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物流業界へのトビラ #02【株式会社NX総合研究所 井上 浩志】

ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスにフォーカスしていきます。前回に引き続き、株式会社NX総合研究所で取締役を務める井上浩志さんにインタビューしました。#02では、物流業界に出会ったきっかけや業界で活かせるスキルについてお話いただきました。

<プロフィール>

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▼ 株式会社NX総合研究所 取締役  井上浩志氏
大手電機メーカーとシンクタンク系システム会社を経て、2006年に日通総合研究所(現・NX総合研究所)に入社。物流コンサルティングに従事した後、2015年に「ろじたん事業」を立ち上げ、現在、責任者として事業の拡大を遂行。


始まりはロジスティクスに興味なし?

― 井上さんはNX総合研究所に入るまで、全く別業界の2社でキャリアを積んでおられます。まずは新社会人時代について教えてください。

元々は設計がやりたくて、最初に入社したのは電機メーカーの産業機器工場でした。基本的にものづくりが大好きで、自分で考えたものが形になることに面白さを感じていました。今の『ろじたん』のアプリもまさにそうですが、生み出したアイデアがシステムとして形になることもすごく面白いと思っています。電機メーカーの産業機器工場では、製造部の生産管理に一年だけ配属されたことがあります。その際は、せっかくなので自ら志願して現場の工程を一週間ずつ全て経験させてもらいました。板金加工/溶接/塗装工程/組み立てなどの製造工程の一連を経験できたことは、現場の視点や考え方を学ぶ良い機会となり、その後の開発部での設計にも活かすことができました。

そして、20代中盤はとにかく「何かに取り組みたい」という感覚にとらわれ、技能検定や3D CAD(コンピューターを使った立体的な作図)の資格に片っ端からチャレンジしていたように思います。20代の後半ごろからは「経営的な視点も持ちたい」と思い、中小企業診断士の資格にもチャレンジしていました。学生時代より、20代の社会人の方が勉強していたように思います。

ロジスティクスと接点を持ったきっかけを教えてください。

実は元々ロジスティクスに興味があったわけではなく、自分がこの世界に入るとは微塵も思っていませんでした。きっかけは電機メーカーの次に入社した会社。シンクタンク系列のシステム会社で、親会社のコンサルタントと一緒に、主に製造業向けシステムの設計/パッケージの選定や導入支援を行うことが多く、在庫管理システムなどでロジスティクスに接する機会が増えました。当時はコンサルタントのサポートを行う補助的な役割でしたが、様々な業種と接する機会があり、常に学びがあって大変刺激的な環境でした。いずれは私自身が前面に立ってコンサルティングの仕事をしたいと思うようになり、2005年に中小企業診断士を取得。その翌年、高校時代の友人から「物流のコンサルティング会社で求人があるから面接に行かないか?」と連絡をもらい、日通総合研究所(現在のNX総合研究所)の面談を受けることにしたのです。

インタビューの様子

〝経験と知識〟は宝物

全く別の業種から物流コンサルタントへの転職ですが、採用の決め手は何だったと考えますか。

日通総合研究所の面接時、面接官の中にいたコンサルティング部門の部長が偶然にも中小診断士だったんです。資格でコンサルティングをするわけではありませんが、異業種で経験も浅い私が物流コンサルタントとしてスタートラインに立つことができたのは、中小企業診断士であったことも大きな要因だと思います。面接の前に物流コンサルタントについて下調べをしたところ、データ分析による定量的なアプローチが重要であることが分かりました。システム会社時代に大量のデータを扱っていた私としては、自分の強みを発揮できる領域が結構あるように感じましたし、そうした意味では中小企業診断士の資格も活きると考えていたんです。当時、物流専門コンサルタントはまだあまりおらず、活躍できるチャンスではないかと思ったこともあります。実際に入社してから、調達から納品までに多くのデータと格闘するようなデータハンドリングの領域では、私が持つ強みを発揮できたと思います。

