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伝説の安心感② 毎週ショートショートnote

「最高の安心感」そう呼ばれる彼は、なぜか満たされない心をいつも抱えていた。

「より良い安心感」と言われた彼女は多くの人に安心を与え、常にその上を目指しているものの、時に現実におびえていた。

そんな「最高」の彼と「より良い」彼女はある日、赤色に変わりそうな横断歩道を挟んで出会った。

「最高」の彼はその名に恥じることの無い結論しか選べなくなっていた。それはここで立ち止まること。

「より良い」彼女はより安全にと彼と同じ結論を選び、偶然にも彼と道を挟んで見つめあうことになった。

信号が青に変わる。

二人はゆっくりと歩を進め、中ほどで相対した。

「僕はいつもこんな風にしか歩けないんだ」

「私は…… 」

「君は?」

「本当はいつも怖がっていただけ」

青信号が点滅を始める。

「僕たちは同じなのかな」

「そうかもしれないね」

「安心感はもういいよ。確かな事は…… 」


信号が赤に変わる。

彼は彼女を抱きしめた。

クラクションが響き、車は二人を避けて走り始める。


完410

なんでもないや (movie ver.) 【君の名は】
上白石 萌音 
上白石萌音 Official


たらはかにさんの毎週ショートショートの企画、今週のお題「伝説の安心感」の2作目で参加させていただきました。


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