イカ王は正室のイカに触腕の先を絡めた。
「よいだろう？妻よ。今宵も紅に染めようぞ」
「王よ、あなたは先ほど側室に絡んだばかり。そんなにはお身体にさわりますよ」
「わしは大王イカ。そこらのげそとわしを並べ申すな。この触腕の逞しさはお前が一番存じていよう？さ、近う寄れ」
イカ王は正室にぐるりと腕を回し引き寄せる。
「ほんに王は腹黒い。そうやってメスを手玉にとっては産ませるばかり」
「そういうお前もえんぺらをひくひくとさせ誘うではないか。お前こそスミにおけぬやつじゃ」

イカ王と正室のイカは漏斗から勢い水を吐き、ひと時の快楽に体色を変える。

「ああ、王よ…」
十を数える脚がこわばりを感じる時、天から鮮やかな光が差した。

「あれは…王に心奪われし恍惚の光か」
「妻よお前の肌は美しく輝いているぞ。もっと…」
王と室は絡みながら漁火と言う名の光へ導かれる。

そして光煌めく剣先に曳かれ外界の船上に巻き取られ、たぎる欲情は永遠の美味へと変わっていった。

完410

※えんぺら＝いかの胴先の三角のところをえんぺらと言うらしいです。

イカと言えば　イカ天　
イカ天と言えば　ジッタリン・ジン
で、

ジッタリン・ジン / 夏祭り
ジッタリン・ジン 公式

たらはかにさんの毎週ショートショートの企画、今週の裏お題
「イカ室たぎった」に参加させていただきました。
お子ちゃまは読まないでね。