「なんか足りないね、今年のツリー」
娘が呟いた。

「テッペンがないやん」と俺。
「あ、ほんとや、無くしたかな、まあいいか」

「あかん」俺は厳しく言う。
「ええやん、代わりに雪の結晶をつけてさ」

「オーナメントには意味や飾るルールがあるんや、上に付けるのは星」
「なんで」
「ベツレヘムの星ゆうてな、キリストの降臨を伝え導く重要な星や、だから一番上なんや」

「へぇ～」

「お前の持ってるのはアダムとイブの林檎を意味してるし、そのステッキやベル、柊もみんな意味があるねん」

「へぇ～お父さん、よく知ってるなあ、ちょっと見直したかも」

「ほう、娘にうんちく語かたってルールに厳しいわりに、夫婦のルールは守ったことないよね」妻がぼそっと言う。

「え？夫婦のルールって、お母さん何？」
「あのな、お父さんこの前お母さんに黙って……」

「星、探してきます！」

俺は家を飛び出した。冬の風をきりトナカイよりも速く走る。寒さで鼻水がキラキラと舞う。

メリークリスマス！　俺！

完410（ルビ含めず）

Merry Christmas Mr.Lawrence　　NobuyukiTsujii

たらはかにさんの毎週ショートショートの企画、今週のお題「ルールを知らないオーナメント」に参加させて頂きました。
本日25日のみ旬の話題ですので以降にご賞味の場合お腹を壊しても一切の責任を負いかねます。

来年は圧倒的作品を書いてやる！　皆が絶賛するようなやつや！　ええ、書いてやるとも！……　

追記

去年の暮、クリスマス向けに書いたものです。