ドリームハイツ(番外)
【前回までのあらすじ】
不注意、あるいは見間違い。かつてはそのように処理されてきた事柄が、すべて可能である世界。
数字の1を7と読み間違えた結果、私の出した見積もり金額は正しくなかったとされた。
しかし7であることもまた正しいとすることがいまの私には可能である。
かつて神は自らがもたらした秩序によって、不自由に苦しめられた。人間だけが自由であることを許されていて、神はいつでも正しくなくてはならず、不注意や見間違いは人間だけがもつ特権とされていた。
しかしあたらしい秩序が採用されたいま、神は自由である権利を取り戻した。
不注意による間違いを行う神によってかたちづくられた世界では、数字が1であった事実と7であった事実が互いに存在しあっている。
だから私は1ではなく7が書かれた見積もりを提出することが可能であり、それは神の自由を証明することでもある。
もしも客先で「この見積もりは間違っている」などと言われたのなら、こう言い返してやれば良い。
「おまえの神は古い。おまえは古い世界に住んでいるのだこのおたんこなす」
すると先方が怒って契約を破棄しようとするので、私は神に救いを求め祈っている。
自由って素晴らしい。
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