前略

お元気ですか。初めまして。
初めましてよりもお元気ですかが先に来るなんてなんだかおかしいですね。初めまして。こんにちは。みなもとはなえっていいます。あなたに手紙を書くのは初めてですね。なんだかちょっと緊張しています。

普段はどんなことしていますか?私は平日は仕事です。土日も、たまに、します。だけど基本的には休みです。友達はほとんどいないといって差し支えないのですけど、気の合う人が数人、遠くにも、数人、いるので、連休の時なんかは遊びに行きます。遠くへ。温泉が、好きです。目下の目標は、日本三大名湯に入ることです。温泉に入ると、嘘かと思うかもしれないけれど、お肌の、水はじきがとってもよくなるんですよ。それだけで嬉しくなりますから、温泉は大事ですよ。

好き、と言われて、何が思い浮かびますか?私は、そうだなあ、スターバックスのほうじ茶ティーラテが思い浮かびました。それと、美しい写真。悲しいイラスト。寂しい言葉。Vネックのチルデンニットが好きですね。デニム生地のものも好きです。朝より夕方が好きです。朝なら、朝焼けが美しい時間。月並みですが、美しいと思えるものが好きです。友達の泣き顔とか、何気ない指先も。
あなたの好きなもの、何ですか。美しいと思うもの、ありますか。

反対に、嫌いなもの、ありますか?私が好きだと言ったものが嫌いだったとしても、遠慮しないでいってくださいね。私も、遠慮なく言いますから。
嫌いなもの、ですね、夜の大きな音は嫌いです。夜の呼び鈴も。あとは火曜日と水曜日と日曜日。投げやりな言葉も嫌いです。不誠実なものや不真面目なものも嫌いです。春と夏は、嫌いというか、苦手です。誰かを顧みない楽しさも苦手です。眩しさ、とかも。美しいものは好きですが、時としてそれは眩しく、苦手にも思います。近づけないからこそ好きなもの、ゆえに、嫌いになってしまうものも、あると思うのだけれど、あなたはどうですか?

今日、仕事の帰り道に夜空を見上げたら、月がとっても鋭利に尖っていました。そして、こちらに、近かった。こんな日もあるんですね。車から降りて見ると、いつもは見つけられない北斗七星がすぐに見つかりました。なんだかそれが悲しくて、私、星を見るのをやめました。久しぶりに夜空を見たのに、すぐに、やめました。
冬の夜空と違って、春になると、夜空はどこか軽薄な色になります。私はそれが悲しい。夜にはどこまでも星を浮かばせる暗闇でいて欲しいと思うのです。

大人になっていき、仕事をする中で、感情を言葉にすることとか、景色から感情を与えられるその方法を忘れてしまったように思います。あなたは、どうですか?子どものころや思春期にようにみずみずしい感性をもったままですか?
私の言葉は、私の感性はいつのまにか変容してしまったみたいです。悲しいのに、もう、あんまり、悲しくないのです。それが、悲しい。

昔は、自分が特別だと思っていました。自分だけの言葉が、景色が、物語が、あるのだと思っていたんですよ。笑ってくれてかまいません。だけど、そんなことなんてあるわけないって知りました。わかっていたことに気づいただけかもしれません。
だけど私、歩くのが億劫になってしまいました。私が歩かなくても、なんにも、問題がないんですから。私以外は。
ごめんなさい、なんだかよくわからない話になってしまいました。あなたが笑ってくれていたらいいのですけど。なんてことはない、ただの夢みたいなものです。こんなことばっかり考えて生きてるわけでも仕事をしてるわけでもないですよ。たまの、夢みたいに、思い出す、だけです。
そういうこと、ありませんか?

長々と、私のことばかり書いてしまってごめんなさい。だけど、手紙ってそういうものですよね。開き直っちゃおう。
ゆっくりでいいので、あなたのこと、教えてくださいね。何枚でも一行でも、待っていますから。

明日からまた、あたたかくなるみたいだから、天気がよれけばピクニックに行きましょう。はちみつトースト作っていきます。

それでは、また。