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弱虫とヒレかつと私

心が弱っていたからか、昨日のヒレかつは沁みた。弱っているときはヒレかつが効く。特に最初の一口は格別沁みた。

ヒレかつごときでと思うかも知れないが、真面目な話かなり元気になった。この店のヒレかつは小さい頃から、特別なときに家族みんなで食べに行く老舗のトンカツ屋のヒレかつだ。昔ながらの味のある店構え、いつものお通し、そしてちょっと珍しい焼きトンカツを出してくれる。

たっぷりの千切りキャベツ、自家製ポテトサラダ・マヨネーズ・ウスターソースに焼きヒレかつが6切れ。いつも一番左側のヒレかつから食べる。焼き揚げてあるヒレかつの衣は軽く、噛み締めた中身は肉肉しい。

ああ、美味しい。弱ってひねくれていても美味しいものは美味しい。ヒレかつ以外は、最終的にソースとマヨネーズでぐちゃぐちゃのキャベツになるのだが、これをヒレかつに乗せて食べるとまた格別。

噛み締めていくうちに、丁寧に作られたヒレかつが私の血肉に変わるのを実感する。心が少し温まっていく。これで今日明日はガソリンが持つだろう。

小さなことだけど、来月もヒレかつを食べに来よう。昨日の弱った私を助けてくれたみたいに、来月もきっと私を助けてくれる。

小さな希望を傍らに置けること。それが私の今の幸せだ。弱虫とヒレかつと私の話。



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