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毎日書く #01 WEDDING PICTURES

Now Write!: Fiction Writing Exercises from Today's Best Writers and Teachers という創作術本があるんですよ。アメリカの作家たちが、書くためのキッカケになる思考実験を紹介しているんですが、ここに紹介してあるエクササイズにのっとって、(できれば)毎日ひとつ、書く練習をしたいと思います。

1回目のエクササイズは、Jayne Anne Phillips の WEDDING PICTURES です。結婚式の写真(自分のでも、親のでも、他人のでも)を手に入れて、その写真に触発されるものを書く。シンプルです。
ではやってみましょう!写真は冒頭の、Unsplash で見つけたものです。

わたしは映像作家。あるセラピストの依頼を受けて、ホドロフスキーのサイコマジック的な効果のある映像を制作している。

上記の写真は、その一場面。セラピストへ向けて、制作意図のプレゼンをしているところ。

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用いられるイメージはできるだけかけ離れている方が好ましいです。ハレとケ。聖と俗。死と生のように。イメージとイメージの距離の離れ具合によって、観る人に治癒的効果をもたらします。

そういうわけで、まずは式服姿のカップルをハレの象徴として配置しています。

場所は用途のわからない、あいまいで不気味なロケーションです。ハレを打ち消す意図です。

ここは、街路の脇のように見えますが、用途がわからない。しかも、なぜか岩石がごろごろしていて、手入れのされていない樹木が乱雑に伸びている。周りにはとぎれとぎれに柵が配されている。禍々まがまがしさの点では高ポイントだと思います。

そして手前に配した格子が、幸せそうなカップルに向けて視線を注いでいる人物の存在を示しています。その視点人物は、彼らを祝福しているのだろうか?それとも、覗き見ることしか許されない者か?わかりません。もはや、対比すら成り立たずに、物事は両義性へなだれ込みます。

そして、画面手前のグレーの色調が、さらに〈覗き見る者〉の地平を強調しています。同時に、上方には白い建築物が見え、〈常識的で安心できる世界〉がすぐそばにあるようにも見えます。

最後に、画面中央に置かれた花。なぜ花嫁は花を抱えていないのでしょう?まるで墓碑に手向けるようにして、地面へ置いているのはなぜでしょう?よく見ると、その花は花束ではなく、筒へ挿してあり、やはりそこへ供せられることになっているようです。死者への鎮魂を感じさせます。

このようにして、幸せそうに微笑む新郎新婦は、非常なテンションに耐えており、観る人はそれをひしひしと感じます。大雑把に言って、多くの人はどこか不愉快な感じを抱くでしょう。

ここまできても、治癒的効果はさほどではないかもしれません。人は、ウエディングドレス姿の女性をなにしろ幸せなものとして見たがるからです。そのバイアスはとても強力です。いちばんいいのは、この花嫁の役になってみることなのですが・・・。


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