いざ物流業界に飛び込み、差別化できたスキルは何ですか。

物流領域は広いため、さまざまな知識や経験があるとより良い提案ができると思います。中でも私が差別化できたと思うスキルは、3D-CADなどで仮想空間を扱った経験でした。今振り返ると、私が3次元のCADを学んでいた時代はまさに先駆けで、2次元から3次元へ切り替えのタイミングでした。これまで実物が無いと話が進まなかったことを、仮想空間で会議を重ねて進行していく経験は、今も活きていると感じます。

例えば新しいコンセプトの倉庫を提案したい場合、その設備をどう活用するか、オペレーションをどう組むかについて、3次元のような仮想空間を使うと、顧客に具体的なイメージを持ってもらうことができます。ちなみに現在提供している、『ろじたんフォーク』というフォークリフトの稼働時間、積載時間、位置情報を可視化するサービスも内部的に仮想空間を作って位置情報を取得しています。そこで使用している積載センサーは当社がアイデアを出して開発してもらったものです。センサーをフォークリフトへ取り付けるためのアタッチメントを設計から外注すると1個あたり1万円以上かかると言われましたが、CADの知識を掘り起こして自分で設計したことで、500円で作ることができました。自分でできることが広がると、アイデアや選択肢も広がります。こうした意味でも、色々な業界を経験することはとても大切だと思っています。

インタビューの様子

プロジェクトマネジメントのスキル

― 中小企業診断士の資格や3D CADのスキルのお話を伺いましたが、異業種を渡り歩いてきた井上さんが特に「取り組んでおいてよかった」と思うことを教えてください。
 
前職のシステム会社と、当社のようなコンサルティング会社にいて強く感じるのは、プロジェクトマネジメントのスキルがあるかないかで、仕事の成果が大きく変わるということです。私の場合、かつて所属していたシステム会社に「全員がプロジェクトマネージャーになろう!」というスローガンがあったことから、実務と並行しながら会社の費用でPMP(Project Management Professional)を取得することができました。

PMP(Project Management Professional)とは具体的に、どのような資格ですか。

PMPは米国のPMI(Project Management Institute)が認定する資格で、プロジェクトマネジメントを体系的に学ぶことができる最もメジャーな資格といえます。1984年に始まり、海外では企業としてPMP取得者を有していることが、プロジェクト受注の要件となるケースもあります。プロジェクトマネジメントは、納期や予算などの制約がある中でプロジェクトを予定通りに遂行し、成功させるために計画を立て、人的リソースやQCD(品質・コスト・納期)を管理することです。プロジェクトマネージャーには、プロジェクトを俯瞰して管理することや、人的リソースやQCD、リスク対応をはじめとした幅広いジャンルの知識を有することが求められます。ITや建設をはじめとする多くの業界から注目されている資格です。
 

物流分野において、PMPはどのように役立つのでしょうか。

例えば、依頼に対する提案活動やテーマ別の改善活動、新規倉庫の立ち上げなど、期日があるものは基本的にプロジェクトマネジメントが必要となる取り組みです。物流コンサルティングでも、企画書で組み立てたステップや成果物に向けてどのようなタスクがあり、人的リソースをどのように投入するかを設計し、管理していくかが重要となります。NX総合研究所だけに限らず、プロジェクト体制を組んで業務を推進するケースではPMPが役立つ場面が多いのではないでしょうか。

PMP取得者をはじめ、プロジェクトマネジメントに秀でている方は、NX総合研究所でどのように活躍されていますか。

NX総合研究所の社員は転職組がほとんどです。中でも、前職でプロジェクトマネジメントの経験と知識を持っている人は、お客様へ与える印象や各メンバーの負荷調整、納期の厳守、最終成果物の合意形成を徹底してマネジメントすることができています。プロジェクトマネジメントのスキルが高い人材は、どのような局面でも安心して仕事を任せることができるため、NX総合研究所に限らず重宝されると思います

― スキルアップのため常にチャレンジを絶やさなかった井上さん。次回は「目指す未来と若者へのエール」というテーマでお話をお伺いしていきたいと思います。


<取材・編集:ロジ人編集部>


次回の"目指す未来と若者へのエール #03"は 4/5(金)公開予定です、お楽しみに!


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