出身国:ドイツ
生年月日:2005年
使用機材:RC-505,RC-505MkⅡ
サブデバイス: Launchpad pro mk3,HX EFFECTS
戦績:🥇5v5 Loopstation League season1
🥈5v5 Loopstation League season2
🥈Upgrade battle
GBB21 wildcard 20th
KBB21 wildcard 13th

おそらく彼の始まりはドラムンベースではなかったのだろう
遡る限り彼は2020年の2月におぼつかない手つきでループを触っており
それは決して現在の彼のスタイルの源流と言えるものではないように思う
美しく、切なさを感じるようなメロディやコード
そこに響く少し幼い彼自身の声
Antrixはそこまで歌のうまいルーパーではない
源流は見られないと言ったが、
複雑なメロディラインは多用せず、ドロップはサウンドで……というスタイルは一貫している

2020年の3月、Antrixはその前年にドイツチャンピオンとなったFRIIDONと、北ドイツ大会でバトルを行っている
随分な先輩との対決だ
同年10月に彼はBeatbox Germanyからシャウトアウトを出す機会を得ているが
素晴らしい！まぁFRIIDONとのバトルはそりゃ厳しいけど……といったコメントも目立った

好評だったBeatbox Germanyへのshoutout

しかしこの頃から、彼の音楽は研ぎ澄まされてゆく
それまでのスタイルから、鮮やかでテキパキとした楽曲が増えた印象だ
上手く贅肉を削ぎ落とし、リスナーが聴きたいものを、美味しいところだけ提供してくれるようになった
2020年の末にセカンドデバイス"HX EFFECTS"を導入したことも彼のスタイルを変えた要因かもしれない

discordバトルや5v5バトルを経て、彼はメキメキと力をつけていった
GBBのwildcardなど、筆者がAntrixに惹かれたのもこの頃だ

20位となったGBB21のwildcard

少し話は逸れるが、Antrixのライブ配信をご覧になったことがあるだろうか？
彼は交友関係が広く、同じドイツのSYJOやKAOS、FrostyやM-ageとwildcardの分析を配信で行うことがある
各wildcardをひとつずつ見ては順位を話し合ってつけていく、といったごく普通の配信なのだが
彼らは何故かwildcardを見る前にルーレットを回し、罰ゲーム(なんの罰かは不明)として

腕立て伏せをしたりチリソースを飲んだり洗濯バサミを顔に大量につけたりしている

繊細で美しいあんたの楽曲どこいったんや

うーん16歳
まぁそれはそれとして
口下手なところはあるが分析はいたく真面目で
また海外リスナーに対しても礼儀正しく、落ち着いて意見を求める姿には好感が持てる
たまに腹筋直後で息切れてるけど

話を戻そう
2021年12月、彼はLoop Insiderの主催する
Upgrade Battleにwildcardを出した
HX EFFECTS使いだった彼が、ワンデバイスという縛りのバトルにあえて挑戦したのだ
そして彼は自身の強さをまた証明した
計算されたサウンドデザイン、
3分以内と短い時間で纏められた構成
今までとはテイストが異なりながらも魅力的な彼の動画は
かつて戦ったFRIIDONをして
｢最もバトルしたい相手の1人｣と言わしめた
彼はいつの間にか、ドイツを代表する若手ルーパーとなっていた
このバトルで彼はVice Championを獲得している
もちろんワンデバイスだ

Upgrade Battleでのwildcard

2022年3月には、3年振りに開催されるドイツ大会への切符を手に入れるべく東ドイツ予選のwildcardを出しており
SYJO、KAOSとおなじみのメンバーでのバトルが予想されている

最後に、筆者にとって忘れえぬ瞬間を共有しておこうと思う

5v5 Loopstation Leagueという大会がある
これは5人のルーパーでチームを組み、
キャプテンの采配で5戦(キャプテン同士のバトルは必須)を行うチーム勝ち抜き戦のバトルだ
(余談だが、この時Antrixは5人組を決めるドラフトにてやたらと日本人を指名し、5人中3人が日本人というチームを作りあげた)

バトルの局面は1/4Final、お互い1歩も譲らぬ同点での最終バトル
対戦カードはBonzo vs Antrix

1R目はAntrix
彼は期待にそぐわぬ楽曲を披露した
美しく、かつエモーショナルな彼らしい作品であったと言えよう
しかし2R目のBonzo
｢Antrix、バトルしようぜwチルいトラックすんなってw｣
続いて披露されたBonzoのトラックはAntrixを挑発するようなD'n'B
トラック中もプレイ後も、バトルしようぜとしきりに煽る
黙ってBonzoの言葉を聞き、ゆっくりと柔軟を始めた彼を見て期待するなと言う方が無理な話だろう
ホストのSonikまでバトルしろと発言する中、何も発言せずサイレント録音から始まった彼のトラックは……

ぜひ以下のリンクから見て欲しい
ドロップ前になってようやく｢わかったBonzo、バトルしようか｣と返した後のなんと鮮やかなことか
Antrixはすげーのだ

まだまだ16歳、彼の今後が楽しみで仕方ない
スケボーにハマらないで欲しいと祈るばかりである