた。目の下に大きなクマがある。
徹夜でもしたのだろうか?
扉の奥からはどこかで嗅いだことのある臭いがした。

これは.......

思い出した!
病院の中の臭いだ。 

でもなんで普通の家からこんな臭いが?

...そうそう、ハンコ押してもらわないと。

「すみません。ハンコお願いします。」

「あ、はい。」


グリュッ!

強っ!かなりの力強さで受領印を押された。
腕も震えていたし、力加減が苦手なのだろうか?

「クール便となってますので日光の当たらない0〜10℃の場所に保管しておいて下さい。
ありがとうございました。」
私がこう言うと、彼女は即座に扉を閉めた。

バタン!


わっ!

久々にこういう客に当たった。
運送をしているとこのような対応をされるのは珍しくないが、場所が場所なだけに驚いてしまった。

まあいいや。早く帰ろ。

時刻は午後6時をまわりはじめた。
暗い夕焼けがこの団地からより一層不気味な
雰囲気を醸し出させている。

私はトラックに乗り込むなりエンジンをつけて
さっきのトンネルの方向へ向かおうとした。







あれ?


トラックがうまく進まない。
加速しても速度があまり上がらない。

ググググググ

タイヤの方から変な音がする。

まさか

トラックから降りてタイヤに異常がないかを
確認してみる。


案の定、パンクしていた。

山道に転がっている石の破片などによってタイヤに穴が空いたようだ。

まずいぞ。会社の車庫までかなりの距離がある。パンクしたタイヤではとても走りきれない。

一旦会社に電話してみよう。






ピッ

「はい、○○便本部です。」

社長だ!社長は私の親戚の知り合いで
入社当初はよく面倒を見てもらっていた。

「もしもし、西岡ですけど。運送中にタイヤがパンクしてしまったみたいで、予定の時間までに戻れそうにないんです。」

「分かった。今どこにいる?」

「**団地の中なんですが」

いきなり社長は無言になった。

「あ、あの...もしもし?」

「分かったすぐに迎えに行く。絶対にトラックから出るんじゃないぞ。」

プチッ

こちらの返答を待たずに社長は電話を切ってしまった。




しばらく待ってみたが社長は来ない。
無理もない。
車庫から少なくとも4時間はかかる距離だ。
帰る頃には朝になっているかもしれない。

最悪だ。







あれ?

山の方から焦げ臭いにおいがする。

野焼きか?

1時間ほど経った後に一台のワンボックスカーが山から降りてきて団地の方面に来た。

あ!

私が配達した塔の近くにその車は止まった。
車の中から先ほどの女性と一緒に同じような
白衣を着た男が降りてきた。

あの人たちは何をしているんだ?

二人はあの塔に入った後、協力して
何かの容器らしきものを車の中に
運んで行った。

何を運んでいるんだ?
暗い。距離が離れていてよく見えない。









コンコン


!?

誰かがトラックのドアをノックしてきた。
話をするためにトラックから出る。

「はい、どうしました?」

「この団地の者です。あなたはどちら様ですか?」

暗くて顔はよく見えないが老人だということは分かった。

「○○便のものですが。」

「あー、例の。こんな時間まで配達もせずに
何をしているんですか?」

「いえ、あの、タイヤがパンクしてしまいまして...社長の送迎を待っているところで...」

「見ましたか?」

「え、何を?」

「見ていたじゃないですか。彼らが車から出てくるのを」

「は、はい。覗き見るようなつもりはなかったんですが気になってしまって。」

「社長からは聞いていますか?」

「え、何をですか?」






グッ

いきなり何者かが私を羽交い締めにした。

ゴン

頭に鈍い痛みが走り、意識が遠のいていく。

「あ、あの...」

老人は私には目もくれずに二人のところへ走って行った。何かを話しているのが見える

視界がぼやけて暗くなっていく







「やっと着いた。あのトラックだな。」
トラックの隣まで車を走らせる。

あれ?ドアが開けっぱなしだ。
車内を確認しに反対側へ回る。

「おーい遅くなっ...」


トラックの中には誰もいなかった。










恨嫁日記     4/3(火)


夫が憎い。結婚したての頃は良かった。
両親の前では「娘さんを幸せにします。」と言い張ったくせに。2、3年したら会社の飲み会などと理由をつけて家に帰る時間が遅くなった。
私の作る料理にけちをつけることが多くなった。私に暴力を振るうことも多くなった。
始めは仕方がないと思っていたが、最近になって女もできたようだ。酔っ払った夫のスマートフォンを片付けているときに待ち受けに表示されていたアレ。許せない。なぜ私だけがこんなにも苦しい思いをしないといけないのか。
もう限界





         4/15(日)


(一部抜粋)
あのネットに書いていたこと、本当なのかな?
試しに頼んでみよう。



         4/16(月)


(一部抜粋)
かなり費用がかかった。でもあの苦しみから解放されるなら安い。手順も覚えたしもう大丈夫。さっそく試す。



         4/17(火)


(一部抜粋)
うまくいった。明日、引き取ってもらえるらしい。本当にできるとは思ってなかった。明日からやっと解放される。すっきり


     4/18
3:00 包装
5:00 〇〇便に届ける
11:00 かなちゃんとランチ
   ショッピング

風呂掃除は明後日やる。







20△△年度
〇〇便共同顧客リスト


3/1   田中広      (46)
4/16 吉村希空   (34)
5/2   鈴森菜々   (40)
10/9*西岡泰典  (52)(労災のため無償)







**団地***** ********


(一部抜粋)
お申し込みいただきありがとうございました。
以下がその手順になります。

お手数をおかけしますが、お荷物は
他社○○便本部まで直接お届け下さい。





⚠︎登場人物は筆者と何の関わりもありません。

登場した人物、団体は全てフィクションです。

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