ドラゴンクエスト(Ⅰ) プレイ感想およびFC版とSFC版の比較

オリジナル(FC版)とアレンジ(SFC版)の違いを以下の観点から評価した
・難易度
・グラフィック
・サウンド
・シナリオ
・ハード特性

難易度については、圧倒的にオリジナルが高い
戦闘不能になるリスクが非常に高く、HP回復手段が少ない上に効果が非常に貧弱になっている
特にメインの回復手段であるホイミの回復量が少なくMP消費が多いため、絶望的に能率が悪い
ただ、これは回復量の多い薬草との差別化に成功しており、補充が面倒で個数制限のあるアイテムの地位確立という意味でゲーム性に寄与している部分でもある
そして、上位回復呪文であるベホイミの優位を圧倒的にしており、この呪文を覚えることが本ゲームの中盤と終盤をはっきり分けるポイントである
それだけにベホイミを覚えるLV17までの道程は意図的に難しく調整されており、ホイミの効果が不足になるドムドーラ到達LV13からLV17までに必要な約11500の経験値に対して、聖なるほこら周辺の敵の経験値が約20~25、ドムドーラ周辺の敵の経験値が約30~35で、じつに300回~500回もの戦闘をこなす必要がある
それにもかかわらず、ドムドーラには経験値稼ぎに必須である宿屋が無く、遠いラダトーム城から通わなければならないため、死ぬリスクも高くなる
そうかといって、聖なるほこら周辺の敵で稼ぐには1LV上げるために100回を超える戦闘が必要になり、非常に徒労感が強くなる
メルキドに到達して武器防具を買うことでかなり難易度を下げることができるのは救済措置だが、ゴーレムの突破法を知っている必要がある
この辺りはシナリオの理解、装備品刷新の効果を認識しているかを問う秀逸な構成と言えなくもない
しかし、HPが尽きると終了するゲームで、圧倒的に回復力が不足した状態で数百回の戦闘をこなす必要がある仕様は、近年のゲームと比べると重い労力配分を決めている感がある
一方で、ベホイミを習得すると、それまでの難易度が嘘のように低くなる
強敵だったスターキメラ、悪魔の騎士、大魔道などが安定して倒せる相手になり、ドムドーラで取得できるロトの鎧、竜王の城で取得できるロトの剣の装備効果もあり、楽になる
最後の難関である竜王撃破にはさらにLV20前後までの強化が必要であるものの、戦力アップに比してLVアップに必要な経験値は殆ど上昇しないため、楽に上げられる
難易度にシナリオを通した波が設けてあり、メリハリの強い調整がされているのが、オリジナルの印象だ
アレンジではこの波の過剰な部分を易しく調整しているものの、特性を欠くほどではないため適度な難しさを上手く残してある印象だ
ただ、竜王については先制が確実にはできないため、回復タイミングを図りにくくなっており、難易度はアップしているかもしれない

グラフィックは良い悪いではなく、オリジナルはシンプルで無駄のないデザインと背景、効果を特徴としており、アレンジは非常に精緻で凝ったCGと美しい画面効果を特徴としている
おそらく、原画を重視してドット絵でいかに再現するかに重点を置いたのがオリジナルで、そのドット絵を芸術的に質を向上させたのがアレンジと言える
オリジナルで凄いと思ったのは、最小限の表現で大きなインパクトを出している点で、洞窟での闇表現や背景を暗黒にしたり、統一の美しい背景に資源を集中したりしている
アレンジでは機体性能を生かしたグラデーション表現が美しく、エンディングではシーンのカットをメモリアル調に表現する技法が美しい
いずれも、当時の技術と環境で可能な最高レベルの表現を目指しており、スタッフの苦心が伺える

サウンドに関しては、もうすぎやま氏がほぼ一人で全ての役割を担当しているようで、感服するしかない
たった2~3音で重厚な中世ヨーロッパの世界観を印象付ける旋律と、ゲーム性ある戦闘、不気味なダンジョンを表現した氏の技量に疑いの余地はない
特に戦闘曲は押し出しの強い旋律を使うことで、音数の少なさを感じない迫力を出している
ただ、やはり電子音2~3音では不可能な世界があるのも事実で、一般的な器楽曲と当時のゲーム音楽を同じ土俵に乗せるのはナンセンスだろう
アレンジでは、おそらくオリジナルで機体制約上不可能で心残りだった部分を重点的に強化しており、繊細な多重奏による表現が増強され、グラフィックの進化にマッチしている

シナリオについては、アレンジで圧倒的とも言える増強が図られており、登場人物の細かな台詞、追加イベント、エンディングの台詞の細分化など、全く違うものに進化している
オリジナルのシンプルなシナリオはゲーム性を全く邪魔しないという意味で貴重だが、アレンジの楽しいイベントの数々にも多くの魅力がある
ある意味、このシナリオの違いこそが、オリジナルとアレンジを大きく違うゲームにしていると言えるかもしれない
時代的にアレンジの方が性的表現に制約がありそうなのだが、逆にちょっとファンサービスが増えているのが面白い

最後にハード特性だが、これはさすがに後方互換を排した潔い設計によって、操作性、機能性、AV性能ともにスーパーファミコンの方が優れていると言わざるを得ない
特にオリジナルで問題なのがファミリーコンピュータの操作性で、コントローラはお世辞にも手に優しいデザインとは言えず、オリジナルの作業量の多さもあって、かなり苦痛であった
その点でアレンジではLボタンがあるため片手操作が可能で、コントローラ形状も申し分なく、コード長も長く快適になり、殆ど不満がない
機能性の向上ではセーブの手軽さがあるが、オリジナルの方式(復活の呪文)は無限セーブと同義であるため、一長一短ではある
AV性能では、RF接続は画質が悪い上に今では接続できるディスプレイが限られているため、コンポジット以上が使える機体の方が良い

まとめ

オリジナル
ゲーム性については小さい不満はあるが、概ね及第点で、総合的にバランスを保った良作だと思う
ハード的に劣る部分(操作性の悪さ等)は問題であるが、手や肩の疲労を含めてこの時代のRPGの経験だと考えると、大した問題ではないのかもしれない
何よりも、コンシューマー向けコンピュータゲームで、ストーリー性と戦略性の高い蓄積型冒険ゲームを日本で最も早くに創作した業績に敬意を表したいと思う

アレンジ
全ての要素において、その本質を維持しつつバランスを調整した作品と言えそうだ
多くのファンに受け入れられる快適さ、美しさ、操作性を兼ね備えている
オリジナルの持つ絶妙な難易度とは違った、映画体験のようなドラゴンクエストを楽しめるのが魅力だと思う

プレイ時期
オリジナル(FC版) 2022年11月
アレンジ(SFC版) 2022年5月

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