「I've lived as a man & a woman -- here's what I learned | Paula Stone Williams | TEDxMileHigh」文字起こし

I've lived as a man & a woman -- here's what I learned(私は男と女として生きてきました-私が学んだことはここにあります) | Paula Stone Williams | TEDxMileHigh

トランス女性であるポーラが、自身の経験や学びをTEDを通じてシェアして下さっていたので、これを改めて日本語で文字起こししたいと考え、この記事を作りました。

日本語字幕を作成して下さった方に心からありがとうと言いたいです。

ポーラの生い立ち

私はキリスト教のある大きなNPOのCEOでした。全国放送のテレビ番組の司会者でした。大きな教会で説教もしていました。私は良い教育を受け、成功を掴んだアメリカ人の白人男性でした。

詩人で神秘主義者のトマス・マートンは言いました。「辛いのは成功の梯子の頂点まで上り詰めて、そこに辿り着いた時に、梯子が誤った壁にかかっていたと知ることだ」

トランスジェンダーと気付いた時期と、アメリカにおけるトランスジェンダーの扱い

3、4歳の頃から私は自分がトランスジェンダーだと知っていました。純粋だった私はいつか性別を選ぶ日が来ると思っていました。
ジェンダーの妖精がやってきて「ついにその時が来たよ!」と言いに来ると。

しかし残念ながらジェンダーの妖精は訪れませんでした。私はただ自分の人生を歩みました。
男子であることは嫌いではありませんでした。ただ自分がそうではないと知っていただけです。

大学に行き結婚して子供ができキャリアを積みました。しかし本当の自分になりたいという心の声は火災報知器のように敏感です。

そして決断する時がやってきました。トランスジェンダーであることをカミングアウトして全ての職を失いました。悪い評価を受けたことは一度もないのに全ての職を失ったのです。

21の州ではトランスジェンダーを理由に解雇することはできません。しかし50の州全てでトランスジェンダーで宗教的な会社に勤めていたら解雇されても法に触れません。
知って良かったね!

トランスジェンダーの女性として生きるということ

トランスジェンダーの女性として生きることは容易ではありません。

たまに聞かれることがあります。
「自分は100%女性だと思う?」

私は言います。
「もしトランスジェンダーの人と話したことがあれば、それはトランスジェンダーのうちの一人と話しただけであり、私は他の人の意見は話せない」

私は自分は100%、トランスジェンダーの女性だと感じます。

シスジェンダーの女性はきっと私が知る由もないことを知っているでしょう。とはいえ、私は女性であることの意味について学ぶと同時に、私の過去の性別についても学んでいます。

私は両方の性別で人生を歩んだことがあるという特殊な経験をしています。皆さんにお伝えします。その違いは巨大です。

小さいものからお伝えしましょう。例えば女性のジーンズのポケット。携帯さえ入れられません。ペーパークリップなら入るかも。

もしくは婦人服のサイズ番号に何か意味があるのでしょうか?
00とは何でしょう?

女性の皆さんは考えたことがないと思いますが、男性として生きていたら人生で一度も衣類をトイレに誤って落っことしてしまうという心配をすることがないと知っていましたか?
長いセーターやベルトや何であっても、そんな心配が頭をよぎることすらないのです。

私は以前に比べ髪を切る回数が半分に減りましたが、その値段は10倍になりました。
旅行に行くか髪を切りに行くか両方はできません。

どんな場所に行ってもジェンダーの差に遭遇します。
時々、文字通り廊下を歩いているだけで遭遇するのです。私は思います「あれは何だったんだろう?」それは私に痣を残します。私の皮膚は薄くなってきたので、いろんな箇所に痣があります。

性別が変わると日々の暮らしはかなり変化します。見た目の変化よりも全体的に異なります。
物理的な変化というより周囲からの扱われ方が異なります。

私の元妻キャシーに何度言ったかわかりません。

「本当に本当にごめんなさい!」

私は自分が無知であったことを知らなかったんです。
良い教育を受けた白人男性は、周囲の環境が彼に優位にできていると理解することはできません。理解することはできないのです。何故ならそれしか知らないから。そして今後も知ることはないでしょう。

