ずっと通っている美容室に昔、期間限定の派遣の女性が来ていた。彼女はとても謙虚で腕は確かだった。私は職人ではないので細かい技術がどうという事は分からないけれど髪に触れるタイミングとかシャンプー台へ誘う距離感や立ち居振る舞いなど、細部に配慮していたと感じた。簡単に言えば心地が良い。カットは別のいつもの担当の方だったけれど混雑した店内で私と彼女は世間話に花を咲かせた。彼女は美容師歴が長く以前の店舗ではたくさんの顧客様がいらっしゃったようで接客が大好きだと言った。この美容室で働いて間がないにせよ、ここでもすぐに顧客様ができるだろうなと思ったし私もよろしくお願いしますといったところだった。

そろそろカットだから担当交代だなと思い、彼女に「雰囲気も素敵ですし、とても心地のいい時間をありがとうございます。〇〇さんの応対と技術に惚れ込む方が多いのも当然ですね。頑張ってください」みたいな事を言った。

それから少し間が空いて半年ぶりくらいに美容室に訪れたら彼女はいなかった。派遣だし次でも頑張ってるかなーなんて思っていたら帰り際、オーナーに呼ばれた。

「実は以前来てた派遣の〇〇がかよさんにかけてもらった言葉で救われたって泣きながら喜んでいたんです。あの時の彼女は色々辛い事があってかなり落ち込んでいたんですよ。次に会ったらお礼がしたいと言っていたんですが派遣の期間が切れてしまい今僕から預かっていたものをお渡しします。こちらとしても落ち込んでいた彼女の励ましになってもらえて本当に感謝しています。」とヘアケア剤をいただいた。

帰り道、心がぽかぽかして泣きそうだった。落ち込んでいただなんてそんな風に見えなかったけれど、誰かのためになってたら嬉しい。私が放った言葉がきっかけで人生のターニングポイントになってたりしたらそれ以上に嬉しいことはないと思う。

人付き合いってこういうことだろうなと深く思う。

そんな風に心のメモリとして残りそうな（表現がダサい）事が最近あって。

ちょうど半年くらい前。

保育所の玄関でお母さんを困らせるのが、子どもが離れたくない嫌だ嫌だと大泣きする姿。やっぱり強いこだわりや周りの環境に敏感な子どもに多いかなと感じる。息子も約３年は泣き続けたので（長い）朝からHPが半減して通勤することになる気持ちは痛いほど分かる。ずっと息子の特性を専門機関の方々を巻き込んで観察して理解してきたのでHPの減少も穏やかに、回復もスピーディになったし本当に感謝している。何より息子への接し方はいろんな対人関係にも応用できるものが多く自分の成長を一番大きく感じたりもする。

育児に関しては私がやってきた事が良かったからと人に勧めることはない。

子どもを預けた後、保育所の玄関口で先ほどまで泣きじゃくっていたお子さんのお母さんに遭遇したので話しかけた。

「〇〇くん、お母さんが大好きなんですね。あんなに泣いてね☺️良く成長してますよね」

どきっとした。お母さんの目を見ると涙が溜まっている。

「そう言ってもらえるとすごく報われます。朝が本当に辛くて。先生にも色々指摘されている事があって…」

わかる。

お母さんはやはりまだまだ家事育児仕事ととにかくタスクが多い。そこには感情も伴う。うまく自分の感情と向き合いながら外野とのコミュニケーションだって完成させなければならない。疲労が漂う中での円滑なコミュニケーションはうまくいかないこともある。自分が我慢すれば問題が浮き彫りにならず、時が経って過ぎ去るものとして流すことはできるがその場しのぎにしかならない。

私は自分のことを話した。専門の機関へ相談すること、診断ではなく子の特性を言語化してもらうこと、自分の視野が広くなったこと、などなど。お母さんは「そんな相談所があるんですね。ちょっと問い合わせてみます😢」と言ったので「聴くことなら私もできるんで、一緒に育児頑張りましょう」とLINEを渡しておいた。（ナンパです）

それから先日久々にお母さんと保育所で顔を合わした。彼女は私を見つけるなり走り寄り、「来週ついに病院で診てもらうんです！」ととても嬉しそうだった。ここまで来るのに話を聞いてもらえて楽になり、自分なりに子どもへの向き合い方も変わったという。「かよさんにあの時言ってもらえて本当に感謝しています」とお礼を言われた。何もしていないんだけど、と思いながら私もまだまだ子どもと成長できると思うと楽しみなんですよと伝えた。

しつけとか、治すとか、おとなしくとか、そういうことではなくて自分の子どもについてきちんと特性を捉え、いろんな人付き合いを重ねながら存在を理解してもらう、ごく当たり前で深い関わり方を身につけておくことに尽きる。自分の居場所を物理的な場所だけでなく目に見えない心ごと知ってもらう。慣れれば自分はありのままだし、ありのままの他者も受け入れられると感じる。

こちらの優しい世界へようこそ。

少しでもそんなきっかけになれれば嬉しい☺️。