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CASAに載ってる猫の家。

空気が湿った曇りの日、小糠こぬか雨が降っている。だから頭がミシっと痛い。
加えて、読んでいた本が難しすぎて食あたりのような感じだ。ばかばかしいけど、ほんとにそんな感じなのだ。

それで、食あたりはらいに街へ出たのだが、僕は車の流れがすきだ。ぼーっとできるから。知り尽くした通りであれば。

で、途中で濃紺のZ4が左折で僕の前へ入ってきたのだが、それは知り合いの老人、瀬ノ尾氏の車だった。今日はもちろんほろはおろしてあるが、後ろから見てもセンシュアルな形だ。って、因果関係のわかんない文章ですね。

で、しばらくするとピコンとスマホが鳴って、お前、今どこ行くとこ? 飯どう? ときた。瀬ノ尾氏は器用つうか、運転しながらそれだけよく打てますねって感じで、僕は既読するので精一杯。とりあえず瀬ノ尾氏の車について行くと、Z4はマックに入った。彼はマックがすきなのだ。

降りて、よく僕だってわかりましたね? と聞くと、わかるでしょ、そりゃ、って。で、氏がWASH HOUSEで洗濯まわす間、マックで遅い昼飯を取ることになった。

氏はCASAを手にしていて、誰々のデザインが載ってるとかそういう話かと思ったら、猫の家を思案中だと言うのだ。ほら、この表紙のやつとか、よくない? と楽し気だ。野良猫がなついていて、そいつに家を作ってやろうというわけなんだが、おしゃれすぎでしょ、そんな無垢むくの板で!

氏は商業デザイナーで、仕事で施工はしないけど、自分の家はいつもどこかしら手を入れている。だから、猫の家を作るのもひょいっと出来そうだ。

CASAに載ってる家はどれもこれも美しすぎて、また僕はクラクラきそうになった。いつも思うのは、家の中にケーブル類が見当たらないこと。すごい行き届きようだ。住んでいる人たちはみんな、自分を律することに悦びを見出しているように思え、すげえね、って溜め息がでる。

で、瀬ノ尾氏と特段なにをしゃべるってわけでもなく、氏は『猫と家。』特集を熱心に読みながら、自動的にポテトを口へ運んでいた。僕はコーヒーだけにして、テラス席で小糠雨をぼーっと眺めた。

氏の車は板とか長い尺の物が入らないんだけど、これからホームセンターで板を買うから積んで運べという。猫の家を早速作るらしい。

いいっすけど。

彼はいつも僕の予定などことさらに尋ねない。もちろん、都合が悪ければ無理だと言えばいいだけで、暇なら手伝ってくんない? というスタンス。

おもしろい。変わってるよな、と思うのは、普通はそんなノリの大人はいないでしょ、と思うからだが、普通ってなんだっけ?

というわけで、先日に続き、またCAINSへ行くことになって、またマフィンを買って、氏の庭へ板を降ろし、猫ににゃ~とかすり寄ってこられ、僕はそこそこ機嫌よく家へ帰った。いやー、外へ出ると何が起こるかわかんないですよね。分岐が生じて、それに乗っかるのがおもしろい。

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