女性がその意味を完全に理解することもまたできません。女性として生きる人生が彼女が知っている全てだから。
彼女は男性の2倍働いているのに半分の報酬だとうすうす知っています。
しかし彼女は知らないのです。廊下をまたいだ先のオフィスで働くスーツを着た男と比べて彼女がどれくらい辛い思いをしているか私は知っています。私がその男だったから。

私は良い心を持った男の一人だと思っていました。女性に優しく、男女平等主義の。

飛行機でのエピソード

ある時初めて女性として飛行機に乗りました。

230万マイル以上アメリカン航空で旅してきました。飛行機のマナーについては熟知しています。

アメリカン航空は私の性別の変化にうまく対応してくれました。しかし乗客はそうではなかったのです。

ポーラとして初めて乗った飛行機はデンバー発シャーロット行きでした。
飛行機に乗ったとき私の座席に荷物が置かれていました。その荷物を持ち上げて私の荷物を置くとある男が言いました。

「それは俺のだ」

私は言いました。

「OKでもこれは私の座席ですよ。自分の座席が見つかるまで荷物を少し持ってあげましょう。見つかったら渡します」

彼は言いました。

「ご婦人。それは俺の座席だ」

私は言いました。

「違います。これは私の座席です。1D1D。でもご自分の座席が見つかるまで喜んで荷物を預かりますよ」

彼は言いました。

「何を言えばいいんだ?これは俺の席だ!」

私は言いました。

「えーっと、違います」

その時私の後ろで並んでいた男が言いました。

「ご婦人、そのつまらない口論は別の所でやってくれないかな? 僕が飛行機に乗れないから」

私は本当に驚きました!

男性だった時はそんな風に扱われたことはありませんでした。
私は言ったでしょう。

「それは私の席だと思います」

きっと例の男はすぐに搭乗券を確認して言ったでしょう。

「ああごめんなさい」

私は知っています。いつもそうだったから!
CAは私たちの搭乗券を確認して彼女は男に言いました。

「あなたは1Cですよ。彼女が1Dです」

私が彼の荷物を1Cに置いたら、彼は一言も言いませんでした。

もちろん私の隣の座席1Fに座った人がだれか分かりますね。「そのつまらない口論は別のところでやってくれないかな?」の彼です。

アメリカン航空で働く友人のカレンが書類をパイロットに渡すために飛行機に立ち寄りました。
彼女は去ってさよならと手を振りました。私がシャーロットについた時、彼女から電話がありました。

彼女は言いました。

「ポーラ何があったの?あなたの顔真っ青だったわよ!」

私が話すと彼女は言いました。

「女性の世界へようこそ!」

男性の特権は失われ、身体は変化する

きっと私は性転換をした時に一緒に持ってきた男性の特権を忘れるほど長生きはしないでしょう。
何十年も男性として生きてきました。自分の持つ特権が減ることに気づかないというわけではないのです。

私が観察した他のことについてお話しましょう。

明らかに私が女性になった時から私は頭が悪くなったようです。
テストステロンが減ってエストロゲンが増えたおかげで、一人の大人の人間としてうまく機能するのに必要な脳細胞の数が減ったのかもしれません。

もしくは私は以前と同じ頭の良さを保っているからですが、今はよくマンスプレイングされます。

自転車屋でのエピソード

デンバーの地元の自転車屋で若い夏期従業員は言いました。

「いらっしゃいませ」

私は言いました。

「古いゲイリー・フィッシャーのマウンテンバイクで、フレームがしなって後方のブレーキに当たるようなことはありませんか?」

彼は言いました。

「ディスクブレーキは定期的な調整が必要ですよ」

私は言いました。

「それは知っています。実際に、私自身で定期的にブレーキを調整しています」

彼は言いました。

「それならローターが曲がっているのでは」

私は言いました。

「ローターは曲がっていません。曲がっていたら分かります」

彼はわざとらしくへりくだって言いました。

「では何をお望みですか?」

私は言いました。

「私の質問に答えて下さい」

その時、お店のマネージャーのカイルが来ました。彼はとても優しい人です。
彼は言いました。

「あなたは多分正しいと思います。質問させて下さい。上り坂で強くブレーキを引いた時、後方のブレーキのみから音がしますか?」

私は言いました。

「はいその通りです」

彼は言いました。

「ではフレームが金属疲労していますね」

私はカイルの足元にひざまずいて神の加護を祈りたいくらいでした。私の話を真剣に聞いてくれる人がいる!

