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原油投資ハンドブック : ロールオーバー③

前回「ロールオーバー②」では ETF を念頭にロールオーバーの注意点として「保有数の変化」を解説しましたが、ここでは同様に CFD(*) の場合の注意点を解説してみたいと思います。

(*) CFD は Contract for Difference の略で「差金決済取引」を表します。取引業者に証拠金(担保)を預けて、実際に原資産に投資するのではなく、原資産の価格や指数を参照して買値と売値の差損益部分を決済する金融商品です。売りから入ることも可能。またレバレッジを効かせることで、証拠金の何倍もの取引が出来るため、小さな資金で大きな利益を得る可能性がある一方で、多額の損失が発生するリスクがあります。

ロールオーバーの場面では、ETF では投資した金額を一定に保つ代わりに実質保有する先物の保有数(枚数)を調整しましたが、一方で CFD は保有数を不変とし、ロールオーバーの際にはその都度限月間の価格差を考慮した「調整金(調整額)」を受払します。

では実際に具体例を見てみましょう。CFD で100単位保有し、現時点では原油先物期近(仮に3月限とします)を参照しているとします(つまり3月限を100単位保有しているのと同様)。3月限の価格が $50 だとすると保有する先物の時価は $5,000(=100単位 x $50)です。
そして次の限月である4月限の価格が $51(つまりコンタンゴの状態)だと仮定します。この状況で CFD でロールオーバーを行う場合、実質的に 3月限を100単位売却し、同時に100単位4月限を購入します(ここでは話を単純化するため「売値」「買値」は無視します)。すると売却 / 購入は以下のようになります。

  3月限売却:100単位 x $50 = $5,000
  4月限購入:100単位 x $51 = $5,100

この様に同じ単位数の先物を購入しようとすると代金が不足($100 = $5,100 - $5,000)するので、その分を証拠金(担保)から当該不足分を差し引いて当該オペレーションを行います。この金額($100)が「調整金(調整額)」と呼ばれるもので、ロールオーバーの際、その都度証拠金(担保)が変動するのです。ちなみに原油CFDの場合だと、このロールオーバーが毎月行われます。

一方でバックワーデーションの場合は、その逆で「調整金(調整額)」の受取になります。仮にロールオーバー時の先物価格が 3月限 $50、4月限 $49 で CFD 保有数が100単位だとすると以下の通り。

  3月限売却:100単位 x $50 = $5,000
  4月限購入:100単位 x $49 = $4,900
  調整金(調整額):$100 の受取(=$5,000-$4,900)

つまりコンタンゴの状況下でロールオーバーが起きると調整金(調整額)の支払が発生し、逆にバックワーデーションの場合には調整金(調整額)の受取が発生するのです。

同じ原資産を参照する金融商品(先物、ETF、CFD等)でも、それぞれで特性や注意点が異なるので、事前に良く吟味し理解した上で投資したいものですね😉

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