何度でも

友達を車に乗せて、しばらく他愛もない話をしていたらふと、彼女がカーステレオから流れてくる歌を聞いて「あ、この歌聞いたことある」と言った。歌手の名前を教えると「知らない」と言って、無表情で考えていたけれど、はっとして笑って「これ、このあいだはなえちゃんがうたってた歌だね。覚えてる」と言ってくれた。自分の好きな歌手の歌を好きだといってもらえるよりも、嬉しかったので、ほっとする。私にはまだ、当たり前でも嬉しいと思えることがあるのだ。

既知であっても、何度経験しても、嬉しいと思えることがある。そういうことに出会ったとき、ほっとする。私もまだ、捨てたもんじゃないなと思う。まだまだ、知りたい。何度でも、嬉しいこと。悲しいこと。私がまだ、駄目じゃないんだっていうこと。