今は頻繁にこんなことが起きます。
答えを得るまでに3回も4回もやり取りをする必要があります。これは深い問題もはらんでいて、他人に自分の言っていることが正しくないように扱われ続けると、自分の言っていることが本当に正しいのかどうか疑ってしまうようになるんです。
ですよね?

女性が社会から受ける抑圧

女性が自分の意見に自身がない傾向にある理由が分かりました。
男性ばかりの会議で、女性が自分の意見が正しいのを知りながら謝っているのを見たことがありませんか?

彼女は言います。

「ごめんなさい。でも会計が合いません」

自分が正しいのに誤る必要はありません。

女性は男性に何を求めるのか

この性別になってまだ日が浅いので、私は友人のジェンに聞きました。

「女性は男性に何を求めているの?」

彼女は言いました。

「私達のユニークさに敬意を示し、私達は男性に比べ劣っていない、弱くない、ただ違うだけだと理解してくれること、私達の能力はより広範囲で重要なものだと分かってくれること」

もちろん女性に敬意を示す男性はたくさんいます。私のよき友で同僚の牧師だったマークのように。

マークは私の良さをいつも最大限に引き出してくれる人です。
彼は私がリードするのを嬉しそうに見ていました。
マークのような女性に敬意を示し、女性の立場を向上させたいと願う男性がたくさん必要です。その道のりでは更に多くの違いに遭遇するでしょう。

最後に

ただ、最後に皆さんにこう伝えさせてください。

女性の皆さんへ心からの感謝の気持ちを伝えます。

しばしば自分は侵入者であると感じます。遅くに真剣に女性として生きている皆さんの世界に入りました。
しかし皆さんは私に親切で寛大です。皆さんは皆さんが思っている以上に能力があると知って欲しいです。
皆さんが思っている以上に皆さんは強いです。
一人前の人間であることの最良の部分を反映しています。

そして男性の皆さん。きっと今少し居心地が悪く感じておられるでしょうね。

私には分かります。自分に特権があるなんて思ったこともありませんでした。
でもあったんです。皆さんにも特権があります。

皆さんは何ができるでしょうか。私達を信じてください。
男女は平等になったかもしれないと私達が言っても、まだ私達は平等ではないのです。今までもずっと公平な土俵ではありませんでした。
私達を平等なところまで持ち上げこの問題を解決する力となってください。皆さんだけにその力があります。

そして全ての皆さんに。私がいつも考えているのは誰だと思いますか?

私の褐色の肌をした娘のことを、いつも考えています。
そして褐色の肌をした義理の娘について、私が何に困っているか彼女たちは知っているでしょうか? 自分ではない他人の経験についてどれだけ知っていますか? 

女性として生きるのもトランスジェンダーの女性として生きるのも大変です。

男だった時は知りませんでした。
再度性転換を行うかと聞かれたら、もちろん行います。
本当の自分になりたいという自分の声は大切で聖なる大義のための願いです。

45年もの間、私の父はキリスト教原理主義の牧師でした。私の母は更に保守的な人でした。

トランスジェンダーであることをカミングアウトした際、彼らは私を拒絶し、もう二度と話せないと言いました。
1月に思い切って父の誕生日に電話しました。30分程度話しました。
そして1か月後、実家を訪問してよいか尋ねたら彼らはイエスと答えてくれました。
春には嬉しいことに、償いとなる3時間の訪問をしました。
その後2度彼らに会いました。最初に訪問した日会話が終わる前に、私の父はたくさんの大切な言葉をくれました。

私が家に帰ろうとした時、彼は言いました。

「ポーラ」

彼は私をポーラと呼んでくれました。

彼は言いました。

「ポーラ。私には理解できないが、理解する努力をしたいんだ」

私の父はもう93歳です。
それでも努力したいと言ってくれました。これ以上何を求められるでしょう。私は彼をとても強く抱きしめました。

一人の男が彼の力を捨てようとしています。
自分が子供を愛していると知っているからです。

彼はどんなことをしても努力したいと言いました。他の誰かの人生に敬意を示すために。

ありがとうございます。

今まで頂いたサポート、嬉しすぎてまだ使えてません(笑) note記事を書く資料や外食レポに使えたらなと思っていますが、実際どう使うかは思案中です←