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教えることよりも学び合うこと- 谷口祐人

学び合いのダイナミズム

いつからだろうか、学びが学校に囚われるようになったのは。
Schoolの語源である「スコレー」は、古代ギリシア語で「暇」を意味する言葉でした。暇という言葉は多少ニュアンスがずれるので、「ゆとりのある時間」とでも表現する方が適切かもしれません。人々は「ゆとりのある時間」でさまざまなことについて話し合い、学び合っていたのです。日常生活で疑問に思ったこと、世界に溢れる不思議、生きるということはどのようなことなのか、どのような社会のあり方が理想なのか。こうした取り留めもないテーマについて話し合うことが、「ゆとりのある時間」の過ごし方だったのです。
中世ヨーロッパで誕生した大学もそのような学び合いの文化から生まれてきました。同じような関心を持つ人々が、学習したいテーマに合わせて教授を招聘する。そして教授を含めて学び合い、議論を交わしながら一つのテーマを探究する。そして、探求する過程でその幅は広がり、新たな教授を招聘する。このようなダイナミックな過程で人々は学びを深めていったのです。実際に、人々は教授を探し求めてヨーロッパ中を移動していました。つまり、大学は移動する学び舎だったのです。
日本でも、江戸時代の学び(読書会)はリアルで会って、同じ本を皆で読むという会読というスタイルが一般的でした。古典を声に出してみんなで読む。そして、互いに学び合う。こうして、人々は共同体意識も育んでいったのです。黙々と一人で教科書を読むというスタイル=黙読は、人類の長い歴史においても、ここ100年ほどの実績しかありません。私たちにとって一般的な勉強のイメージは机に座って黙々と問題集を解くといったものではないでしょうか。そうしたスタイルは実は歴史的には一般的ではないのです。

近代的学校教育

わたしたちの歴史はこのような学び合いから紡がれてきたものです。19世紀に国民国家が中心的な存在になると、国家が主導して学校を次々に建設していきました。標準化されたカリキュラムを用意し、そのカリキュラムを効率的に消化できた人々はエリートとして選抜され、国家の要職についていきました。もちろん、そのような人々は同じようなシステムを再生産していくことになります。つまり、学校は学び合いの場である以上に、エリートを選抜するための機関という側面が強くなっていったのです。日本では、学校ヒエラルキーも強化されていきました(東大を頂点とする大学ヒエラルキー、灘や筑駒を頂点とする高校ヒエラルキーなど)。
いい学校へいくために、膨大な知識を効率的に覚えること、つまりクイズ的な知識の競争が起こるようになりました。有名講師に効果的に受験勉強を教えてもらうことがこんなにももてはやされるのも日本独自の需要なのです。教師や講師に求められるのは、おもしろく教えることであり、そのため効果的に教えるためのメソッドも無数に開発されました。こんなにも参考書が本屋さんの本棚に置いてある国はほとんどないでしょう。
いかに教えるか、いかに覚えるかを追い求めるだけでは学びのダイナミズムはどんどん失われていきます。

Loohcsの目指す教育

Loohcsでは、教えることよりも学び合うことに価値を置いています。もちろん、教員の方が学生よりも相対的に知識をもっているので、全く教えないわけではありません。しかし、学生も教職員も互いに学び合い、互いに「わかった!」という感覚を共有することの方が圧倒的に学びを深めることができます。このような、学び合いの空間を豊かにしていくことがLoohcs高等学院の使命だと考えています。そして、それは決して学校だけに囚われるものではありません。渋谷という街で学び合う、些細な友人らとの雑談の中から学び合う、時には東京を飛び出て異なる環境で学び合う。このような学び合いの過程で知識は身に染み込んでいくと同時に、共通の財産になっていきます。知識はマウントを取る道具ではなく、私たちが共同で暮らす世界を美しいものにしていくためのものなのです。
Loohcs高等学院は、このような学び合いの空間を育み、豊かなものにしていくことを理念として掲げています。そして、Loohcs高等学院は「納得できる人生を歩み、世界をより美しいものへと紡いでいける」人材を育てていきたいと考えています。


Loohcs高等学院のNoteでは、Loohcs高等学院が考えている教育理念の紹介、教職員や学生たちが日頃考えていることや取り組んでいること、教育や学習に関するこぼれ話、実際本校で取り組んでいる事例の紹介などを扱っていければと思っています。
1ー2週間に一度の頻度で更新していきますので、ぜひフォローしてみてください。次回からは、学生たちによる教職員説明とLoohcs高等学院の教職員の思いについて発信していきたいと思います。

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