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夜のコンビニと青いルノー。

24時間開いているコンビニがすきだ。そんなものは、どこにでもある。それでも僕はそのどこにでもある終夜営業しているコンビニの明かりを眺め、きれいだな、と思うのだ。

僕から滲み出る痩身の「影」が、僕の先に立ってコンビニのドアを開けた。影はちょっと僕の方を振り返り、入るよね? とたずねるみたいにして首をかしげて見せた。僕は影にうなずくと、影のあとについてドアをくぐった。

アイスクリームを買った。名前はわからないけど、カップに入ったチョコサンデーのようなやつ。僕は復活したイートイン・スペースに体を滑り込ませ、ぼんやりと外を眺めた。自由な夜。夜がまだほとんど手つかずのままある。それはとてもしあわせなことだ。

影は僕のとなりのスツールに腰かけ、僕と同じサンデーを黙ってすくっていた。影は手足が長く、スツールに座る姿がカッコよかった。

僕らはカップをゴミ箱へ捨てると、べたべたした手を蛇口で洗い、コンビニを出た。

夜だ。夜にこそ、生き生きとするエンティティがいると思う。

街はそんな有形無形の者たちが放つ熱気で満ちていたが、少し歩くと熱気の薄れる界隈へ出た。木だ。木が生えていると、そこは木々の支配するエリアとなる。

僕と影は黙って木々の立ち並ぶ街区へと向かって歩いた。特段、何の目的があるわけでもなかった。ただ、木々に目撃されたいだけ。

で、ぐるりと一回りすると、元いたコンビニの裏手へ出た。そこは駐車場で、僕の車が止まっていた。僕らはその青いルノーに乗って静かに家へ帰った。

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