私は悪くなかった。
子供の頃の記憶。
玄関先で箒を持ってにこにこしてる写真。
あの頃の私は可愛かった。
お母さんも、お父さんも、私も
みんな、悪くなかった。
お母さんは小さい頃からあまり家にいなかった。
でも、ひとりでお留守番できて偉いねって言われて、誇らしかった。
お母さんは私が物心ついたころにはもう一人で、仕事をしなきゃいけなかったから私は保育園に行っていて。たまに帰りが遅かった。
その頃の記憶は、薄れてる。
またあそこに行けば、思い出せるのかなぁ。
住んでいた団地の公園でおじさんに会った。
ゴールデンレトリバーを連れていた。
犬が可愛くて、家に来たらもっと犬と遊べるよ、みたいなことを確か言われて、家に着いていったら、性被害にあった。
お母さんには言えなかった。
途中で、危ないと思って逃げた。
仲良くなったお友達の家に泊まりに行った。
夜中まで九九を練習して、言えないとお尻を叩かれた。九九は、言えるようになった。小学校ではそれが役に立った。笑
一緒に万引きをした。
良くないことだと分かってはいた。
お母さんから貰った千円、全部クレーンゲームに使われた。本当は嫌だった。
その子の親から、ネイルのちょっと高いおもちゃを買ってもらった。
その子の親は、刑務所に入った。
その子は、小学校低学年なのに足の爪にネイルをしていて、ボロボロだった。
お母さんは、爪が息を出来なくなるんだよって言ってた。
お母さんは、ある男の人と縁があった。
その人のことをお母さんは嫌っていたけど、一緒にいた。お金絡みだったのかな。
それだけではないかもしれない。
その人は、太っていて、人を雑に扱う人だった。
その人のことが、嫌だった。
その人が来ると、お母さんはその人と一緒にいた。お母さんはその時どういう気持ちだったのかな。
私はその人のことは嫌いな気持ちが大きかった。
好きとは全く思ってなかったと思う。
その人に足を掴まれて逆さ釣りにされた。
ピアノを教えてくれた。
私が好きな本を持っていったら、面白いと言ってくれた。
焼肉を食べさせてくれた。お寿司を食べさせてくれた。
よく笑ってた気がするな。
でも太ってるのは嫌だった。ビール腹だった。
私の前でお母さんとしようとしてた。
私がいる家でお母さんとしてた。
私は悪くなかった。
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