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ヨハン・ユスト・シューシャルト(Johann Just Schuchart :London. ca.1741-1753))破損したテナージョイントの修復記録 4

まだまだ、長い道のりです。オクターブが全然おかしいのはテナージョイントのテーパーの問題なのでまず最小径の位置を決めることだと考えました

ソケットの長さは試奏しながらカット
テナーの上端は欠損しているので特殊樹脂で最小径部分を形成

かなり、試行錯誤を繰り返しました(詳細は記述しませんが)
その結果、2024年の年明けには以下のような状態までこぎつけました。

こちらは、レプリカのテナージョイントを試奏したものです。せめてこれくらい音が並ばないとコンサートでは使えません。

作業の記録

内径の修復と並行してオリジナルのトーンホールも修正しています。
オリジナルを直す!!は通常タブーですがこのジョイントのホールは過去にかなり狭く内張りがしてあってオリジナルではありません。

かなり小さくなっているトーンホール

ドレミがぶら下がる要因は内径のテーパーなのですが、トーンホールの通気が適正でないことも大いに関係します。
なので、次のような道具を作成し、試奏しながら少しづつ広げていきます。

トーンホール用の自作リーマー

また、ホールが開けられた角度も重要で、念のためにチェックしましたが、レプリカとオリジナルでは「e」ホールの角度が違います。このことは適正なテーパーは必ずしもコピーと同一にする必要はないということです。他のオリジナルも同じです。コピーだけが角度が違います。もしかしたら、コピー製作時にバロックファゴット、バソンに共通の弱点<真ん中の「e」が低い>を軽減しようとする意図があったのかもしれません。

上がレプリカ、下はオリジナル
上はプルドンのオリジナル、下はミルハウスのオリジナル


トーンホールを広げたあとの比較(下が修復中のオリジナル)

次からは、内径のブラッシュアップ作業を記載いたします。

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