#忘れられないあの試合 を語る
1. はじめに
本稿では下記の企画への参加を通じて、今のロッテが強くなった理由の一端に迫ってみます。
本来はハッピーエンドな試合を取り上げるべき企画なのでしょうが、今回はそうではない試合にしました。
狙いは、あえて少し前の残念な試合を振り返ることで、今のロッテはまともになってきているんだ、と改めて実感することです。
結論を言ってしまうとリリーフ運用です。
今回取り上げる試合はこちら。
当然、忘れられないのは福浦の2000本安打ではなく、その感動がぶち壊しになった9回表です。このイニングを起点に話を進めます。
2. 2018年9月22日西武戦
あまりご存じない方の為へ超簡単に概要をお話しすると。
同点の8回裏に福浦が2000本安打を達成、さらにこれがきっかけで1点勝ち越し。しかし9回表、2アウトあと1人で山川に3ランを打たれ逆転負け。西武はマジック7。ロッテとしてはレジェンドの大記録達成に水を差す痛い負け。
ヘッダー画像の通り打たれたのは内竜也。被弾したこの場面がトラウマとして記憶に残っているロッテファンも多いでしょうけど、実はこの時背負っていたランナー2人を出したのは、松永昂大でした。
この回のイニング開始~3ラン被弾までの流れは以下の通りです。
つまり左右の相性による途中交代ありきで、回始めに松永、途中から内の継投策をとったと言えそう。さて、ここでポイント1。
この年は基本的にクローザーの内にイニング頭から行かせていた。松永はシーズンでセーブ数0。勝負事のあるあるですが、普段やっていないことはやるもんじゃない。ではなぜこんな継投をやったのか。ここでこの月の2人の登板実績を振り返ります。
【表の見方】
・(例) 1点リード(失敗)⇒1点リードの場面で登板したが、守れなかった
・9/22 松永に関しては、マウンドを降りた時点では失点はしていなかったので(失敗?)としました。
さて、この表を見て思うこととして、
先ほどの『なぜセーブシチュで慣れない継投をしようとしたか』は、(1),(2)より2人に信用が置けなかったから負担を分散させるのを最善と考えたという考察ができそう。しかし真の背景は違うと思っている。それを説明する為に上記(3)に延長した話。
実際には内の起用法は全然ホワイトではなかった。この年の運用でもっともひどかった6月の実績を松永含め紹介します。
表より、
・交流戦を6勝2敗と無双中の期間。
・接戦が多く、内と松永に過負荷。
・結果として、移動日は挟むものの内は8連投、松永も5連投。
内も松永も9月に調子を落とした背景として、それまでの疲労蓄積が祟った可能性は十分あると思います。
現に、こんな記載もある。
限界だったんです内の肘は。そしてその後、一軍復帰を果たすことなく2年後に引退。
ということで『なぜセーブシチュで慣れない継投をしようとしたか』の本当の背景は、すでに内の肘が万全の状態ではないことを首脳陣が薄々気づいていたので、行けるところまで松永に頑張ってもらった。のが実情なんだろうと思う。
ということで、ポイント2へのアンサーとしてポイント3。
『一定期間酷使したから同じだけの期間休ませてれば問題ない』みたいに選手を機械のように扱う発想も、『年間休日としては○○○日だから問題ない』みたいな隠れブラック企業的発想もいただけない。
例の3ランを打たれた1球の、捕手が要求した配球と実際のコースを見ていただきたい。
横方向のスライダーだった。
生え抜きのレジェンドが2000本安打を達成して絶対に勝ちたい試合。あと1人で勝利。ましてや投げるのはチーム1のクローザー。簡単な失投はしないはず。だがこの結果球が全てを物語っているように思えてくる。
松永だって。今、肘も肩も悲鳴上げてて、ね。
3. あの試合(あのシーズン)から何を学んだのか
今この試合を振り返ると、リリーフの酷使っぷりに唖然としたロッテファンは自分だけではないはずと信じたい。つまりそれだけこの翌年(2019年)から入団した吉井ピッチングコーチの運用が浸透したと言えるのでは。
吉井コーチの有能さはかねてから知られていたが、2020年シーズンに3連投&週4登板禁止を徹底したことでさらに広く認知されるようになった。
2項で示した6月の実績表にしても、内が登板したのはいずれもゲームの重要局面であり、登板は致し方なしとも思うかもしれない。でももし吉井コーチが決定権をもっていたとしたら、内の8連投はなかったはず。2021年シーズン、益田がベンチ入りしながら9回のマウンドを田中靖や国吉に託したこともあったように。
また、初めからイニング途中の交代ありきでリリーフを出す運用もここ1~2年のロッテはほとんどしていない。これもリリーフ陣への過負荷削減の策の1つと言えそう。
話を戻す。ロッテはこの敗戦で8連敗。その後さらに6連敗も記録。それだけでなくこのままホームで勝つことはなく、パ・リーグワーストを更新する14連敗のまま閉幕。
このnoteの結論として主張したいのは、シーズン中における大連敗はリリーフ運用がしっかりしていれば大方防げるはずだということです。(もちろん弱い理由って貧打とか他にも色々あるんですけど)
大連敗の線引きをどこにするかは議論がありそうですが、ひとまず5連敗とカウントしてみよう。以下の表が吉井運用の有能さを顕著に表す一例だと思います。
このデータで言いたいことは、吉井さんが入った2019年以降、大連敗の数が激減していること、さらにそれがシーズン終盤に起こることも無くなった、ということです。
自力に欠ける球団や短絡的な采配に走る首脳陣体制では、目先の勝利に目がくらんで選手に無理を強いりがち。でもそのツケは必ずどこかで回ってくる。
今回取り上げた2018年9月22日の試合は、まさにその縮図であり、またその後のロッテが躍進軌道に乗った理由を語る反面教師的な悲劇だったと思うのです。
4. さいごに
本noteで言いたいのは、フルシーズンを見越した投手運用の重要さです。短期決戦ならチームの自力がものをいうとは思いますが、全部で140試合以上あるペナントレースでは、主力選手の酷使を極力控え、場合によっては目の前の試合を捨てる覚悟も致し方なしだと考えます。それを証明したのは近年のロッテだけでなく、2021年シーズンを制したヤクルトとオリックスを見ていても顕著。
私がこの感性をリアルタイムで感じさせられたルーツとも言える日を、今回 #忘れられないあの試合 として取り上げさせてもらいました。
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