見出し画像

ほっこりした空気だけが流れる、特別に創られた場所。

先だって僕が書いた小説について、架空のインタビューを受けているつもりの遊び。


インタビュアー「アレクセイ・メイヤーがアルバイトしている、神学校前のコンビニ。あの場所は独特な雰囲気ですね」

Me「そう。なんかこう、どう転んでも不穏なことは起きない場所を作りたかったんですよ。不穏なことは起きずに、ほっこりした空気だけが流れている。そういう特別に作った場所なんです」

「『ヴィークル・ピープル』が、コンビニの雑誌コーナーに並んでいますね?」

「そう。『ヴィークル・ピープル』はビニールのカバーがかかって入荷していて、アレックスがそれをラックに並べます。マンガ雑誌のようにして」

「しかし、『ヴィークル・ピープル』が実際、どんなストーリーなのかはわかりませんね?」

「たぶん、簡単なことが簡単にゆっくり展開していく話なんです。それで、みんなが新刊を楽しみにしている。バイトのアレックスと話すサリーも、一冊もらっていいよと言われると、喜んだし、すぐにビニールを破って、帰りながらもう読んでいます」

「楽しそうですね」

「タバコとビールとアメリカンドッグを買いに来た老女も、『ヴィークル・ピープル』に目を留めて買っていく。とにかくみんなが楽しみにしている。そいう気分を描きたかったんです」

「タバコとビールとアメリカンドッグと同列な喜びなんですね」

「そう。自分の好きなものがすっかり揃っている夕方。あとはそれに取りかかるだけ。楽しそうでしょ。それと、お気に入りの作品が『あ、また出てるんだ!』という発見の喜び。楽しいことは、繰り返し繰り返し摂取したい。というか、摂取させたいんです」

「楽しいことは、何か他のこととの対置なのでしょうか?」

「いえ。そうではないと思います。ただただ、楽しいことばかり。そういうふうに創ってしまう。そういう遊びなんです。小説を書くのは。少なくとも、僕にとっては」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?